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再び、無党派通行人様への返答

2006/08/29 澄空

 私は「9.11」の全容解明という口実で主張されている、さまざまな疑惑を説明せよという議論には関心がなく、おつきあいするつもりは初めからありません。また諸事情により、しばらく投稿はお休みしますので、この投稿を最後に、無党派通行人さんとの議論はお断り申しあげます。あれこれの“疑惑”を紹介することまで“やめろ”という資格は私にはありませんが、紹介する場合、少なくとも私に対するレスという形はとらないようにお願いしたいと思います。
 無党派通行人さんの投稿の感想を言わせてもらえば、米国当局をさまざまな点から追及するのは必要でしょうが、そこからひとっとびに自作自演説を想定するなら、お粗末の一言につきる、となります。

1、「油断説」
 この問題に詳しそうな無党派通行人さんなら言うまでもないことだと思ったのですが、「油断説」は米国の独立調査機関の報告書(2004年)に基づくものです。この報告書は、「9.11」に関する証拠や証言、容疑者の供述などから構成され、米国政府に対して、政府の不備や空港セキュリティの問題の指摘や提言を行っています。
 自作自演説を主張する者は、米国政府の発表だけでなく、この独立調査委員会の報告書の一つ一つの証拠を検証し反証を示すべきでしょう。それをせず、「数多くの都合のよい偶然の連続」だと言って切り捨てるなら、有益な議論は期待できないでしょう。検証作業を抜きにして、あれやこれやの“疑惑”を次から次へと列挙し、それらを説明できなければ、アルカイダやイスラム過激派の犯行でないとする考えは本末転倒と言わねばなりません。
 たとえば、ペンタゴンに突入したテロリストについては、空港の検査で金属探知機で警報が鳴ったり、写真入の身分証明がなかったりしても飛行機に乗り込むことに成功しています。空港の警備は、米国当局ではなく民間の空港警備会社がやっているのですし、当時その空港では、そういうずさんな警備がまかり通っていました(報告書26-27ページ)。米国に1年以上滞在していた犯人グループはそういう不備があることを知っていたはずです。
 邦訳がないようなので、原文へリンクしておきます(PDFファイル)。
(報告書全文、PDF)http://www.gpoaccess.gov/911/pdf/fullreport.pdf
(報告書要約、PDF)http://www.gpoaccess.gov/911/pdf/execsummary.pdf
報告書26-27ページについては、日本語訳があります。

2、犯人像
 独立調査委員会の報告書は、パキスタンで拘束されたアルカイダ幹部の供述に基づき、ウサマ・ビンラディンがアルカイダ幹部らに世界的なテロを指示し、躊躇する実行グループらを煽ったとしています(報告書7章にやりとりが詳細に記述されています)。同報告書は、アルカイダによる大規模なテロの発案から準備、実行組織やテロ志願者の組織、志願者の操縦訓練、操縦訓練やフライトシミュレーターのための資金の送金、計画が何度も変更を余儀なくされたことから、米国当局が計画を察知し各国に警告したことや国内での対応、アルカイダの動きと米国による対アルカイダ作戦との関係、当日の実行犯の動きまで実に詳細に調査され述べられています。要するにアルカイダによる犯行を疑わせる状況証拠は相当揃っていると言えます。
 ただ、比較的ゆるやかなテロ組織の形態や、宗教的思想によって志願者を募り、実行犯が死亡する自爆テロという行為の特殊性から、立証が難しいこと、そのうえ米国当局の言うことを鵜呑みにはできないという事情があるということを先の投稿で述べたわけです。それゆえに私は、断言を避ける形で、アルカイダとの関係が不明なイスラム原理主義反米組織の犯行で、ビンラディンは直接には関与していないと述べたのであって、「未知」の組織を想定しているわけではありません。
 むしろ先の投稿で、「9.11」以前から米国とアルカイダとは戦争状態にあったと指摘しておりますように、事実上アルカイダを犯行組織として想定しております。

3、お話にならない“疑惑”たち
 無党派通行人さんが挙げられたものは、しょせん根拠の乏しい“疑惑”にすぎず、ほとんどお話になりません。

>まず、American Airlines 77便の搭乗者数に問題があります。

 遺体が特定されている以上、AAのリストに不備があったとみなすべきでしょう。上記独立調査委員会の報告書で、空港警備のずさんさが明らかになっていますし、当日のテロリスト5名が乗り込んだ足取りも詳細に明らかにされています。自作自演説の入る余地はほとんどないように思われます。

>ハイジャッカーとされた人物が操縦していたのかについて重大な疑問があります。

 上記の報告書にも、実行犯が、飛行機の操縦について訓練を受けていたこと、それと同時に彼らは技術的には未熟であったという趣旨のことが書かれています。おまけに、ビンラディンまで、実行犯の操縦技術が未熟なら“墜落させるだけでいい”とまで述べて実行を迫ったとしています(報告書268ページ)。実行者たちの計画も、目標まで行けない場合は墜落させることになっていました(同261ページなど)。
 ここで重要な点は、彼らが飛行機の操縦について、未熟だったことにあるのではなく、曲がりなりにも飛行機の操縦について訓練を受け知識を持っていたという事実の方にあります。なぜなら、彼らの目的は、ともかく空中で機長を押しのけたあとで操縦さえできればよかったのであり、飛行機を離陸から着陸まできちんと安全に操縦することではなかったからです。それにハイジャッカーたちは、意図的な墜落を許さない遠隔操縦システムのあるエアバスよりもボーイングの方が操縦しやすいと確信していました(同263ページ)。
 いずれにしても、ハイジャッカーたちの当日の足取りは明らかになっており、彼らがハイジャックしたことに疑問をはさむ余地はほとんどありませんから、ハイジャッカーのうち、操縦訓練を受けフライトシミュレーションまでやった者が操縦したと考えるのが妥当です。

> (旅客機の側については自動操縦説があります。)

 この説は、川上さんも触れていましたが、根拠がありません。ハイジャックされた飛行機は、自動操縦が解除され手動に切り替えられたことが明らかになっていますし、たとえばAA77便はハイジャックされたあと直接ペンタゴンに突っ込んだのではなく、一度急旋回してぐるっとまわってから突っ込んでいます(なお、突っ込む位置は航路に関係しますから、あえて西壁を狙ったのだとしても、それが犠牲が少なくてすむからだというということはできません)。また自動操縦説(=遠隔操作説)は、乗っ取られた4機目が目標にたどり着かず、ペンシルバニアに墜落したことを説明することができません。
 ところで、ここで紹介いただいたページの内容は、自動操縦説を敷衍したものではなく、「ボーイングではなかった説」をさまざまな証拠でもって反論したものです。たとえば、ジェット機にしてはエンジンが小さかったなどという“疑惑”に答えています(これらの内容は、上記の日本語サイトとも重複します)。どこからひっぱってきたのか知りませんが、こんないい加減なリンクはやめていただきたいものです
 紹介ページのサイト内で自動操縦説(=遠隔操作説)を探したところ、ペンタゴンへの攻撃についてのさまざまな「説」をまとめた以下のページの最後に申しわけ程度に書かれていました。
http://911research.wtc7.net/pentagon/analysis/theories/index.html
 まあ、このページに限らず、このサイト全体はかなりの情報量があって、いろんな説について議論がなされており、トンデモ系の批判もあって有益なものもあります(ペンタゴンの目撃証言者のほとんどはジェット機だったことが示されている一方、ジェット燃料とは違う臭いがしたというのは一握りの証言にすぎず、根拠に乏しいというべきでしょう)が、この手の議論は「9.11」の全容解明を目的としたものでしょう。「さざ波通信」はそういうサイトではないし、私もそのようなことを目的としていませんので、これ以上の議論にはおつきあいしかねます。

> 上のpdfのスライドには、WTCの残骸のサンプルを分析してビル解体用の爆薬 (テルミット) が使用された痕跡を検出したという中間報告もあります。

 ざっと読んでみましたがそのような記述は見当たりません。作者は、WTCの残骸のサンプルを分析したがっておりサンプルの提供を要求していますが、分析したとは書いてません。
 なお、そのことは、無党派通行人さんが「無益」と切り捨てた、私が紹介したページでも指摘されています。
 上のいいかげんなリンクも含め、無党派通行人さんは、これらのページをきちんと読み、理解されて書かれているのかはなはだ疑問です。読まされる方の身にもなっていただきたいものです。

>もし意図的な解体が正しければ、自作自演説が補強されるわけではないどころか、ほぼ自動的に内部犯行が含まれるという結論にならざるを得ないのですが。

 残念ながら、無党派通行人さんが書いていることの方こそ、「全く理解できません」。
 まず、何よりも、意図的解体説自体はちっとも立証されていません。科学者の間で意見が割れているのですから当然でしょう。“正しければ”どうこうというのではなく、まずは正しいかどうかが問題なのであり、どうこう言うのは、それが正しいと証明されてからでも遅くありません。
 そのうえで、無党派通行人さんがなぜそのように思い込みされるのか知りませんが、ビルがどのように崩壊しようとも、「意図的に」2機の飛行機がビルに突っ込んだ事実が揺らぐわけではありません。飛行機を使ったテロについては解明を省き、ビルの崩壊現象だけを捉えて、それが爆破説で説明つくから自作自演とするなら、ただの論理飛躍です。
 たとえば、飛行機が突っ込んでいない第7ビルが解体予定だったと言われていますが、それが事実だったとしましょう。そして「9.11」当日、オーナーの同意で解体されたという説が本当なら、当然「意図的」に破壊されたことになりますが、そのことはテロとも自作自演説とも直接には関係しません。
 第7ビルのオーナーが解体に同意したからと言って、「自動的に」米国当局がテロを自作自演したことになりますか? 前述のペンタゴンのテロリストが飛行機に乗り込んだ経緯でも同じです。空港の警備がずさんだったからと言って、米国当局が意図的に見逃したことにはなりません。まして、テロリストと結託して自作自演したなどと考えることは、いくつかの論理飛躍ぬきには不可能です。

4、自然で合理的な推測
 ビルやペンタゴンに、飛行機が突っ込んだばかりでなく、爆薬でも破壊されたのだとしたら、なぜそんなことをするのでしょう? 自作自演なら、WTCやペンダゴンに飛行機が突っ込むだけで十分でしょう。爆薬で爆破したら、自作自演の証拠を残すことになりますよね。――このように推測するのも、これまた「ごく自然で合理的」なものです。
 このように、「自然で合理的」な考えは、一つとは限りません。ある事実をどのように「自然で合理的」に想像しようが、それはその人の自由ですが、有益な議論をしたいなら、“裏づけ”が必要です。世界を驚かすような自作自演説の裏づけが出てきたら、また「9.11」に関する議論に参加したいと思いますが、そうでない限り、裏づけのない“疑惑”紹介にお付き合いするのはお断りです。