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WTCタワーの崩壊に関する日本の専門家の意見

2006/10/21 澄空

 msqさんのサイトで、WTCについてのFEMAの調査を読んだ日本の専門家の意見が紹介されています。

 たわんだ床が外壁支柱を引張ったとするNISTの報告書と見事に一致する分析です。(1)FEMAの報告書でも指摘されている外壁支柱(論文では「外周柱」)の曲げに対する弱さの指摘、(2)床トラス(「床梁トラス」)と外壁支柱との接続部の溶接部の弱さの指摘、(3)熱によってたわんだ床トラスが外壁支柱に対する張力を発生させることの指摘、(4)耐火被覆が剥離しやすかったことの指摘などが図でもって説得的に指摘されています。(以下、強調は、澄空)
 初期の火災について述べた「中心支柱が床を通じて外壁支柱を引張ることはできない」というある論文の記述を不当に一般化し、そもそも“床が外壁支柱を引張ることはできない”と主張するトンデモ博士とは大違いです。これを読めば、NISTの崩壊説がどのようなものであるか概要は理解できるでしょう。

世界貿易センタービルの崩壊に関する報告/松下冨士雄 (PDF)

3.1 柱の継手
 3.1図に見るように、柱の継手は板厚34mmのエンドプレート方式で、接合部は4~6本のボルト接合である。この接合部の耐力は、同報告書でも言っているように、柱の曲げ塑性隊力の20%から30%程度のもので、曲げ、せんだん力には極めて弱い構造であった。
 このような大きな不連続な弱点を柱材に作ってよいものか、これは欠陥と言わざるを得ない。

3.2 床梁トラスの構造
 床梁トラスは弦材にアングルを用い、腹材に28mmの丸鋼を使用したトラス梁を二つ組合わせて一対とした構造である。 この構造で生ずる疑問は、外周柱とトラス梁の接合部である(外周柱との接合というけれども実際にはスパンドレル梁との接合である)、3.2図に特記しているように、接合法に横滑りを許容するものと、許容しない接合法を用いた併用接合である。
 この梁の弦材に横力が作用すると先ず隅肉溶接された接合プレートの溶接部が破断され、次にシートアングルのボルト接合部のスロット部が滑り、ダンバーも変位することになる。
 火災による温度上昇により、梁材が剛性低下し、3.4図のように梁の中央の撓みは大きくなりカテナリー状になる。カテナリー状になると弦材に大きな張力が発生し、梁端部の隅肉溶接を破断する、これに対して他の接合は何も強力してくれない。
 この破断は今回の火災後の倒壊に大きな影響を持つものと思われる。
 TCL社のWTCビル倒壊のビデオの中にも語られているように、この床梁構造に対して“Don't trust the truss”と非難されている、次の耐火被覆問題とも組み合わさってまさに問題構造である。

4. 耐火被覆の検討
 床梁トラスの耐火被覆は、同報告書によれば建設当初は19mm厚の吹付け工法であったが、1990年の半ばに38mmまでの追加吹付けが行われ、空室を狙っての施工のために全面改修までには至っていない。
 衝突箇所であるWTC1の94~98階は全て追加吹付けは完了していたが、WTC2の78~84階は未補修であった。
 この吹付け耐火被覆には2つの疑問がある。
 一つはこのトラス梁に対して全面的に所定厚さの吹付けが行われたのであろうかということで、もう一つはこの工法は衝撃や振動に弱く剥離し易いのではないかと言う事である。
 最初の疑問は、腹材の28mmの丸鋼に19~38mmの厚さの皮膜をどのようにして一本一本に所定の厚さを吹付けるのか非常に問題のある施工法である。
 TCL社のビデオによると、完成後のトラスの丸鋼の被覆は団子状であり、殆ど被覆がない処も部分的には見受けられた。この腹材が所定厚に被覆されていなかったとすれば床トラス梁の耐火性能には大きな疑問が生じる。
 二つ目の疑問は、報告書でもこの吹付耐火被覆は振動や衝撃に弱かったと認めており、今後の振動、衝撃に強い耐火被覆の開発を勧告している。