他の論点はすでに決着済みなので、今回は1点のみ、鉄骨が溶けた物証が「学術論文やFEMA報告書にもなっている」とか「火災による強度低下で倒壊したというのは、当初から唱えられながら何も支持する証拠のない憶測のような仮説」だというがまったくのウソであることを指摘しておきます。
鉄骨が溶けた物証なるもの
無党派通行人さんが間接的に示されたFEMA(連邦緊急事態管理局)の報告書の補足報告(リンクはPDF)にある部材のサンプル写真が溶けた金属の塊にみえる人はいないでしょう。
この報告書は、鉄部材が溶けた証拠を示しているのではなく、鉄部材が溶けない程度の高温下で浸食が進んでいたことを示すものです。
NIST(米国立標準技術研究所)の崩壊直前までのシミュレーションは、ビルの構造に対して飛行機の衝突以外の力が加わっていないことを証明していますし、ビデオ記録は、まさに飛行機の衝突と火災が発生したフロアでのみ崩壊を起こしたことを示しています。WTC1と2は、崩壊を起こしたフロアより上層の部分の重みに耐え切れずに下に崩れていったわけですから、公式説のポイントとなる部分は、飛行機の衝突と火災でフロアの構造部分に破損が起こるかどうかにあります。事実、NISTの調査員は、飛行機の衝突と火災がおきたフロアの鉄部材の回収に重点を置いていました。そして、上記のサンプルは、その物証と言うべきものなのです。
なお、NISTの報告書によれば、火災による温度は最高1000℃と推定され、この温度で鉄部材の強度は室温の10分の1にまで弱くなることが示されています。また、鉄部材の浸食部にみられる硫黄成分は、ビルの壁等に使われている石膏ボードに含まれているありふれた成分で、この結果に「最も深淵な謎」などというものはありません。
もちろん「浸食」もその部分をミクロでみれば“溶けた”ことになりますが、テルミットによる高温で溶けたというのとはワケが違います。
崩落時に溶け出した金属
これはNISTのシミュレーションによって飛行機の機体に由来するものと検証済みです。なお、無党派通行人さんが信頼しておられるジョーンズ博士は、純粋なアルミの溶解時の色と比較して、溶け出した金属はアルミではなかったなどと主張していますが、子どもだましもいいところでしょう。ビル内部を流れたアルミ合金が純粋なわけがありません。アルミが溶けるほどの高温で、ビルの内装物や備品が燃えなかったとでも言うのでしょうか。
(参考)先月公開されたNISTのFAQ
http://wtc.nist.gov/pubs/factsheets/faqs_8_2006.htm