大阪府豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の全 国公募の非常勤館長だった三井マリ子さんが、北川悟司市会議 員ら戦前回帰的勢力(筆者に言わせれば「保守」ですらない) の攻撃にあい、その挙句に豊中市から2003年度末で雇い止 めにあったとして市ととよなか男女共同参画推進財団を訴えて いる「館長雇い止め・バックラッシュ裁判」の今年最後の口頭 弁論が大阪地裁で行われました。事件の大枠は「声明文」を参 照してください。
裁判長は、席上、原告側が要請していた桂容子現館長の証人 採用を受け入れました。2月21日13時45分から証人尋問 が行われます。一方、一色貞輝前市長については原告の要請を 却下しました。また、今日新たに原告側が申請した、吉井佳容 子さん(読売新聞、すてっぷ理事、館長採用選考委員)も却下 されました。
桂さんのお話を直接聞いている一村和幸市議の陳述書、なら びに今回提出された三井さんの陳述書によると、三井さんが常 勤館長に就きたいという意思を表明した2004年1月末、そ して、三井さんを館長候補にすることが話し合われた2月1日 の理事会よりあとの2月9日に、桂さんが、採用面接の選考委 員のひとり本郷人権文化部長から、2月22日の採用面接につ いて「あなたしかいない」と言われたのです。
一方、桂さんには「あなたしかいない」と言ったことを市の 本郷部長は認めているのですが、言った時期を三井さんが常勤 館長の意思を表明していない段階である、というようにごまか しています。
しかし、桂さんが「あなたしかいない」と本郷部長から言わ れた時期が、2月9日なら、選考委員会開催が理事会で正式に決 まってからのことです。しかも、「あなたしかいないと言った 人」が選考委員だったわけで、いかに選考委員の構成が恣意的 であり、面接が茶番であるということかを証明することになり ます。
被告側は「一村陳述書は不正確な点がある」などと主張して いましたが、裁判長は、2月9日のことを中心に桂さんのお話 をうかがいたい、としました。
法廷後の「交流会」では、桂さんの話を基に、陳述書を書か れた一村市議からお話いただきました。彼は桂さんが正直に法 廷で証言してくれたら、この事件は簡単に解決すると思ってい ると強調し、桂さんも行政の被害者ではない か、とされまし た。
山田千秋さんも、豊中市男女共同参画推進条例を推進した市 民として陳述書を出しています。市がバックラッシュ攻撃を受 けた当初、市は市民に「応援してくれ」という風情だったのが 、2003年の3月議会への上程が取りやめとなり、その後、 夏ごろには態度が変わってきた。市民が一生懸命運動すること を迷惑がられるような感じになったと生々しく証言しました。 山田さんによると、当時の人権文化部長は「バックラッシュの 力で条例が上程できなくなった」と市民に説明していたのです が、証人尋問で、本郷部長は「当事の部長はそういうことを言 ってないと言っている」などとし、あげくに「市民の証言はあ てにならない」というように言い出したのです。
和田明子さんも市民として男女共同参画を推進してきた立場 から陳述書を出しました。和田さんは市民を都合のよいときは 呼び寄せるが、都合が悪くなると使い捨てにする、と市のあり 方を批判しました。また、三井さんの館長続投を求める市民た ちが何度か要請文を市に送ったが、その市民たちを分断しよう としたと証言しました。
さらに本郷部長は、三井さんが危ないという記事を『女性ニ ューズ』(専門誌)に和田さんが書いたことを知り、和田さん に抗議の電話をかけてきたそうです。それは恫喝に近い圧力的 な電話だったということです。
声 明(案)
2006年12月25日
本日、大阪地裁にて行われた「館長雇止め・バックラッシュ裁
判」で、山田陽三裁判長は、私たちが要望していた、桂容子・
「すてっぷ」館長の証人尋問を行うことを決定しました。この
決断を高く評価するとともに、一色貞輝・前市長の証人採用を
見送ったことに対しては、遺憾の意を表明いたします。裁判長
におかれては、これまでの証拠から公平かつ賢明な判断を下さ
れることを強く要望し、私たちはなお一層この裁判に注目して
いくことをここに表明するものです。
三井マリ子さんは、大阪府豊中市の男女共同参画推進センター 「すてっぷ」開設にあたって全国公募で館長に選ばれました。 しかし、組織体制強化に名を借りた豊中市の“館長常勤化策” によって、2003年度末で雇止めされました。背景には、旧来の 性別役割分担に固執する市議らの執拗な「すてっぷ」や三井館 長攻撃(バックラッシュ)がありました。豊中市は、2003年秋 以降密かに後任館長探しに奔走し、年末には桂容子さんに決め ていました。ところが、年明け後に茶番劇のような選考試験を 行い、受験した三井さんを不合格としました。この一連の経緯 に対して、三井さんは2004年12月17日、豊中市と「とよなか男 女共同参画推進財団」を相手取って損害賠償の訴訟を起こしま した。
証人尋問で、高橋叡子理事長は、理事長職に6年もありながら 「私は男女共同参画の専門ではない」と逃げたり、民間法人で ある「すてっぷ」職員の任免権は理事長にあるはずなのに「任 免権は市長と理事長」としたり、「私の仕事は、事務局長と豊 中市からの情報に絶対の信頼を置いて判断すること」などと答 え、財団は市の事実上の「植民地」に過ぎないことが明らかに なりました。また一村和幸・豊中市議の陳述書によると、桂容 子さんは、面接前に本郷和平人権文化部長から、「あなたしか いない。面接は形式的なもの」と聞かされ、館長候補は自分ひ とりであり、形だけの面接だと認識していました。一方、豊中 市は「面接は公正に行われた」と証人尋問で弁明していますが 、偽証罪にもなりかねない重大な矛盾をはらんでいます。さら に財団は「一村市議の陳述内容は不正確だ」などと言い出しま した。しかし、どの部分がなぜ不正確かは言っておらず、桂さ んの証言内容が注目されます。
この事件の特徴は、「男女共同参画」を進める責務を負う豊中 市がバックラッシュ勢力に屈した結果、身を粉にして働いてき た三井館長をだまし、使い捨てたことです。それは三井さんが 非常勤という非正規職員だからでした。非常勤なんて大した仕 事をしていないのだから首は簡単に切れる、と豊中市は言いた いらしいのです。非正規社員は大した仕事をしていない、だか ら使い捨てOKと思っている会社は多数ありますが、豊中市はこ うした差別的企業と酷似しています。その意味で、この裁判は 「21世紀の奴隷解放運動」(三井)です。また、今、全国各地 の自治体や議会で起きている男女共同参画推進に水を差す反動 的動き(バックラッシュ)を象徴する事件でもあります。
日本の労働法をも変える勢いで挑む力強い弁護団と、原告の三 井さんを支えながら、私たちは勝利めざして最後までがんばる ことを期し、声明を発します。
館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会(略・ファイト
バックの会、代表・上田美江)
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