「受け売り」はお互い様ですから、要はどちらの説がより信用できるかということです(文末にひとつ提案をしますので検討してみてください)。
私は少なくとも無党派通行人さんが示した紹介ページは読ませていただいて、その上で明らかに馬鹿げていると考えております。当然ながら、自作自演説を下敷きにして公式説の「内容の考察」をするつもりはまったくありません。当然でしょう。
一方の無党派通行人さんは、公式の報告書すら読まれていないわけです。これでははじめから議論にならず、こんな議論なら早く辞めたいと申し上げております。
たとえばNISTの調査報告は、ビルの安全対策に関する法律に基づいて行われているものであり、ブッシュの取り巻き政治家の演説とは違うのですから、これを鼻から相手にしない理由はありません。
無党派通行人さんは、自作自演説信奉者が公式報告書に「批判」していることの紹介で反論したおつもりのようですが、それでは私どころか読者も納得しないでしょう。納得させたいなら、NISTなどの調査報告が正確にはどのように説明しており(読んでいらっしゃらないなら不可能です)、自作自演説はそれをどのように間違いだと指摘しているのかきちっと説明すべきでしょう。
これまでの経過をみましても、「犠牲者の部分的リスト」としてCNNが提供しているものを、アメリカン航空単独提供のオンライン処理の搭乗者リストなどと言い切ったところなどは、まさに自作自演説の「信仰」以外の何ものでもなく、どちらの言い分が「思い込み」なのか読者には明白になったことでしょう。調査が行われているのに「証拠が隠滅された」などと言う無党派通行人による「印象操作」の例も、すでにみてきたところなので繰り返しません。
今回も、これまで同様、あれこれと何やら書いて「反論」したかのような「印象」を与えようとしているようですが、いったい何を反論したつもりなのかまったく不明です。私は、この手の主張に対しては無視することにしていますが、それではご不満のようですから、通じないことを承知の上でいちおうコメントしておきます。
硫黄が石膏ボードに含まれていることは事実ですが、テルミットがあったかどうかはそれこそ自作自演説を吹聴する人たちの憶測にすぎません。
自作自演説によると“火災より高熱で鉄が溶けたんだ”“テルミットを使った制御解体だ”“鉄が溶けた証拠もあるぞ”と言っているくせに、その物証がFEMAの報告書(WTCタワーの支柱で700~800℃の熱腐食、WTC7の梁が1,000℃近い熱腐食が起きていた)ではお話になりません。700℃~1,000℃は通常のビル火災で想定しうる温度で、鉄の融点やテルミットの燃焼温度よりはるかに低い温度です。「崩壊の直後から瓦礫の下で溶けた金属が流れていたという」ジョーンズ博士の報告は確認されていない証言によるものであって、鉄が溶けたという物証でないことは言うまでもありません。
「異常」などとおっしゃる1,000℃という数値は、
(1)上層階の最高気温として示されているものであり、火災時の最高気温の見積としては妥当なものです。実際、無党派通行人さんが鉄が溶けた証拠として挙げられた上記FEMAの報告書が、WTC7火災のサンプルでは1,000℃近くだったとしています。また、“1,000度で鉄の強度が室温の1/10”というのは一例であって、たとえば550℃なら鉄の強度は室温時の1/2以下になりますし、このFAQの中でさえ、鉄が本質的に弱まる温度を700℃としています。すべての鉄部材が1,000℃になることをNISTの崩壊説が想定しているわけでないことは言うまでもありません。
なお、NISTの分析サンプルは、火災フロアの支柱の1~3パーセント分にすぎず、それらに600℃を超えた形跡がないということは報告書にはじめから書いてあります(「NISTNCSTAR 1」の90ページ)。しかしながら、FEMAのサンプルは700~800℃ということですから、少なくとも鉄が本質的に弱まる700~800℃を超えていたことは間違いないでしょう。
(2)最高気温1000℃の根拠は、実証実験のデータと(たとえばこのような写真が公開されています)2000年に公開された火災動態シミュレーターを使った解析結果によるものです(「NIST NCSTAR 1」の123~127ページ)。もし、この結果でもって公式説がデタラメだと言えるなら、当然同じ論理でもって、それ以上の高熱(つまりテルミット等による高温)を想定する自作自演説はなおさら信憑性がないということになります。
爆発の証拠なるものは、ビルの崩落に伴い内部で圧縮され行き場を失った空気が窓などから外に出た現象であるとNISTの報告には書いてありますが、「そのものズバリ」とされる今回の紹介ページはそれを覆すような証拠を示していません。
融解金属の流れがあった場所で、(1)ビデオなどの証拠から熱源としての火災があり、写真とシミュレーション解析から(2)アルミ合金等の残骸が(3)その場所にあったことは事実ですが、融解金属の見かけの色でもってそれが鉄だというジョーンズ博士の主張は憶測にすぎません。
NISTの報告書以上の信頼性をもって、あれを鉄だと主張するには、最低限の前提として、(1)熱源として火災より高い熱を放出する物質がそこにあって、同時に(2)あれだけの量の鉄鋼が、(3)あの場所に存在していたことの証明が必要です。さらには、鉄の部材はあちこちにあるのに、なぜあの場所だけから流れ出たのかも説明する必要があるでしょう。
自作自演説を吹聴する人たちがこのような説明をしているのを私はみたことがありません。実際、これはどういうシナリオで説明できるのでしょう? そこに鉄の構造物が集中していた事実はありませんから、ビル内部の鉄をそこに集めるように飛行機が突っ込み(超高等テクニック!)、なおかつそこに発生する火災からの引火を想定して十分なテルミットがしかけられていた(偶然の一致の連続!!)と想定するか、あるいはまた、秘密裏にテルミット付きの鉄鋼をビルに潜ませておき、それにめがけて飛行機を突っ込ませた(これまた高等テクニック!)と想定するしかないでしょう。
ジョーンズ博士の「反論」なるものも、やはり子どもだましにすぎません。光学的な現象(目で見える色)でそれが何であるのか証明するためには、火災条件や火災によって熱せられるアルミ合金等の条件とともに、光学的条件を同じにしなければ再現実験として意味をなしません。ジョーンズ博士の実験や「反論」実験がそのような条件をまったく満たしていないことは彼が提供している写真やビデオみれば明白です。だからこそ「子どもだまし」と言ってるわけで、あんな単純な実験でもって「融解金属は鉄であってアルミでない」などと主張するのはチャンチャラおかしいと言わねばなりません。
だいたい制御解体説をとるなら、いつ誰がどうやって誰にも気づかれずに大量の爆薬や導線をしかけたのか説明できなければなりませんし(米国政府は万能か!?)、なぜ主要な構造部分を爆破しさえすればよいものを、あえて爆薬のみならず、わざわざ支柱の耐火被覆をはがしてテルミット等を設置して溶かしたのかも説明できなければなりません(米国政府は労力をかけてる割にどこか抜けている!?)。ちょっと考えればいかに馬鹿馬鹿しい説明であるか、誰にでもわかるでしょう。
公式説には何でもかんでもケチをつけ厳しい要求をする一方で、隙だらけの自作自演説にはいい加減な説明で納得できるとしたら、それは「信仰」を媒介にするほかありません。
ついでに、「秒殺」と言われる「反論」は、本質的な批判にはなっておらず(要するに報告書に書かれている分析の批評ではない)ほとんど揚げ足取りか難くせ程度のものです。
こんなもの読むだけ時間の無駄だと考えますが、私がNISTのFAQを訳しておきますので、無党派通行人さんはそれに対する「反論」を訳されてみてはどうでしょう?(英文サイトを多数紹介しているのですから、それくらいは簡単にできるでしょう?) それで少なくともFAQについては読者に判断がつくでしょう。