国連安全保障理事会常任理事国と靖国問題とを一緒に採
り上げると、落語の3大話の趣になる。日本が常任理事国を目
指して運動を続ける理由は幾つかある。日本はアメリカに次い
で、大きな分担金を負っている。その他の経済的国際支援も多
く、国際的役割を担っている。その役割に応じた、国連での地
位を持って当然である。とする判断等。
その他、表面には見えないのだが、そもそも、国際連合とは
、ユナイテッドネーション(連合国)と言う側面もある。第二
次世界大戦を戦った戦勝国、其れが連合国、つまり、国連の始
まりである。
国際連合には敗戦国条項と言うのがある。国連憲章53条、
107条である。この規定は第二次世界大戦を戦った、連合国
に対し、枢軸国が国連憲章に違反した行為を取った場合、連合
国の構成国は(単独でも)、国連決議に拘束されずに無条件で
、軍事制裁を出来るとされている。敗戦国とは言うまでも無く
、日本、ドイツをはじめ、ルーマニア、ブルガリアハンガリア
、フインランド、以上はドイツの同盟国。イタリアは途中から
ドイツとの同盟を破棄し、連合国側についた。
タイ国は日本との攻守同盟国であったが、同盟は日本の脅迫
の結果とされ、敗戦国(枢軸国)から外された。(wikipedia
)
この条項は、枢軸国の日本、ドイツが国連に加わり、事実上
死文化されている。しかし、国連憲章は条約であり、この死文
化した条項を削除するには、条約締結国の国会の批准が必要で
あり、大変面倒なことだ。日本の提出している国連改革の問題
点のひとつに成っている。
所で、日本の国連安全保障理事会常任理事国になろうとする
理由についても、ひとつはここにある。させまいとする国々の
意志も、ここにある。従って、靖国参拝問題は、単なる文化摩
擦ではない。A級戦犯は、中国的倫理観と共に、死者ではない
。国連、つまり、中国共産党政府にとって、連合国側の一員と
して、対応できる問題なのだ。東京裁判の正否は歴史が決める
問題と、日本政府が主張できるものではない。もしすれば、連
合国全体を敵に回す事になる。政府は、東京裁判を受け入れた
と、声明せざるをえない。心有る政治家は、後ろを向いて、東
京裁判は歴史が決める、とボヤク。東京裁判に問題はある。し
かし、其れを言う必要は今は無い。
靖国問題と性格を同じくする問題は他にも多く存在する。歴
史問題と言うものも性格が似ている。ようは、軍国主義と見え
るもの全体が対象になる。日本共産党が問題点をほじくれば、
韓国中国は飛びついてきても不思議は無い。今後も繰り返され
る事が予想される。
中国共産党は、戦時中、毛沢東の強い命令で、人民解放軍と
日本軍との戦闘を、強く避けるよう命令していた。当時の共産
党軍は装備も余り整っておらず、日本軍は匪賊程度にしか見て
いなかった。しかし、国民政府軍が重慶に撤退した後に、赤化
工作を進め、日本の敗戦後、国民政府を台湾へ追い落としたの
であり、日本の敗戦時の中国政府は、国民政府であった。
このことが現在の中国政府(中国共産党政府)の対日政策に
微妙な影響を与えている。現在の、国連加盟国の多くは非共産
国であり、共産党独裁国家の大国は中国のみとなり、日本が国
連安全保障理事会常任理事国に成ると、共産党独裁、人権問題
等問題を抱えた中国は、国連の中での問題国家としての立場が
、際立ってしまうきらいがある。外交問題でも、日本、中国で
は常に優位を保てる保証は無い。国連憲章での敗戦国条項、敵
国条項を残して置きたい所であろう。
私としては、国連憲章の敵国条項は、敢えて取り払う必要も
無いのではないかと思う。すでに、日本が国連加盟を果たした
事で、敵国条項は死文化しているのであり、日本は常に敵国条
項の存在を意識することで、外交での戒めとする事が出来る。
政策、外交問題の基本に、普遍的倫理観を念頭に置いた態度を
維持し、ゆとりを持った柔軟性を維持することが必要であろう
。大国に対しても、毅然とした態度を維持するには、この普遍
的倫理観を持ったゆとりが重要である。