『経済』2006年11月号に奇妙な「編集部のお詫び」が載っている。前号10月号で大村泉・渋谷正・平子朝長3氏の連名論文「新メガ版『ドイツイデオロギー』の編集と広松渉版の根本問題」(上)を掲載されたが「マルクス・エンゲルスの草稿の編集に関連して、その特定の版に集中的な批判をくわえることは、本誌の趣旨に添わないことでした」として、連載を打ち切るという短い通告文だった。
この論争は基本的に学術論争であると思う。学術論争は歓迎されこそすれ「本誌の趣旨に合わない」とは初耳だ。経験法則から推察するに、このような対処に出るときとは、何か政治的な背景があるものだ。それも日本共産党やその幹部の名誉や沽券と関連している場合だ。つまり大村らの連名論文が、最近の党幹部が別のところで書いたものと齟齬や矛盾、ないしその批判を込めた内容を含んでいる場合だ。
党幹部のうち、『ドイツ・イデオロギー』について発言し、かつその名誉と沽券にナーバスであらねばならぬものは誰か。社会科学研究所長という、党機関外の役職に就いて、事実上の院政体制を敷いているかのお一人しか浮かばない。このかたの神聖不可侵化の現象が生まれているとすれば憂うべきことだが、この推察が的を得ているのかどうか、事情、情報についてご存じのかた、心当たりのあるかたは教えてください。