私の「9.11陰謀論」についての9/30の投稿がアップされたと同じ10/1に、澄空さんの9/29付の2つの投稿も同時にアップされました。それを読み、澄空さんのこの議論にのぞむ並々ならぬ決意を察しました。そこで改めてウェブ検索をかけ、最近の議論の成り行きを探索してみました。そこから見えてきたことは、9/30の投稿で私が期待を込めて書いたことと、まさに逆行する暗澹たる状況でした。
例えば9月だけでも、『週刊金曜日』しかり、『週刊ポスト』などの大衆誌しかり、「陰謀」を語る新たな新刊書も出版されている。これらに引きずられるように、平和を求める運動の中にも、古い議論を蒸し返して陰謀説を持ち出す意見表明がある、等々、現在、極めて危険な論壇状況に立ち入りつつあるということが分かり、私の認識の甘さを痛感し、反省しました。
多様な思想があり、情報過多を背景とした知識の偏りが避けられない状況で、特定の現象についていろいろな見方が生まれること自体はごく自然なことです。しかし、その見方を、責任をもって世に問おうとするなら、その論拠は事実に基礎を置くものでなければなりません(必要条件)。また、それらの事実が、主張に照らして互いに論理矛盾しない構造をなすものでなければならないでしょう(十分条件)。社会正義を求める立場からなされるとしたらなおさらのことです。これを怠るのは、社会的責任を放棄する「煽動」にすぎないもので、容認できません。
事実と論理に基礎を置くものであれば、論争には有益な発展が期待されます。新たな事実が発掘された時、論理の欠陥が発覚することがある。それを真摯に反省して乗り越えることで科学は発展し、たくさんの成果を生みだしてきました。しかし、私が調べた限りでは、現在の論壇状況の中で、特に「陰謀論」を主張する側は、そうはなっていないようで、全く批判に応えていません。ブログ上では、無党派通行人さんでさへも批判的に捉えておいでの『ボーイングを探せ』などの初期「陰謀論」の粗野な「つくりもの」を、今なお蒸し返しているものばかりです。
そこで、批判する側が事実誤認を問いただし、新たな事実をつきつけ、論理矛盾を指摘しても、返答に窮したまま、別の場所では同じ主張をくり返しているという事例をいくつか知りました。未解明の「謎」の存在を指摘するだけなら、トンデモ云々と非難さる筋合いはないでしょうが、批判にはまともに応えず、事実と論理を無視して議論を展開している。これは立派な?「トンデモ論説」です。科学を装う「似非科学」でもあります。
時の権力を糾弾し社会正義を実現しようとする陣営が、誤った論説にとらわれ、無駄な議論に終始し、権力に向けて的はずれな非難ばかりを繰り出す状況は、権力の側にとってこそ、まことにもって都合の良い状況です。的はずれな非難が痛くもかゆくもないだけでなく、やがてそれら論者の権威が根底から失墜する未来が見えているからです。私が危機的論壇状況と感じるのはそういう意味です。そこで、このような状況は、権力によって意図的に作り出されたものに違いないという仮説を立て、第三の「陰謀論」を展開することだって可能なのです。「陰謀」という言葉は都合の良いもので、語感として、はじめから証明の必要性を却下する勢いを持っています。
「現状分析と対抗戦略」討論欄において、9/16愚等虫さんと9/24人文学徒さんは、「自虐史観」論者にとって歴史学が科学ではなく「物語」であると述べられています。陰謀論者にとってもまた同じレベルで9.11が「物語」と化しているようです。私たちは、そうしたものに与することなく、あくまで事実と論理を大切にし、批判には誠実に応え、社会的責任を全うする姿勢を保ち続けなければ、社会正義の実現にむけては何事もなし得ないでしょう。
さて、以上を書き終えた頃、澄空さんから新たに2件の投稿(10/3、10/4)がありました。私も無党派通行人さんが9/26付投稿の末尾で紹介されたSteven E. Jones博士の”Experiments to test NIST "orange glow" hypothesis”のサイトをみましたが、子供だましもいいところです。あんな実験では、高層ビルからしたたり落ちる溶融金属?とされるモノの正体についてのなんの証拠もつかめないでしょう。実験映像のカメラワークも意図的なものかと勘ぐりたくなるほどお粗末です。陰謀論者がどうしてこんなものに拘るのか不思議ですが、論拠としてはこんなものしかないのです。
澄空さんが、6月の投稿で最初に紹介された陰謀説に対する批判サイトである「分解 『911 ボーイングを捜せ』」は、その後大幅な加筆がなされています。澄空さんの最近の二つの投稿でも示されているように、無党派通行人さんの論拠に対する十分な批判も含まれています。このサイトの批判に堪えうる「陰謀論」は存在しないと思います。
私のお薦めは、リンクにある「ほぼ日刊イトイ新聞 - 翻訳前のアメリカ。(鈴木すずきち氏)(第66~68回)」の3つのウェブページです。