豊中市のとよなか男女共同参画推進財団の「すてっぷ」非常 勤公募館長だった三井マリ子さんが、北川悟司市議ら戦前回帰 的勢力(筆者から見ると保守でさえない)の攻撃に遭った挙句 、最初は擁護してくれていた市から切り捨てられ、2003年度末 で「雇い止め」となった、館長雇い止め・バックラッシュ裁判 。
これまでの経過は以下の記事をご参照ください。
http://www.janjan.jp/area/0605/0605234886/1.php
http://www.janjan.jp/government/0607/0607087526/1.php
http://www.janjan.jp/area/0610/0610032132/1.php
https://www.janjan.jp/area/0611/0610313757/1.php
http://www.janjan.jp/area/0610/0610102556/1.php
前回の記事で少し触れましたが、豊中市側が嘘の上塗りをし てきたことが明らかになりました。
山本瑞枝・とよなか男女共同参画推進財団事務局長(当時、 以下同じ)と豊中市側による嘘の上塗りは、会議録(広い意味 での議事録)を改ざんした上に、被害者である原告・三井マリ 子さんにもその責任を擦り付けるまでに至りました。
事の次第は以下のとおりです。
原告が雇止めになる約1年前の2003年3月29日に同財団の評議
員会と理事会が相次ぎ開催されていました。このふたつの会議
の記録に関して、重大な事態がおきました。原告が在職中に入
手していた会議録(甲100号証、102号証)と、2006年4月に原
告の友人が情報公開要綱による開示請求で入手した会議録(甲101
号証、103号証)の内容が、大きく異なっていたのです。
それは、事情を知らない人が読めば、バックラッシュがいか にもなかったようにさえ思えてしまうほどの改ざんでした。例 えば、原告入手の評議員会の会議録(甲100号証)の井上評議 員発言は、甲101号証のように改ざんされていました。
◎改ざん前 「全国的にいくつかの組織・団体からフェミニズ ム・バッシングが起こっていますが、何が問題で、どういう風 にしようとしているのか、今までの広報の仕方やチラシ等とは 違う方法も含めて、何回も繰り返し丁寧に発信していかざるを えないのではないでしょうか。すてっぷにもバッシングがあっ たとのことですが、今の考えをお聞きしたいです」―井上はね 子評議員(甲100号証 p2)
▲改ざん後 「全国的にいくつかの組織・団体からバッシング が起こっていますが、何が問題で、どういう風にしようとして いるのか、今までの広報の仕方やチラシ等とは違う方法も含め て、何回も繰り返し丁寧に発信していかざるをえないのではな いでしょうか。すてっぷの考えをお聞きしたいです」―井上は ね子評議員(甲101号証 p2)
バッシング(攻撃)している対象である「フェミニズム」を 削除したため、単なる一般論としてのバッシングになっていま す。さらに「すてっぷにもバッシングがあった」も消されてい ます。 また森屋裕子評議員の発言はこう変えられています。
◎改ざん前 「バッシングが豊中市の条例をターゲットにして いることが広まっていますが、一番力になるのはすてっぷで活 動している市民であり、行政と連携して対応がとれることが重 要だと思います」―森屋裕子評議員(甲100号証 p2)
▲改ざん後 「豊中市もターゲットのひとつにしているように 思われますが、一番力になるのは市民であり、行政と連携して 対応がとれることが重要だと思います」―森屋裕子評議員(甲101 号証 p2)
森屋評議員の発言からは、「条例」がターゲットになってい るという表現が抜けています。そして極めつけは以下にあげる 三井館長の発言の変更・削除です。
◎改ざん前「バッシングの動きは世界的にも起こっており、豊 中市では、加えて統一選挙を控えている状況でしたので条例の 提案を見送らざるを得ない状況になりました。市民との連携は まだスムーズではありませんが、条例制定や男女共同参画に関 して何度か機会をもっておりまして、今後も連携を強化してい きたいと思っています。」 ―三井マリ子館長(甲100号証 p3)
▲改ざん後「バッシングの動きは世界的にも起こっています。 市民との連携はまだスムーズではありませんが、男女共同参画 に関して今後も連携を強化していきたいと思っています。」― 三井マリ子館長(甲101号証 p3)
三井館長発言では、「バッシングの動きは」と、主語はその ままですが、この発言の前の井上評議員発言の「フェミニズム ・バッシング」が削除されているので、市の政策目標であるフ ェミニズムそのものが攻撃されていることが隠されています。
また三井館長は、「豊中市では、加えて統一選挙を控えてい る状況でしたので条例の提案を見送らざるを得ない状況になり ました」と言っていますが、そこがそっくり削除されたため、 発言の真意が全く失われています。さらに、「条例制定や男女 共同参画に関して」から、「条例制定や」を削除し、男女共同 参画だけを残しています。「何度か機会をもっておりまして」 も削除しています。つまり、条例制定に関して市民と話し合い の機会をもったことまで無かったことにされているのです。バ ックラッシュ側に配慮したのでしょう。
つまり、北川悟司市議らが条例案反対で粘って審議拒否など をした場合、議員の任期切れがその年の4月に来るために、条 例が「継続審議」ではなく「廃案」になってしまうのを恐れた 。そこで最終的に上程延期を決めた。そして、秋の上程をめざ して議会交渉をした時点で、北川議員と条例制定と引き換えに 三井さんを斬ったのではないかという原告の主張を打ち消すた めには、市および財団は、フェミニズムへの「バックラッシュ 」を過小評価し、さらに「条例がターゲットだった」という事 実も消す必要があったのです。
ところが、事もあろうに、山本事務局長は、原告三井さんが 、議事録の改ざんを了承していたと言いだしました。罪を被害 者の三井さんになすりつけ、自分を、すなわち市を守ろうとし ているのです。このたび山本事務局長は、「発言の趣旨を変え ない範囲」で、「自分の『修正』『削除』の提案を原告も含め て2003年6月9日の事務局運営会議で了承し、議長および 議事録署名人に送付して確認を得、会議録として確定したもの が甲第101号証と第103号証(=改ざん後の議事録)」だという 内容の陳述書を、原告本人尋問の直前に提出しました。
しかし、事実は全く異なります。
2003年6月9日の事務局運営会議で修正したのは、2003 年度最初の理事会・評議会の会議録です。
そもそも、理事会の議長を務めた高橋叡子理事長自身が、改 ざんを「知らなかった」と2006年10月2日の被告証人尋問 で答えています。全く矛盾した話です。そして、改ざんについ て、「山本事務局長がやったのだろう」と答えています。理事 長にも知らされていなかったのです。大体、当時、バックラッ シュと必死に闘っていた原告の立場にたてば、改ざんを在任中 のどこかで知っていれば、「ふざけるな」と心の底から怒り、 山本事務局長を問いただしたことでしょう。そんなことはおき ていない。
また、FAX事件(2002年12月にバックラッシュについて 山本事務局長名で理事や評議員にFAXで情報提供し、それを1 年後に知った北川議員が逆切れして市役所に怒鳴り込んだ事件 )について、2004年3月に原告の山本事務局長への監督責 任が問われ、始末書を書くように山本事務局長が原告に求めて きたことがあります。原告はそれを断っていました。しかし、 もしも原告がこの改ざんに気がついたとすれば、山本事務局長 への監督責任を強く感じて、始末書なりなんなり潔く処分を受 け入れたことでしょう。
被告財団は、2003年6月9日の「運営会議報告書」を証拠 として提出していたのですが、そこには「バックラッシュ対策 :理事会・評議員会議事録関係発言の主旨は変えず、表現を見 直す必要あり(市と調整中)」という記載があります。
6月9日時点で「市と調整中」だったのですから、山本陳述 書にある「6月9日に原告は了承」することなど絶対不可能で す。そして豊中市と「調整」の末、「発言の主旨は変えず」ど ころか、大幅な改ざんとなったわけです。
館長であった原告や理事長など財団の「内部」での話ではな い。「外部」である市と調整して決めた、と市から派遣された 事務局長みずからが告白しているのです。これは、市の圧力で 会議録を改ざんした、ということをうかがわせます。
この改ざんの一件で、財団は市の「植民地」であり、「トッ プの意向」で山本事務局長が重大事項を何もかも進めていた、 という疑惑がさらに深まりました。