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『「民主主義の逆説」と向き合いつつ・・・(たぬたぬさんへ)・追記』

2006/11/03 まこと 労働者

 先ほどの投稿に追記します。

 私がたぬたぬさんに推薦した福田歓一氏の「近代民主主義とその展望」(岩波新書)には次のようなくだりがありますよね。

「民主主義とは自分たちの制度・体制であると思い込み、この名前を独占しようと いう試みが出てくれば、それは事実において、せっかくの民主主義を固定化し、 その活力を奪い、最も悪いときは名ばかりにしてしまうおそれがあります。 (略)民主主義をイデオロギーの主戦場とし、これを軍事力と直結するならば、 この核時代にはたちまち人類の生存が脅かされる。第二次大戦後、東西の冷戦は まさにこういうものでありました。そこでは、米国の民主主義とは米国の現実で あり、ソ連にとってはソ連の現実であった。つまり民主主義の理念、民主主義 との価値原理が現実との間に緊張を持ち、現実を批判する基準になる余地は 見失われていたのであります。」(*福田前掲書 110ページより引用)

 この本の初版が刊行されたのは1977年ですから、福田氏は飽く まで「東西冷戦」の状況下を念頭においてこの一文を書きました。が、この福田氏 の指摘は現在もなお有効であると思います。

 アメリカ合衆国のブッシュ政権は「中東の民主化」を旗印にイ ラク戦争を戦い、そして今もなおイラクなど中東に軍隊を駐留させています。正 にブッシュ政権は自らの国家が「民主主義の体現者」であるかの如く振舞ってい ます。

 しかしながら、ブッシュ政権の言うところの「民主化」の名の 下で、数多くの イラク人が殺害されたり、またアブグレイム刑務所やグアンタ ナモ収容所で中東の 人達に対して著しい人権蹂躙が起きている(いた)わけです。

 また、所謂「9.11」以降、米国の国内でも反「テロ」愛国者法 などが制定され、 「テロ」対策の名の下で自由や人権が制限されつつあります。 また、この日本に おいても「共謀罪」の法制化などが「テロ」対策の名の下で企 図されているという 現実があるわけです。

 「世界に民主主義を拡げる」という美辞麗句の下で、こうした 状況が生起している。
 果たしてこの状況は、福田氏が民主主義の「ほかに求めがたい 長所」として挙げている「人間が政治生活を営むうえに人間の尊厳と両立する」と言い 得る社会なのでしょうか。

 私たちは、いまこの瞬間に「民主主義の逆説」と言うべき状況 が進行しつつあると認識すべきではないかと思うのです。

(以上)