1.日本共産党の綱領路線は完全に破産している。共産党の
病根・不破教祖が完全引退したとしても党勢が大きく前進する
ことはない。共産党の現状が綱領路線の破産を雄弁に物語る。
結党84年にもなろうというのに民主連合政府の樹立、民主主義
革命・共産主義革命の可能性はゼロ、逆に目を覆うばかりの党
勢後退と党組織の腐朽と劣化が、日本社会の破壊、軍国主義・
ファシズム前夜の再来を許してしまった。
共産党員や支持者が今後どんなに奮闘しようとも、それが選
挙結果に反映されることはない。何故なら共産党の綱領路線は
完全に破産しているので、その組織力は99.9%減殺されて選挙
結果に反映されてしまうからだ。今の共産党は、組織の現状維
持費にのみ莫大なお金やエネルギーを消耗しているだけで、党
勢はもう前には進まない。
2.共産党綱領路線の破産の原因を端的に言えば、共産党の基本
政策(=客観)は明らかに社民化しているにもかかわらず、そ
のイデオロギー(=主観)はマルクス・レーニン・スターリン
主義を色濃く残した旧態依然とした革命政党という、主観と客
観との大きな齟齬にある。これこそがまさに日本共産党の根本
矛盾である。
共産党は2004年に綱領を改定し、この齟齬の修復を試みた。
しかし、この作業はまったく不完全で失敗だった。この綱領改
定はいわば「革命路線+社会民主主義÷2」という単なる折衷作
業に過ぎなかった。この結果、基本政策とイデオロギーとの不
協和音は解消されずにむしろ拡大し、日本共産党はそのアイデ
ンティティすら見失い、綱領上の文言や党員の主観はどうあれ
、その客観的な実体・実質は、ますます革命政党でも社会民主
主義政党のどちらでもないヌエ的集団となってしまったのだ。
今日では共産党=革命政党という看板が、看板倒れであるこ
とを知らない有権者はもはやいない。ムラ社会・思想集団・擬
似宗教団体・赤旗しんぶん株式会社・・・と多様な性格を併せ
持ち、政党性すら失いつつある日本共産党に支持が集まるはず
がない。
不破教祖によるマルクス、エンゲルス、レーニンの病的訓詁
学や社会科学研究所を使っての愛党教育強化は、この齟齬と矛
盾をますます広げる効果しかなく、共産党にとって有害無益で
しかない。
共産党が政党として再生するためには、このイデオロギーと
基本政策の齟齬を修復するしか途は無い。これには2つの途が
ある。1つは政策をイデオロギーに合致させる左派的解法であ
る。すなわち、共産党が名実ともに革命政党となることである
。第2は、逆にイデオロギーを政策に合致させる右派的解法で
ある。すなわち、共産党が名実ともに社会民主主義義政党へと
脱皮することである。
だがこのどちらの解法も、共産党の現状を見る限り、可能性
は皆無であろう。何故なら、どちらの選択肢を採るにせよ、完
全に保守化してしまった党幹部や党内抵抗勢力をバッサリ斬る
痛みを伴う抜本的党改革・荒療治が避けられないから、党改革
を断行する強力なリーダーシップを持った指導者が不可欠なの
だが、私が党外から共産党を観察する限り、このような強力な
人材は見当たらないからだ。
共産党の現状は、このどちらの方向にも舵を切ることができ
ず、ただダラダラとマンネリ活動を延々と続けるだけ、その結
果、共産党は政党性すら喪失し、擬似宗教団体・仲良しサーク
ルへと変質しているのだ。
3.ところで共産党綱領路線の破産には、もう一つ大きな原因が
あると思う。それは組織依存、より正確には官僚組織主義的運
動論・組織論の破綻である。
上記の党綱領上の根本矛盾や組織の病理は、共産党がもし小
規模な組織であったならば、その矯正は比較的容易であっただ
ろう。しかし、今や共産党は公称40万人の党員、そして2000~3000
人ともいわれる専従党員を抱え、民主集中制という非民主的組
織原理を採る大官僚組織になってしまうと、その抜本的な党改
革はまず不可能であろう。 日本共産党は機関紙と党員拡大を
車の両輪として1970年代まではほぼ順調に党勢を拡大し、自主
財源を誇る強固な党組織を構築してきた。しかし、今から思え
ばこれは日本の高度経済成長と社会の安定があったればこそ可
能な運動論であったといわざるを得ない。今日のように貧富の
格差が劇的に進行するとその前提は崩れ、貧困層・低所得者層
はもはや「赤旗」を購読し、党活動を行う経済的・時間的余力
を持たない。「赤旗」購読部数の大幅な減少は、共産党自体へ
の支持の低下もあろうが、格差社会の進行が大きな原因であろ
う。
社会環境が激変し、党の自主財源を支える共産党支持層が経
済的・時間的余力を失うと、共産党の強力な官僚組織は、皮肉
なことに逆に党にとって大きな桎梏・重荷になる。専従党員は
再就職先がなく、たやすくリストラできないから、人件費はほ
とんど削減することができず、党財政はたちまち悪化する。共
産党は政策の実現や国民の利益よりも、党に生活の糧を依存す
る専従党員の扶養を第一に行動せざるを得ず、保守化していか
ざるを得ない。政党助成金を受け取れば確かに多少は楽にはな
ろうが、官僚組織主義的運動論を改めなければ、それは単なる
対症療法に過ぎないだろう。
格差社会においては、党員に過大な経済的・時間的負担をか
けるこれまでのような運動論はもはや立ち行かない。日本共産
党がもし貧困層・低所得者層の利益を代表したいならば、極論
を言えば党員や支持者は1円も党費を払う経済的余力がないと
いう前提に立って、運動論・組織論を構想しなければダメなの
だ。とりわけ党組織は情勢や社会環境の変化にすばやく対応で
きるよう決して肥大化・官僚組織化させてはならない。
(蛇足ながら、共産党には「党活動負担の逆進性」があるよう
に感じられる。すなわち、低所得者党員ほど党活動の負担が重
く、高給取りの党員ほど党活動の負担が軽いのだ。これをしっ
かり「累進性」に改めなければ、末端の党員は離反するばかり
であろう。)
「赤旗」が連日、日本の貧困化の進行を報道しているのは大
いに評価するが、残念ながら党幹部にはその危機感や切迫感は
まったく伝わっていない。それは不破教祖が自宅に2名の料理
人を雇うという億万長者のセレブのようなお気楽な暮らしをし
ているためだけではなく、M.ウェーバーやR.ミヘルスらの研
究が示したように、官僚組織の病理に起因するものだ。官僚組
織は必ず保守化する。たとえ革命政党であってもこの法則から
逃れることはできない。日本共産党の今日の保守化の原因を、
過去に党壊滅を体験したトラウマから説明するのはあまりに皮
相な見方である。党組織を官僚組織化してしまい、格差社会の
到来という社会環境の激変に対応できないこと、これが日本共
産党綱領路線の破産の第二の原因である。
私が危惧するのは、共産党が組織防衛を優先するあまり、「
赤旗」も買えない貧困層・低所得者層を見捨てること、あるい
はそれから遊離した政党へと変質してしまうことである。しか
し、その変質は既に今、進行しつつあるのではないだろうか。
(つづく)