参院選をめぐる争点は安倍「改憲」政権の是非であり、自民
党統治の是非そのものである。平和と民主主義を志向してきた
「戦後レジーム」を「改憲」によって覆そうとする安倍極右政
権の野望を打破することにあるが、自民党と安倍はもちろんの
こと、民主党の小沢代表も憲法問題やイラク派兵など、選挙の
争点を余り語らない態度がみうけられるのは残念である。
また、参院選をめぐって、野党の採るべき選挙戦術とは安倍
政権を過半数割れに追い込むことであり、そのためには、選挙
区における野党乱立で自民党に漁夫の利を得させることを回避
し、当選の可能性がありそうな選挙区だけに野党各党の候補者
を立てることである、という議論がある。現実的には、いわゆ
る2大政党制のうち、1人区での民主党に投票することを推奨
する議論であるが それには矢張り人選と政策協定が不可欠で
ある。
たとえば、社民党が民主党と山形、香川、秋田、富山、愛媛
などで選挙協力をしているが、そのうちには、社民党推薦で無
所属として出る民主党系候補がマスコミのアンケートで改憲に
賛成し、「自衛隊保有を明記」と回答してるなど、とても投票
する気になれない例が多々あり、注意が必要である。
それに、民主党の政策自体にも、とてもついていけない内容
のものが少なくない。年金関連では、「最低保障」年金制度を
打ち出しているが、現在の無年金・低年金の解決には役に立た
ないし、しかも「最低保障」年金の財源は全額消費税でまかな
うというものである。「消費税率は現行のまま行政改革を優先
して年金の財源に充てる」としているが、「将来、消費税の増
税は不可避だ」(鳩山由紀夫幹事長、6月25日の講演)とい
う立場なのである。
社会保障の分野でも、多くの「介護難民」を生みだした介護
保険法改悪(05年)に賛成したし、また、母子家庭への児童
扶養手当削減(02年)などにも賛成している。さらには「医
師不足の解消」(マニフェスト)をいうが、財界には「公的医
療給付費の抑制」を公約(06年、「日本経団連と政策を語る
会」)し、一般病床・療養病床などの44万床削減をも提唱し
ている(「民主党医療制度改革大綱」)。
「政策10本柱」で「雇用を守り、格差と戦う」と公約する
が、労働者派遣の原則自由化(99年)に賛成し、企業リスト
ラ・人減らしを促進させる「産業再生」法の改悪・延長(20
03年)にも賛成している。
参院選には余り触れないようだが、05年の「憲法提言」で
は、「自衛権を明確にする」として集団的自衛権の行使に道を
開き、国連の軍事活動参加で「武力の行使を含む」と明記する
など、9条改悪では自民党と同じ立場であることは決定的であ
る。また、米軍再編でも「地元の理解」があれば推進する立場
であり、「自衛隊のイラク派遣終了」を主張するが、海外派兵
は否定していない。「靖国」派議員を多数抱え、「従軍慰安婦
」問題での米下院決議反対の広告にも13人が名を連ねている
ことなども、要注意である。
云うまでもないが、自民党とは「核の傘」に依存して核兵器
廃絶に背を向けてきた核まみれのダーティな集団である。参院
選に出馬した自民党の丸川珠代(東京選挙区)、西田昌司(京
都選挙区)、鴻池祥肇(兵庫選挙区)らは、「毎日」の候補者
アンケートに回答し、日本の核武装について「検討を始めるべ
きだ」という立場を示した。
日本の核武装については、わが国が唯一の被爆国として、核
兵器廃絶を地球規模で実現することにこそイニシアチブを発揮
すべきであるのにもかかわらず、自民党の麻生外相や中川政調
会長が、核武装議論を促す発言を繰り返した。わが国の国是と
されてきた『非核三原則』を変える議論であり、これらに呼応
して久間防衛相が「しょうがない」暴言で原爆投下を容認して
辞任したあと、防衛相に就任した小池百合子も、03年11月
の衆院選で毎日新聞が実施した「日本の核武装構想について」
のアンケートで、「国際情勢によっては検討すべきだ」と回答
していたことなど、丸川ら自民党候補たちの主張はこれらの核
武装論にまさしく洗脳され呼応したもであり、安倍自身、かっ
て敵基地先制攻撃論をぶっぱなしたのと併せ考えても、まさし
く核汚染どっぷりの異常きわまる物騒な怪物政党であるといわ
ねばならない。
それに安倍がテレビ党首討論で、「国連総会で、核を廃絶す
るという決議を日本が提案者で出しています」とし、日本が核
兵器廃絶をリードしているかのように述べたが、実際には政府
は、核廃絶を究極のかなたに追いやる「究極廃絶」論でしかな
く、核兵器の使用禁止や廃絶を求める一連の国連決議に棄権し
てきたのが真相である。このような政府の立場が、原爆投下は
「しょうがない」との久間前防衛相発言や、それをかばい続け
た安倍首相の姿勢の背景にあるといえるだろう。したがって、
自民党内が核武装に対する貞操観念が皆無なルーズなセンセイ
方で埋め尽くされているのは大いに「理解」できるところだ。
こんな異常で物騒な政権政党と戦うには、曖昧模糊とした立 場の政党や候補を推奨するのは国民に対して申し開きができな いし、また、場合によっては国民を裏切ることにもなる。野党 の採るべき選挙戦術とは安倍政権を過半数割れに追い込むこと ではあるが、そのためには、まず堂々と汚染しきった自民党と その候補たちの本質と内容を暴露し、自己の政策や世界観を明 確にして国民自身の判断を仰ぐことが先決である。選挙区にお ける野党乱立で自民党に漁夫の利を得させないためには統一戦 線で戦い、可能性がありそうな選挙区だけに野党各党の候補者 を立てることも必要であるが、それには大いに政策協定を結べ る相手同志ということが絶対の必要条件であろう。国民の安寧 な生活と平和な世界を構築していくためには、場合によっては 自己の曖昧な政策を再検討して立て直し、国民に正々堂々とそ の成果を提示することを通じて、揺るぎなき統一戦線を促進し ていくことこそが不可欠であり、王道というべきであろう。