レバノンに対するイスラエルの非道な攻撃を、世界の世論で止めさせよう。
そんな、おざなりな綺麗ごと言ったって、何の役にも立たないじゃないか。ただのごまめの歯軋りだ。全くその通りだ。世界の大国が雁首並べる国連の安保理事会でさえ、何にも出来ないじゃないか。毎日のように、レバノンの市民が巻き添えで殺されたニュースが、イスラエルが戦線を拡大するという報道がマスコミに現れる。(風来坊)さんが紹介した、梶山氏のレポートのような悲痛な叫び声も聞こえてくる。立派な学者や、ジャーナリストの解説も沢山でている。大抵は長引くだろうという話、大戦争になるだろうと言う話もある。全く先の見えない、不透明で、恐ろしい状況である。そして誰も上手く説明してくれない。我々普通の市民には手に負えない問題だ。でもそんなことばかり言っていると道に迷ってしまい、歩くことも出来ない。そこで普通の市民の頭で、普通の市民が手に入る情報を基にして、そしてとりあえず、こんな結論をだした。
(第一) この戦争は大戦争にはならない。
イスラエルの攻撃を好機として、戦線をシリアに、イランに拡大し、「テロリスト」への供給源を断ち、一気に中東の軍事的制覇を実現するのが、ネオコン及びブッシュ政権の戦略であるという見方があるのは確かである。しかし、イラクの場合と同じく、史上最強のアメリカの軍事力をもってすれば、正規戦では、シリア、イランの軍隊を粉砕することは可能であっても、それで戦争が終わる訳ではない。それは当然、誰しもが想像出来ることだが、イラクの泥沼戦争を数倍の規模で拡大することを意味する。アメリカは果たして、更に拡大する負担に耐えられるのであろうか。
本日(06/08/10)朝日新聞の記事で、次のような報道をしている。
9日に発表されたCNNの世論調査では、イラク戦争反対が60%に達した。
コネチカット州上院予備選挙では、現職のリーバーマン(副大統領候補にもなった大物だが、イラク戦争支持で有名)が「米軍のイラク早期撤退」を主張した新人に敗れた。
民主党大統領候補のヒラリーは最近、イラク戦争批判を強めている。数日前にも、ヒラリーがラムズウェルドと論争したという記事が載っていた。彼女は、これまでネオコン出身の人物をブレインにしたり、右翼寄りの姿勢がよく報道されていたが(本人が軍服を着て、バグダッドを訪問した写真が新聞に載ったこともある)、世論の動向に敏感なアメリカの政治家らしく、早速、軌道修正を始めたのであろうか。勿論、この一片の記事だけで、米国民の世論の動向を判断するのは早計であるが、しかし、ウェブ上でも、アメリカの有力な政治家やジャーナリストがブッシュ政権のイラク戦争に疑問や、反対を主張する情報が出ていることを、ご存知の方も多いと思われる。私はCNNの世論調査は、現在、アメリカ国民のイラク戦争への意識が大きく変わりつつあることを示していると思う。であるとすれば、ブッシュ政権が更なる戦争の拡大、継続をアメリカ国民に納得させるのはかなり難しい話であると思う。
しかも、マスコミの報道によっても、レバノンの市民の犠牲のニュースは、欧米の市民レベルでの反戦の世論と行動を生み出しつつあると思える。国連の場で、ブッシュ政権はイスラエルの軍事行動を擁護しながらも、停戦への要求に、引き伸ばしと、譲歩を繰り返しながら、微妙な対応をしているように見える。当然のことではあるが、彼等も国内、国際世論の動向を睨みながら、行動せざるを得ないのだ。であるとするならば、今、反イスラエルの反戦世論が国際的に高まるならば、戦争拡大を阻止する大きな圧力になるのではなかろうか。反戦世論の圧力によるベトナム戦争の敗北は、アメリカにとっては悪夢なのだ。
(第二)わが国での反戦行動
アムネスティ・インターナショナル日本や幾つかのNGOが八月一日、イスラエル大使館前で、レバノンの犠牲者を悼む祈りを捧げる集会を開いた。静かな、二百人程度の集まりだったそうである。だがこれは、明らかにイスラエル抗議する反戦行動である。実際には、各地で、いろんな行動が組織されていると思うが、寡聞な私が知る限りでは、マスコミで報道されたイスラエルに対する抗議行動は、これだけである。しかも小さな記事であった。
欧米の市民の行動にくらべて、日本での動きには時差が必要なのであろうか。平和を目指す団体、組織は沢山あるはずである。ベトナム反戦運動の再現を目指す行動を期待する人は多いはずである。