たぬたぬさん。他の板でやすしさんからも意見がありました。
たぬたぬさんからの具体的なご質問については①私は民主主義が大好きです。②自分の支持政党が与党の際に抵抗戦術で可決を阻止された場合はやむを得ないのであり、妥協するか次の国会での成立を期すべきと思います。というのがお答えです。
審議拒否や牛歩戦術を五一五事件の首謀者と同じレベルとの意見にはまったく賛同できません。
あんまり大元から展開するのも面倒なので簡単に言えば、「国会」と「民主主義」に対する理解の問題だと思います。
現実の国会という場所は、「真の民主主義の理念に基づいて議論が行なわれている言論の府」ではありません。「いわゆる『代議制民主主義』として定めた共有のルールに基づいて、各政治勢力が競合したり談合したりしながら合意点を見出す場」です。そのルールが崩れてきていることが直面している問題であって、国会で真の民主主義が実現していないなんてことは、はるか未来の課題と言わざるを得ません。残念ながら。
共産党がどんなにすばらしい論陣をはっても、与党議員が「そうですね。そのとおりなので反対しましょう」ということも、スキャンダルを暴露してもそのこと自体によって「参りました仰るとおりなので責任をとります」ということも絶対にありません。筋のいい質問をした場合に政府が困るのも、申し訳ないと思うからではなくて、それで混乱して国会が不正常化すると最低限必要な法律が成立しなくなるからです。
採決をすれば閣法が可決するのは当たり前なので、ここでの取引がなくて、どんどん採決すればどんどん悪法が成立します。通常国会だと100本程度法案が出ますが、ぜーんぶするする成立する。それも仕方がないと仰るのでしょうか。とんでもない世の中になりますよ。
「民主主義の範囲で野党ができることは、基本的には『与党はこんなひどい法案を可決させた。この法案によって~~~~ということになってしまう。』と宣伝して、次の選挙で勝つしかない」とおっしゃいますが、それだと国会なんかなくても変わらないじゃないですか。次の選挙までは多数派の独裁政治にして、テレビや新聞の枠とか国民に向けた宣伝の機会と公開討論会でも約束しておくのと同じようなものでしょう。国会は次の選挙に向けた宣伝の場ということで本当にいいんですか。
実際には、国民の批判の強い部分については修正しないと通さないとか、スキャンダルを解明しない限り予算案の審議に応じないとか、日切れ法案の吊しをとかないとか、審議の順序をどうする、とか取引をしながら妥協点を探っているわけです。全部与党や政府の思いどおりなっているわけではなくて、勢力比と主張内容に応じた落としどころを、少しでも自分の勢力に有利に持ってこようとお互いに戦術を駆使しながら綱引きをしています。与党の力が弱ければ野党の主張の何割かを取り入れないと法案を成立させられない、国会というのはそういう引っ張り合いの場なんですよ。、
繰り返しますが、審議促進して採決すれば与党が過半数なので原案のまま全部成立です。本当にそれでいいんですか。そうさせないための取引の材料が、数と中身と時間なのです。
国対政治とかも言われる取引や、談合がケシカランというのは気持ちとしてはわかります。最大限オープンな場で取引をして、国民の前に分かりやすく説明していくことは絶対に必要です。でも取引に加わらなければ成果はゼロです。選挙で勝つまでは成果はゼロ。0か100かの選択でずっと0で我慢して、いつか選挙でかったら100の成果を得たい。それは革命か単独での政権交代なんでしょうけど、共産党単独政権の後は全部思い通りにさせろというのは私は嫌ですね。
逆に言えば、現状は代議制民主主義のなかで、共産党に託された有権者の希望を死に票にしているという面もあるわけです。私は、共産党が取引に加わってくれればもう少し、多くの悪法の牙を抜くことが出来るのにという気持ちで一杯です。私はすこしでも悪法の牙を抜こうと必死でやっているわけですが、まあ横から「取引するのはケシカラン。数では負けるので悪法の悪100%なのは仕方ない。宣伝して次の選挙で勝つからいいよ」って言われると、あまり愉快ではないですね。
まあ、たぬたぬさん流だとそういう現在の「国会」のあり方を受入れず、綱引きには加わらず、本来同じ方向に綱引きしている者を横から攻撃しながら、どうせ負けるから100%与党の言うとおりでよいとあきらめて、次の選挙で勝つからいいや、ということになるわけです。
いや、これはただの繰り言です。たぬたぬさんの態度の方が正しいかもしれない。でも、それじゃ共闘は出来ないでしょう。数と、内容と、時間を取引する場という国会のあり方を否定して、宣伝できればいいのなら、「どうぞ宣伝の場として勝手にご自身の正しさを宣伝するのに使ってください」ということにしかなりません。まあ、共闘はできないでしょ、というだけですよ。
念のため言っておきますが、私は現在の国会のルールをいいなんて全然思っていませんよ。でも最低限共有できるルールを積み重ねて来たわけで、いまはそれすら崩されつつある。選挙で勝ったんだから多数派の思い通りにさせろって方向に。その部分に関してはたぬたぬさんは多数派の最近の傾向と同じ立場ですよね。私は選挙結果の多数派がすべてを思いどおりにするというのは絶対反対。有権者に負託された各政治勢力が十分議論して妥協しあいながら国会で合意点を探るべきだと思っています。もちろんその中身を透明化しなきゃいけないし、代議制民主主義ではすくいきれない有権者の意識を反映させるためにより直接民主主義的な制度も導入して、補っていくべきだと思います。また、自分が託した政治勢力には現実的には限りなくゼロということになる「100か0の選択路線」ではなく、戦術・戦略を駆使して最大限に自分の考えの方に結果を引き寄せる能力を持って欲しいと思っています。