ジャレド・ダイアモンド氏の「文明崩壊」について、その内容の一部をご紹介してくださり、有難うございます。図書の表題を紹介するだけでなく、その内容の一部を紹介すれば自分も読んでみようか、と言う気になることもありますね。ということで他の人も読んでいただければ嬉しいです。
同じ著者が書いた、「銃・病原菌・鉄」は、1998年度の一般ノンフィクション部門でピュリッツァー賞を受賞していますが、この本も併せて読んで欲しいものです。(草思社)
内容は、最終氷河期が終わった1万3000年前からの、人類史を書いたものですが、文明がどこで発生したか、その要因を食料生産の開始と関連させて、なぜその地域で始まったのかを詳しく解明しています。また、インカやアステカの文明がスペインとの戦いで、なぜ簡単に滅んでしまったのか、ヨーロッパの天然痘などの病気との関連などで説明してくれます。単にどの民族が文明的かなどでなく、地理的、環境的な要因を分析し文明の発展を明らかにしたものです。
例えば最近まで人肉食の習慣があった高地ニューギニア人が、なぜ人肉食をしなければならなかったか。それは栄養価のある作物が少なく、たんぱく質を補うために、亡くなった身内の肉を食べることによって、生き延びてきたこと。そして彼らが、知能が低いのではなく、生きるために周りの植物や動物の知識、薬草の膨大な知恵を知り、子孫に伝えなければ生きられないことなど、知能的には大変高いことを証明しています。絶えず続く部族同士の戦いに勝ち残るために、彼らなりに努力してきたことで、優秀な人間でなければ生きられないと言うことを知って、野蛮人と非難することの間違いに気付きました。
世界の主な文明の発展の歴史を見て、単に「人類の歴史は階級闘争の歴史である。」という見方を改める必要があるのではと思ったしだいです。彼は、「持てるものと持たざるものとの歴史である」と書いています。この逆転の人類史を明らかに出来たもの、それは近年の環境考古学・分子生物学・進化生物学・生物地理学・文化人類学などの研究成果があってこそです。
それらの研究成果をふんだんに紹介するだけでなく、ダイアモンド自身が長年にわたり、ニューギニアに入り現地住民と共に生活して、彼らから多くを学んだことなど、我々の文明感を見事に覆してくれます。
活動家の多くが、古典や関連文書の学習で忙しく、人類史を学ぶ時間だけでなく、意識さえ持てない状況でしょう。特に東西ヨーロッパの歴史を学ぶことは、社会主義の崩壊が何故起きたかということを理解するためにも必要ではないでしょうか。