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イプセン没後100周年に男女平等の社会めざし考える 大阪で「人形の家20 06」

2006/11/16 さとうしゅういち 30代 社会民連合事務局長(連合 系労組組合員)

 11月10日、「イプセン没後100周年記念@大阪:人形の家2006」(大阪 ドーンセンター 同プロジェクト主催)が開かれ、350人が参加しました。

 ※『人形の家』とは、ノルウェー劇作家・イプセンの代表作。19世紀、夫に従属 していた女性のノラが、葛藤の末、最後は家を出るというストーリー。

 第1部は「ダンス・創作パフォーマンス イプセンの女たち」。ノルウェー女優・ ユーニ・ダールの演技は、大変迫力がありました。彼女は一人芝居の中で次々と、イ プセンが描いた女性を演じました。演ずる女性が変わるごとに、服を一枚ずつ脱ぎ捨 てていきますが、これが「だんだん解放されていく」ということを示唆しています。 イプセンよ、100年前によくぞここまで書いたという思い、そして、ユーニ本人の 演技力に感動。

 第2部は「シンポジウム ノラが家を出るとき」。ユーニ・ダールさんに加えて、 ノルウェー王国大使館参事官のカーリ・ヒルトさん、DVシェルター「スペース・えん じょ」主宰の上田美江さん、手話通訳者の折原由紀子さん、立命館大学講師の伊田広 行さん、そして、第1部のフルート奏者のクリス・プールさんがパネラー。東海大学 講師の三井マリ子さんが司会でした。

 シンポジウムではまず、日本側からユーニの演技に対し、「力強い、女性だからこ そ感動できた」(折原)、「芸術は世界の共通語」(上田)、「自由を求める(過程) 」(伊田)など熱い感想が述べられました。

 その後、質疑タイムに入ります。

 「北欧では空気のように男女平等が当たり前に見えるが、日本では何重にもがんじ がらめ」との問いに対し、クリス・プールさんから、「男女平等が進んでいるように 見えるが、長い道のりの途中にある。同一労働同一賃金はまだ達成せず、DVの問題も 未解決。さらに音楽界は男のものであり、音楽店へ行くと男の作者ばかりである」と の答えがありました。

 フロアーから「演技をするにあたり何が大切か」との問いに対し、ユーニ・ダール さんは「呼吸が大切」と答えました。また、英語と母国語(ノルウェー語)の違いに ついては、ノルウェー語を英語にしてしまうと、意味が変わってしまうものがあると 説明。それぞれの言語の持つ独自性とその持つ意味の深さを感じさせられました。

 次は「ノラが家を出るとき」という本題に沿った討論になりました。日本の「ノラ」 についての話は、以下です。

 上田さんは、「日本の女性の実態はひどい状態。GDPは多いが、ノラの立場はさら にひどい」と一喝(2006年のGEM指数において日本は42位。先進国でもダント ツの下位。人間開発指数は7位との差が大きい。参照:「人間の豊かさ」指数、日本 は7位 11位から浮上」)。「関西DVシェルターを経営しているが、DV法ができて から男も賢くなって、身体的暴力は減ってきたが、逆に言葉の暴力がひどい。働く女 性はまた、『スーパーウーマン』を強いられ、しかも『収入があるから偉そうにする な』などと暴力を受ける。高学歴の主婦は、能力が発揮できず、うつ状態の人も多い。 構造的なものを外へ出していく必要がある。話し合って変えていこう」と、怒りをあ らわに報告してくれました。

 折原さんは、自身が出産予定を任免権者(千葉市)に通知したことで解雇された経 験を話しました。「出産、育児を社会が阻んでいる」「正規職員は産休、育休をとれ るが、女性は非正規職員が多く、その権利を取ることは難しい。今、日本で出産後に 働き続けることは、100年前のノラを同じ覚悟がいるのだ」と痛切に訴えました (筆者注:『働く女性の実情』2005年版によれば、女性の非正規職員は52.5 %)。

 カール・ヒルトさんは、「ノルウェーにそういう差別がなくなったわけではない。 しかしノルウェーには男女平等オンブッドというシステムがある。差別を受けた女性 の苦情を受け、差別企業を告発している。それでも守らない企業もないわけではない」 と、ノルウェーの差別撤廃機関である男女平等オンブッドの機能を解説しました。

 「解決するには、女性が組織して『ウルサイ女』になることが必要」というクリス・ プールさんの発言に万雷の拍手。また、世界の女性たちとの連帯が大切と三井さんが 付け加えると、ユーニ・ダールさんは「マリ子と会ったのは1995年の北京での世 界女性会議。こうして私がここでみなさんと交流できるのは、国境を越えたネットワー クと連帯の賜物」。

 次に「鳥籠に鷲を入れたら食いちぎる」というテーマで、日本での闘いについて、 日本の3人から報告が行われました。

 折原さんは、「弁護士に相談した。新規採用という形で雇い戻させることができ、 日弁連からの勧告も得た。何かをしないと変わらない」と語りました。

 上田さんは「戦うしかない。私は子どもも金も鎹(カスガイ)にならない、約束を 破ったらさよならだと、夫と結婚するときに約束した。こびないことが大事」と笑い を誘いました。

 最後に、愛媛県の女性から宅配された和紙の長い横断幕に書かれた大胆な書「鳥籠 に鷲を入れたらかごは食いちぎられる」を、壇上の全員が持って立ち上がりました。 司会の呼びかけで「鷲だと思っていらっしゃる方、どうぞこちらに」との呼びかけに、 会場から参加者たちが続々と登壇し、フィナーレを迎えました。

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 ノルウェー大使館の女性参事官、カール・リヒトさんには全面的にお世話になりま した。破格の低価格でチケットを出せたのも、ノルウェー政府のお陰です。逆に言え ば、「男女共同参画」を国として全面的に押し出すということができているノルウェー はすごいと思いました。長期的な国益(ということばはあまりつかいたくないが)を 考えて有効な「投資」をしていると思います。

 翻って日本の外務省は平和憲法をどれだけ押し出せているのか。日本外務省は多く の人材を抱えているが、かの国ほどの仕事が出来ているか、気になります。

 また、日本国憲法だって、世界的にも先進的だった男女平等条項があるのにどれく らい生かせているのか。世界一のノルウェーでもまだ「道の途中」という認識なのだ から、日本人ももっと努力をしなければならないのではないか、明日から自分も頑張 らねば、と強く思いました。

Satoh,Shu-ichi さとうしゅういち
E-Mail:hiroseto@f2.dion.ne.jp
地域・平和・人権・ 環境 広島瀬戸内新聞
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