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レバノン問題について3

2006/08/30 風来坊 50代 自営業

どろさんに指摘されて、ヒズボラの問題を調べていたとき 、ゆきちゃんのブログというのに、日刊ベリタよりということ で、天木・元レバノン大使とダーヘルレバノン大教授の対談が 載っていました。かなり共感できる内容だったのでこれを全文 転載します。

 「イスラエルの暴挙停止へ世界の市民が行動を」
 イスラエル軍の攻撃によって多くのレバノン国民の血が流さ れ続けているにもかかわらず、国際社会はなす術を知らぬかの ようである。この悲劇を食い止めるために、私たちは何もでき ないのだろうか。
 天木直人・元駐レバノン大使とマスード・ダーヘル・レバノ ン大学教授は7月31日、東京の反差別国際行動(IMADR)国際事務 局で緊急記者会見を開き、「イスラエルの暴挙と平和への挑戦 を止める唯一の手段は、世界の市民が「こんなことが許されて いていいのか」と抗議の声を上げて国際世論を動かすことだ」 と訴えた。(アジア記者クラブ通信)
 天木:私がレバノン大使時代に仲良くしていた友人の一人の レバノン国立大学のマスード教授がたまたま国際交流基金(ジ ャパン・ファウンデーション)の招待で東京外語大学で研究す るということで久しぶりに合った訳ですけれど、教授が来た2 日後にイスラエルのレバノン攻撃が起こった。
 私は本当に驚いたのですけれど、ダーヘル先生はもっと驚い た。彼はそれから毎日のように奥さん、家族に電話して情勢を フォローされてきたのですが、日増しに情勢が悪化していく。 彼はもともと研究のために来日したのですが、一日たりとも研 究に手がつかないような状態だという。あたりまえですよね。
 その彼が二日前のカナの攻撃を見て、ここまで非人道的なこ とが放置されていて、それに対して国連もどこの国も何ら具体 的なアクションをとることなくいたずらに一日が過ぎていくこ とに耐えられなくなったという。私もそういう教授の意見とま ったく同じ思いですから、ぜひ日本の国民にアピールしようと 思い会見を開きました。日本の政府にアピールするつもりはま ったくなくて、日本の国民に実情を知っていただきたい。
 私の話はここまでで彼に話してもらいますが、彼の言おうと していることはだいたい私が聞いた限りでメモにまとめました ので、彼の話の後に私が補足して、私の思いを話させていただ いて、最後に皆さんの質問に彼が答えるということでやってい きたいと思います。

▽平和憲法を持つ日本国民への期待
 ダーヘル:元レバノン大使の友人とこういう形で記者会見を 開けて感謝しています。
 私はレバノンの教授として長年日本と関係をもってきて、時 々日本を訪れては両国の友好関係について研究を重ねてきた。 今日は政治的な観点からではなくて、人道的な観点からぜひ話 を聞いていただきたい。日本の皆さんが平和を愛する友好国の 人びとであり、レバノンと日本両国の友好関係を知っています ので、ぜひ日本の皆さんに私のことを聞いてもらいたい。
 まず自分の家族のことからお話したい。自分の家族は今友人 のところに避難していて、同じように何千人・何万人もの人が 同じような状況にある。20万人が国を離れ、80万人が難民生活 をしいられている。すでに750人くらいの犠牲者がでて、7000 人くらいが負傷している。非常に短期間の間にここまでひどい 状況がレバノンで起こっているということをまず申し上げたい 。
 とくに昨日起きた事件は非常にショッキングでした。すべて のレバノン人、アラブ人、そして国際社会の人たちが衝撃をう けた。実はカナに対する攻撃は二度目で、ちょうど十年前の1966 年に同じような同じ場所で避難民が攻撃されて105人が死んだ 。今回は63人が死に、そのうち37人が子供です。これは前回よ りもっと悲惨なことが起こったということでさす。
 ライスさん(米国務長官)が二度目のレバノンを訪れようと して、首相がそれを断った。つまりすべての政治的な交渉が昨 日の事件でストップしてしまった。何もこれが初めてでなくて 、この一週間にあらゆる破壊が行なわれ、いまレバノンは国全 体が非常事態になっている。その前は国連の監視団が攻撃され て死傷者がでている。レバノンというのは小さいとはいえ主権 国家です。これほどの国際法違反で一国が蹂躙されているとい うのに、もし国際社会が何もできずにこういう状態が続けばい ったいどういうことになるか、皆さんに考えていただきたい。
 レバノンは本当の意味で犠牲者です。これは人道に対する罪 である。独立国がここまで無条件で攻撃されていることを訴え たい。
 私はこの機会を利用して、イスラエルがこのレバノン攻撃を 一日もはやくやめるように皆さんが記事を書いていただくよう にお願いしたい。皆さんを通じて日本国民に、平和憲法9条を 持っている日本国民に、この攻撃を一日も早くやめさせるよう な人民の運動、そういうものが何らかの形で結成されて、それ がイスラエルのレバノン攻撃をやめさせるような形になること を期待してアピールとさせていただきます。
 最後にぜひ日本の皆さんがレバノンを何らかの形で救済して いただけるようにお願いしたい。

▽大国の国際政治に翻弄される小国
 天木:私は三年前までレバノン大使として両国の友好のため に力を尽くして、私なりにレバノンの置かれている状況、中東 紛争における国際政治をみてきました。今回のレバノン攻撃に は非常に衝撃を受けました。それは驚きであり、悲しみであり 、怒りである。なぜ驚いたかというと、そもそもの発端がヒズ ボラによるイスラエル兵士の誘拐であった。しかしながらヒズ ボラとイスラエルの小競り合いは、私がレバノンにいた二年半 に毎日のように行なわれていて、その間にも残念ながら、ヒズ ボラがイスラエル兵を誘拐したとかいう事件はあったんですね 。これが初めてではなかった。
 それは政治交渉で捕虜交換をしたりして解決してきた。一種 のゲームであるとも言われていた。これが今回、このような形 でイスラエルがレバノンを攻撃したというのは、私の二年半の 経験から言うと非常に驚きであったわけです。
 二つ目に私が悲しいと思ったのは、レバノンは常に大国の国 際政治の犠牲になってきた。1975年から1990年までの十五年間 まさに内戦に苦しんだ。
 この内戦も大きな原因はイスラエルとパレスチナの紛争に起 因しているが、大国の代理戦争の犠牲として十五年間苦しんで 、国が徹底的に破壊された。私が赴任した2001年はその内戦が 終わって十数年後で、ものの見事に復興したレバノンを見てき ました。
 当時、一年前に暗殺されたハリリ首相が自慢げにいっていた のは、大きな写真集を出して、見開きで片一方に完全に破壊さ れたベイルート、その同じ場所を十五年後にどれだけ復興した かを対比して出して、それを彼は国際社会にアピールしていた 。
 写真を見たとき私は、こんなにひどい破壊を人間ができるの かと、人間の残酷性を感じたと同時に、これだけ短期の間にこ れだけ復興できる人間のすばらしさを感じ、かすかな望みをも っていました。しかしながらそれが、まさに三年後に破壊され た。そして私がつきあってきたレバノンの友人が、ダーヘル教 授が言ったように(彼の家族も含めて)80万人が難民になった 。
 これは大変な悲しみであるわけで(涙声)。私の怒りはです ね(間)、なぜここまでの不当な攻撃を国際社会が止められな いのか(涙声)、これはもう政治以前に彼が言ったように、人 間としての人道的な見地から許せないことと思います。
 私は彼と違ってもはや誰に気兼ねをすることもない一人に人 間ですから、私は外交官としての自分の経験を生かしてこの際 、日本国民、世界の国民に言いたいのですけれど、我々は米国 とイスラエルをあまりにも甘やかしすぎた(涙声)。子供を殺 し、国連の平和軍を殺し、そして地中海を石油で汚染する。ど れ一つをとってみても政治とは関係なく、世界の人類はこれを 許すことができない。にもかかわらず世界は米国とイスラエル の暴挙を止めさせるために何もできない。もしこれが許される のであれば、私は世界に平和は絶対に来ないと思う。
 日本国民がいやしくも平和憲法9条を持って平和を愛する国 だと、憲法を守るのだと言っているのであれば、なぜこれほど までの平和に対する挑戦に対して行動がとれないのでしょうか 。
 私は国際政治の現実を知っています。いま世界は米国に楯突 くことをやめたわけです。イラク戦争で世界は分断されて二度 と再び米国と政治的に対立したくない。あるいはアラブの国は 米国の圧倒的な軍事力の前に本当のことを言わなくなった。米 国と一緒になって自分の政権を守りたい。日本だって米国・イ スラエルと対決したくない。世界の国はこれほどまでに不当な ことが行なわれてもまともに非難することをやめた訳です。
 しかし、世界の国民は、アラブの国民は、欧州の国民はみん な怒っているわけです。私はこの機会を通じて世界の市民に「 そんなことでいいのか」と訴えたい。彼らがそれぞれの国に圧 力をかければ国も動かざるを得ない。私はイスラエルの暴挙を 止める唯一の手段は国際世論の圧力しかないと思っています。
 さらに言えば、もっと深刻な事態がこの三年間放置されてき た。それはガザなんです。いまでもガザで人が殺されている。 このイスラエルのレバノン攻撃はまさにパレスチナ問題そのも のなのであり、私が三年前に米国のイラク戦争に反対した最大 の理由は、ここまでパレスチナ人が蹂躙されているときに、い っさいそれに手を打とうとしない米国が再びイラクで市民の犠 牲を出そうとしたからです。これを許すことができないという のが、私が声を上げざるを得なかった理由です。
 残念ながらまさに三年後に私が当時予測していた最悪の状態 がいま中東を覆っているわけです。イラクをみてください。誰 がみても手をつけられない内戦になっています。ガザはますま す住民が追い込まれている。そしてこのレバノン攻撃。
 ライスは今度こそ本当の平和を実現するためにイスラエルの 攻撃に関与しないのだと発言している。それは何を意味してい るかというと、まさに反イスラエル・反米、ブッシュや彼女が いう「テロ」を皆殺しにするまでは手を緩めないということで す。それこそ人道に対する犯罪以外の何ものでもない。
 私は自分では何もできないけれども、私ができることは報道 が正しく本質を報道しないなかで、私自身が自分の経験から本 当のことを言いたいと思って、この機会を利用して話させてい ただきました。