読者の便を考えてNISTのFAQを訳しておきます(※私は建築物の専門家でも翻訳の専門家でもありませんので訳文の正確さについて保証はしません。おかしいと思われたら原文をあたってください)
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→国家建築物安全対策法に基づく報告書NIST NCSTAR 1
→NIST NCSTAR 1に関する2006年8月30日付けのFAQ
国立標準・技術研究所(NIST)世界貿易センター災害におけるビルおよび火災の国家安全性調査
よくある質問への答え
(このドキュメント中のNIST NCSTARとは、2005年10月に発行されたWTCタワーに関するNISTの最終報告書を形成する43巻のうちの1巻をさします。本書に記載されている報告書の全セクションは http://wtc.nist.govでご利用いただけます)
1. 世界貿易センター(WTC)タワーが複数のボーイング707航空機衝突に耐えるように設計されていたのなら、なぜそれぞれ1機のボーイング767の衝突であれほどの大きな損害をもたらしたのでしょうか?
NIST NCSTAR 1のセクション5.3.2に述べられているように、ニューヨーク・ニュージャージー港湾管理委員会(PANYNJ)の記録によれば、WTCタワーの設計段階で1機[単一、複数でない]のボーイング707の衝突が解析されたことが示唆されています。しかしながら、NISTの調査員は、衝突解析に使われた基準や方法の記録をまったく見つけることができませんでした。したがって、「…そのような衝突は、ただ部分的な損害をもたらすだけで、ビルに対して崩壊や実質的破損をもたらすことはできないだろう…」という主張について検証することはできませんでした。
航空機衝突とそれに続く火災の拡大、構造に対する火災の影響を精巧にシミュレーションする能力は、最近開発されたものです。構造モデリングへのアプローチはNISTのWTC調査のために開発されたものですから、PANYNJおよびそのコンサルタントや交渉人が、1960年代にそのような解析を行なうために利用できた技術的能力は、NISTの調査に耐える能力と比較すればきわめて限られたものでした。
各タワーに対するボーイング767航空機(ボーイング707より約20パーセント大きい)の衝突による損害は、NCSTAR 1-2によく記録されています。大規模な損傷の原因となったのは、航空機の大きな質量とその高速と運動量で、それらによって衝突フロアの比較的軽量な鉄の外壁支柱が切断されました。NISTによる衝撃解析の結果は、外壁の破損およびビルから出てきた残骸の量や位置についての観察(写真・ビデオや回収されたWTCの鉄骨の分析による)とうまく合致しました。この一致は、ビルの構造に対する損傷が航空機の衝突によるものであって、それ以外の力によるものではないという前提を支持しています。
2. なぜNISTは、一致するコンピュータ・モデリングで「制御破壊」説を考え、それが「パンケーキ理論」説を裏づけることを説明しようと考えなかったのですか? NISTの文書に対する主要な批判は、崩落の開始時点より後に生じた「連続崩壊」を維持する分析がまったくないということと、制御崩壊説を考慮に入れていないということにあります。
NISTはWTCタワーを崩壊させた原因について3年にわたり綿密な調査を行いました。それはNISTの専用ウェブサイトhttp://wtc.nist.govで説明されているとおりです。この調査は、ビルの崩壊に関する多数の仮説の検討を含んでおります。
約200名の技術的な専門家――約85名のNISTの経歴ある専門家と125名の民間・学術関係の第一人者を含む――が、何万もの文書記録の調査、1,000人以上との会見、7,000カットのビデオ映像と7,000枚の写真の調査、瓦礫から回収された236個の鉄片の分析、航空機がタワーに衝突した瞬間からビルが崩壊を開始するまでに生じた出来事の室内実験および精巧なコンピュータ・シミュレーションを行いました。
こうした包括的な調査に基づき、NISTは、WTCタワーが以下の理由で崩壊したと結論づけました。:(1)飛行機の衝突により、支持支柱が切断・破損、鉄の床トラスおよび鉄の支柱を覆う耐火被覆が剥離、多数のフロアの広い範囲にジェット燃料が拡散しました。また、(2)続いて大量のジェット燃料が引火した多数のフロア火災(摂氏1,000度程度の高い気温に達した)は、床がたわんで外壁支柱を内側に引張っていた部分において、耐火被覆が剥がれた床と支柱を著しく弱めました。こうして、外壁支柱が内側におじぎするように曲がってWTC1の南面およびWTC2の東面が破損し、各タワーは崩壊を開始しました。双方の写真とビデオの証拠は、――崩壊に先立つ半時間におけるニューヨーク市警航空隊の説明も同様に――各タワーに生じたこうした一連の流れを支持しています。
NISTの調査結果は、崩壊の「パンケーキ理論」を支持しておりません。その理論は、WTCタワーの床システム(複合的床システム――中心支柱と外壁支柱に接続されている――は、コンクリートスラブに統合された「トラス」という鉄グリッドで構成されています。下図参照)が連続的に破損したということを前提しています。その代わりにNISTの調査は次のことを決定的に示しました。つまり、内側におじぎするように曲がった外壁支柱の損傷が崩壊の発端となったこと、またこの内側への湾曲が生じたのは、たわんだ床が支柱に接続され続け、支柱を内側へ引張ったことによるものだいうことです。したがって、連続的に床が破損してパンケーキ現象を引き起こしたのではありません。
(図省略)
複合的なWTCの床システム図
NISTの調査結果はさらに「制御破壊」説も支持しておりません。次のような決定的な証拠があります。
・崩壊はWTCタワーの衝突と火災があったフロアで始まり、ほかのフロアでは起こりませんでした。
・崩壊開始までにかかった時間(WTC2は56分、WTC1は102分)は、(1)航空機衝突によって引き起こされた破損の範囲と、(2)火災が決定的な位置にまで広がりその構造を弱め、火災や衝突があったフロアから上の大規模な上層部分の降下運動によって放出されるすさまじいエネルギーにビルが耐えることができなくなるに至るまでの時間、によって決定づけられました。
ビデオ証拠はまた、崩壊が上層部から下層部に進んだことを明白に示しました。また、ビル上層部(WTC1の98階以上およびWTC2の82階以上)が崩壊開始の降下を始めたとき、衝突と火災のあったフロアより下の区域では爆破ないし爆発を示すどんな証拠(NISTやニューヨーク市警察署、港湾管理委員会警察部、ニューヨーク市消防署によって集められたもの)もありませんでした。
要約すると、NISTは、2001年9月11日に先立って設置された爆発物を使った制御解体によってWTCタワーが潰れたことを示唆する代替仮説を裏付けるような証拠は何一つ見つけておりません。NISTはまた、ミサイルが発射されビルに当たったというどんな証拠も見つけていません。その代わりに、角度の異なるいくつかの写真やビデオは明白に次のことを示しています。つまり、火災と衝突があったフロアで崩壊が開始したこと、およびその崩壊は発端となったフロアから塵芥が視界をさえぎるまで下に向けて進行したということです。
3. 鉄骨の高層ビルが火災で潰れたことは後にも先にもないのに、制御解体なしでどうやってWTCタワーが崩壊できたのでしょうか? 火災の気温はビルを倒壊させるほど熱くはなりません。
WTCタワーの崩壊は、従来のビル火災が原因だったのではありませんし、当日の多数のフロアの同時火災だけが原因だったわけでもありません。そうではなくて、NISTは、WTCタワーが次のような理由で崩壊したと結論づけました。(1) 飛行機衝突により、支持支柱が切断・破損、鉄の床トラスおよび鉄の支柱の耐火被覆が剥離、多数のフロアの広い範囲にジェット燃料が拡散しました。そして、(2)続いて大量のジェット燃料が引火した多数のフロア火災は、影響を受けやすくなった鉄の構造物を弱めました。アメリカでは、WTCタワーが2001年9月11日に経験したような、多大な構造の破損と多数のフロアの同時火災にさらされたビルはいまだかつて存在しません。
4. 各WTCタワーの崩落が始まったときに見られた煙の噴出は、制御解体による爆発の証拠ではありませんか?
いいえ違います。NIST NCSTAR 1のセクション6.14.4に記載されているように、ビルの落下質量はその下にある空気を――ピストンによくにた動きで――圧縮し、下層階が次第に潰れていくにしたがって煙や残骸を窓から排出させたのです。
これらの噴出は、ビルが崩壊した際に多数の箇所で観察されました。すべてのケースで、それらは窓または機械室フロアの支柱の間から押し出されたガスの噴射にみえました。ビルの崩落時には内部の空気は圧縮され、潰れる際にどこかに流れなければなりませんので、このような噴射は予想されるものです。重要なことは、同じような“噴出”が、崩壊に先立って双方のビルの火災のあったフロアで何度もみられたことで、それはおそらく壁やフロアの部分的な落下によるものです。WTC1からの噴出は、WTC2に航空機が衝突したときにさえ見られました。これらの観察は、小さな過剰圧力でさえタワーを伝達し、かつ煙や残骸をビルから強制的に排出するということを確証させるものです。
5. タワーが崩れる前の地震記録に、区別される2つの波形――それぞれのタワーに1つ――がみられたのはなぜですか? これは各タワーで爆発が発生したことを示しているのではありませんか?
WTCタワー崩壊による地震波形は、崩落するタワーの瓦礫が地面にぶつかった結果です。その波形は各ビルの崩壊開始から約10秒後から始まり、約15秒間継続しました。ビル崩壊の開始に先立って生じた地震信号はありませんでした。地震記録には、ビルの崩壊に先立って生じた爆発を示す証拠はまったくありません。
6. 11秒(WTC1)や9秒(WTC2)そこらで――その速さは、真空(空気抵抗なし)で同様の高さからボールが落下する速さに相当する――、どうやってWTCタワーが崩壊できるのでしょうか?
NISTは、崩壊開始から外壁パネルが最初に地面に衝突するまでの経過時間を、WTC1で約11秒、WTC2で約9秒とそれぞれ見積もりました。これらの経過時間の基にしたのは、(1)ビデオ証拠から崩壊開始の正確なタイミングと、(2)ニューヨーク市パリセーズで記録された地殻振動(地震)信号です。ロワー・マンハッタン(NCSTAR1-5A参照)から振動波の伝達にかかる正確な時間測定も行われました。
NIST NCSTAR 1のセクション6.14.4に記載されているように、これらの崩壊時間は以下のことを示しています。
「…崩壊を開始した高さより下側の構造は、衝突ゾーンから上側の落下するビルの質量に対してほとんど抵抗できませんでした。大規模なビルの質量の落下運動によって解放された位置エネルギーは、下側の無傷の構造が変形エネルギーで吸収できる能力をゆうに超えていました。
崩壊を開始した高さより下側の階が、落下するビルの質量によって解放されたすさまじいエネルギーに対してほとんど抵抗できなかったため、ビデオで見られるように、ビルの上層部は基本的に自由落下で崩れました。下側の階が連続して潰れ、落下する質量が増大するにしたがって下層フロアに対する要求はさらに増大していったため、それは質量の落下を阻止しえなかったのです。」
言いかえれば、下層の支持構造(それは、まさに上層のフロアの静止重量を支持するために設計されたのであって、落下運動量による動的な影響を支持するようには設計されていない)に向けて落下する12階から28階分(それぞれWTC1とWTC2)の運動量(=質量×速度)は、下層の構造の強度耐性をはるかに凌駕していたため、それ(下層の構造)は質量の落下を止めることができず、もしくは遅くすることさえできませんでした。連続する各下層フロアが受ける落下運動量は、質量が増加するにつれ、さらに大きくなりました。
ビデオ証拠から、双方のビル(WTC1のおよそ60階とWTC2の40階)の中心にある重要な部分は、崩壊開始後それらが同じように崩壊するまで、15秒から25秒間立ってことがわかっています。地震記録の持続時間もビデオ証拠(残骸によってできた雲による視界不良のせいで)も、各ビルが完全に崩壊するのにかかった総時間の指標としては信頼できません。
7a. WTCタワーの火災がそれほど高温ではなかったとしたら、どうして鉄は溶けることができたのでしょうか?
あるいは
7b. 鉄の融点は華氏約2,700度、ジェット燃料の燃焼温度は華氏1,800度を超えず、またアンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)はWTCタワーの鉄鋼について華氏2,000度6時間まで耐性保証しているのに、WTCタワーを潰すにだけの衝撃をどのようにして火災が鉄に与えたのでしょうか?
NISTは、いかなる報告書でも、WTCタワー中の鉄鋼が火災で溶けたと報じたことはありません。鉄の融点は摂氏約1,500度(華氏2,800度)です。通常のビル火災や炭化水素(例えばジェット燃料)の火は、摂氏約1,100度(華氏2,000度)までの気温を発生します。NISTは、WTCタワーでは上層の気温が最大摂氏約1,000度(華氏1,800度)になったと報告しました(例えば、NCSTAR 1(図6-36)を参照)。
しかしながら、露出した鉄鋼が摂氏1,000度の温度に達すると柔らかくなり、その強度は室温値のおよそ10パーセントにまで落ちます。保護されていない(例えば耐火被覆が剥離した)鉄鋼は、タワー内の火災発生中に気温に達することは可能です。こうして、NISTによって測定されたWTCタワーの火災の強度と持続時間のもとで、耐火被覆が剥離した鉄部材(床トラス、梁、および中心支柱と外壁支柱両方)が曲がったり歪んだりすると見込まれたのです。
ULは、示唆されているような鉄鋼の保証をまったくしていませんでした。実際、米国の慣習では、鉄鋼の保証はまったくありません。正確に言えば、構造部材は、ASTM E 119 (NCSTAR 1-6Bを参照)のような標準手続きに従ってそれらの耐火性能を試験されます。「鉄鋼は…華氏2,000度6時間まで耐性保証」というのは単に真実ではないということです。
8. 生存者が階段の吹き抜けに水があったことを報告していたので、スプリンクラー装置が作動していたことがわかっています。もしスプリンクラーが作動していたのなら、どうしてWTCタワーに「猛烈な地獄」があったのでしょうか?
NISTの演算でも生存者や消防士からの聞き取りでも、航空機の衝突でスプリンクラー装置の送水管が切断されたことが示唆されました。スプリンクラーは主な火災フロアーで作動していませんでした。
しかしながら、階段の吹き抜けには十分な水の源がありました。送水管は、階段の吹き抜けの内側を垂直に走っていました。さらに、トイレ用の壊れた補給水路や、スプリンクラーに最初の水を供給するタンクからの豊富な水があったでしょう。したがって、滞在者が撤退中に大量の水に遭遇したことは驚くべきことではありません。
自動スプリンクラーが作動可能だったとしても、そのスプリンクラー装置――それは一般的な耐火安全規定に従って設置されていました――は、設置フロアの1,500平方フィートに広がる火災を抑えるように設計されていました。この適用範囲は、オフィスビルで起こりうる火災のほとんどすべてを制御することができます。2001年9月11日のジェット燃料による火災は、各タワー中のいくつかのフロア40,000平方フィートの大部分に急速に広がりました。この火災は、無傷のスプリンクラー装置でさえ抑えられない、まして相当損傷していた装置ではなおのこと抑えられない地獄を生み出しました。
9. 厚い黒煙が低酸素かつ低温の激しくない炎の特徴だとすれば、なぜ内部の火災が極度に熱かったと考えられたWTCタワーから厚い黒煙が出ていたのでしょうか?
WTCタワー中の主な可燃物による火災も含め、屋内の大規模な火災はほとんどすべて、光学上厚くて暗い煙を大量に生み出します。こうしたことが起きるのは、実際に燃焼している場所では、酸素が激しく消耗され、可燃物が完全に無色の二酸化炭素および水に酸化するわけではないからです。
火煙の目に見える部分は、酸素消費燃焼に関連した不完全燃焼から形成される小さな煤(すす)粒子から成ります。タワー火災による煤は、いったん形成されると、すぐにビルのそれほど熱くない区域に押しやられるか、壊れた窓や外壁へ直接押しやられました。
10. 背後の火災の熱が過度のものなら、なぜ飛行機衝突によってできた隙間に人々がみえたのでしょうか?
NISTは、目撃された人がどの強い熱源からも離れたところ、おそらくその時点で燃焼のための空気がビルに引き込まれていた場所にいたと信じております。人々が目撃されたのは、WTC1の穴だけであったことに注意してください。
国際標準ISO/TS 13571によれば、大規模な火災によって生成される放射熱レベルの近くにいれば、数秒以内に激しい苦痛が起こることでしょう。したがって、大きな火災のあった裂け目に人が立っている写真が一つもなかったことは驚くべきことではありません。
航空機の衝突に続く火災の動きは、NIST NCSTAR 1-5Aに記述されています。一般的に言えば、航空機がタワーに当たったエリアの近くには火災はほとんどありませんでした。航空機の衝突の際すぐに、霧状のジェット燃料から発生した大きな火の玉が局所的にすべての酸素を消費しました。(これによって本質的に、その場所は即座に住めないようになったことでしょう。)火の玉はすぐに後退し、続いて可燃物や空気、出火原因が揃っていたタワー内部で火災が大きくなりました。航空機が突入した裂け目付近には、可燃物はほとんど残っていませんでした。なぜなら、航空機がビルの内部に向かってそれらを「押し込んだ」からです。さらに、壊れたフロアから階下へ落ちていったものもありました。
したがって、これらの裂け目で目撃された人々は航空機の衝突を生き延び――火の玉が消えてしまったあと――温度がより涼しく、建物内部よりも空気が澄んだところへ移動したにちがいありません。
11. いくつかの写真で、WTC2の側面を流れ落ちる融解金属が黄色い流れを示しているのはなぜですか? それは衝突した飛行機からのアルミニウムだったとNISTは主張していますが、アルミニウムは白く光って燃えるのですが。
午前9:52の少し前に、WTC2の80階の窓の上部に明るいスポットが現れ、北面の東側の端の四つの窓が外れ、続いて白熱の液体が流れたとNISTは報告しました(NCSTAR 1-5A)。この流れは、おさまるまでおよそ4秒間続きました。このような液体の流れは、このタワー崩壊に先立つ7分間にこの位置の近くで多数観察されました。同じような溶解状態の液体が流れた証拠は、WTC2の別の位置ではありませんでしたし、WTC1ではどこにもありませんでした。
写真およびNISTの航空機衝突シミュレーションは、WTC2の80と81階に大規模な残骸があったことを示しており、そこから白熱の液体が結局現れました。この残骸のほとんどは、飛行機の機体由来のものであり、また飛行機がビルの遠端までトンネルを掘った際に飛行機が押しやったオフィス家具由来のものでした。飛行機の衝突後すぐに大規模な火災がこの残骸の山で展開し、タワーが崩壊するまでこのエリアを燃やし続けました。
NISTは、融解物質の源が航空機からのアルミ合金であると結論を下しました。なぜなら、それらは摂氏475度から摂氏640度の間(合金の種類による)、つまり火災の近くで予想される温度(およそ摂氏1,000度)よりも十分に低い温度で溶けることが知られているからです。アルミニウムは通常火災の温度で発火するとは予想されず、タワーから流れる物質が燃えていた様子は視覚的にもありませんでした。
純粋な液体アルミニウムは、銀色に見えると予想されるでしょう。しかしながら、その融解金属は、恐らく熱せられて部分的に燃えている固体の有機物質(例えば、家具、カーペット、パーティション、コンピュータ)が多量に混ざっていました。それらは、暖炉において燃えている丸木のように、オレンジの光を発することができます。見かけの色は、その表面上のスラグ生成によっても影響を受けたことでしょう。
12. NISTの調査は、WTCタワーが制御解体によってつぶされた証拠を捜しましたか? 爆発物あるいはテルミット残留物について鉄鋼の試験を行いましたか? テルミットと硫黄(サーメイトと呼ばれる)の組み合わせは、「バターを熱いナイフで切るように鉄鋼をスライスします」。
NISTは、これらの化合物の残留物について鉄鋼の試験をしておりません。
質問2、4、5および11に対する回答は、NISTがなぜ、WTCタワーの崩壊に関係した爆発ないし制御解体がなかったと結論づけたのかを示しております。
さらに、大量のテルミット(アルミニウムの粉末または粒子と酸化鉄の粉末の混合物で、引火すると非常に高温で燃える)ないし別の発火化合物が、少なくとも、航空機の衝突によって被害を受け、かつその後の火災で弱められた多数の支柱に置かれなければならなかったことでしょう。テルミットは、爆発物に比べてゆっくり燃え、大量の鉄部材をかなり弱める温度まで加熱するためには数分間それに接触している必要があるかもしれません。WTCタワー調査とは別に、NISTの調査員は、およそ摂氏700度(鉄鋼が本質的に弱まる温度)まで熱するには、鉄部材1ポンド当たり、少なくとも0.13ポンドのテルミットが要求されるだろうと見積もりました。したがって、テルミット反応で大きな鉄の支柱を切断させることはできますが、何千ポンドものテルミットがあらかじめ目立たないように設置され、遠隔点火され、何百もの構造体の表面に直接接触した状態をどうにかして保持してビルを弱める必要があったでしょう。このことから、テルミットは制御解体を達成する物質としてはありそうもないものとなります。
テルミット/サーメイト中の成分についてWTCの鉄鋼を分析したとしても、必ずしも決定的なものとはなりません。金属化合物はWTCタワーを構成する建設資材中にもあったでしょうし、硫黄は内装のパーティションで普及している壁用の石膏ボードに存在していました。
13. なぜNISTの調査は、WTCビルの残骸にあった融解金属に関する報告書を考慮しなかったのですか?
アメリカ土木技師協会(ASCE)およびニューヨーク建築エンジニア協会(SEONY)出身のNIST調査員や専門家――WTCの現場やスクラップ置場でWTCの鉄鋼を検査した――は、崩壊に先立つジェット燃料による火災で鉄鋼が溶けたことを支持する証拠を一つも見つけておりません。WTCタワーの残骸にあった鉄鋼の状態は(つまり、溶解状態にあろうとなかろうと)、崩壊の調査とは関係がありませんでした。なぜなら、それはWTCタワーが立っていた時の鉄鋼の状態を決定づける情報を何ももたらさないからです。
NISTは、ビルがまだ立っていたときの鉄の構造物の損傷とその耐火被覆の破損が飛行機の衝突とその後の火災によるものであり、それらの破損がWTCビルの崩壊開始の原因になったと考えました。
特定の状況下では、ビルが崩れた後で残骸の鉄鋼が溶けたと考えられます。残骸の中でなにがしかの鉄鋼が溶けたのなら、ビルが立っていた短い時間に火炎や爆発にさらされたというよりも、瓦礫の燃焼に長時間さらされ高温になったというのがその理由でしょう。
14. どうして、WTC 7(2001年9月11日にタワー崩壊の何時間も後に崩れた47階建てのオフィスビル)の崩壊についてのNISTの調査が完了するのにそれほど長い時間がかるのでしょうか? 制御解体仮説は、その崩壊について説明するとお考えですか?
NISTがWTC調査を開始した際、調査を支えるスタッフの新規雇用は行わないことを決めました。WTC調査に関する2004年6月の経過報告書が発行されたのち、NIST調査班はWTC 7に関する作業を中止し、2005年の秋を通してWTCタワーの調査を完了させるために全時間を割り当てました。2005年10月にWTCタワー報告書が公開・普及されるとともに、WTC 7崩壊の調査が再開されました。それ以来かなりの進展があり、80箱近いWTC 7に関連する新しい文書記録の調査や、さまざまな崩壊仮説をモデル化し解析するための精巧な技術的アプローチの開発、分析の実施の際にNISTスタッフを支援する業者の選択が行われました。報告書素案は、2007年前半までに発表されるだろうと予想されます。
現在NISTが作業中のWTC7崩壊仮説は、「世界貿易センター災害におけるビルおよび火災の国家安全性調査」の2004年6月経過報告書(第1巻17ページ、および補遺L)で以下のように説明されています。:
・最初の局所的な破損がビルの下層階(13階の下)で発生し、それは火災および/あるいは瓦礫によって生じた、2,000平方フィートもの大フロア区画を支持していた重要な支柱の構造的損傷(発端となった出来事)が理由でした。
・最初の局所的な破損は縦方向に進行し、東ペントハウスにまで発生しました。そして、その大フロア区画が負荷を分散することができなくなったとき、東ペントハウス下の内部構造をつぶしました。それから、
・縦の破損による破壊が引き金となって、下層フロア(他のフロアよりかなり重厚に補強された5階と7階の領域)の破損が横方向に進行して、構造全体が不均衡に崩壊しました。
この仮説は、支持あるいは修正されるかもしれません。または新しい仮説が、継続調査を通じて開発されるかもしれません。NISTもまた、爆破を想定して、それが崩壊開始に役割を果たしえたかどうか検討しております。NISTは爆破あるいは制御解体の証拠を全く見つけておりませんが、NISTは1箇所以上の重要な要素で構造上の破損につながりうる爆破の大きさを測定するつもりです。