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「小泉・安倍政治の弊害除去」能力こそが「政権担当能力」だ

2007/8/10 さとうしゅういち 30代 社会市民連合事務局長、連合組合員

 過去、野党が参院選で勝ったり、支持率が上がったとき、常に マスコミなどに投げかけられた言葉が「政権担当能力」です。

 野党に自民党と同じ路線を取るよう要求し、野党がそれをで きないと、「野党は政権担当能力がない」と批判する。

 さりとて、では野党(とくに民主党)が、自民党と同じ行動 をマスコミの要求どおり行えば「違いがわからない」と叩く。

 この繰り返しではなかったか?野党幹部からすれば「いった いどうしろというのだ!?」という思いがあるでしょう。

 今回も、早速一部の新聞が、小沢さんが「テロ対策特別措置 法」延長に反対したことを取り上げ、民主党に「政権担当能力 がない」といわんばかりの論陣を張っています(8日の読売新 聞社説など)。

 考えてみると、与党が惨敗するのは、1989年参院選挙の ように自民党のスキャンダルなどもある。

 しかし、今回は、やはり、6年間の小泉・安倍政治の矛盾が 一挙に噴出したということではないでしょうか?

 格差の拡大。貧困の増大は、いまや、労働経済白書も看過で きないところまできています。

参照:評価したい 今年の労働経済白書

 妊娠したら女性は解雇、などということがまかり通り、政府 の少子化対策など掛け声倒れです。

 低所得者まで行かなくとも、中間層でもセーフティネット( 介護や医療など)がそもそも貧弱な中で、改悪され、不安が高 まり、経済にも悪影響が出ている。

 一方、「改革」の名の下、一部の小泉さん、安倍さんのお気 に入りの知識人や経営者らだけで、審議会などが構成され、経 済政策が決められ、彼ら、彼女らが自ら利益を得る、という構 造が定着しつつあります。

 もちろん、介護などで私が直面したように、旧来のいわゆる 「官僚政治」も硬直しています。

参照:私の参院選争点(5・終)行政改革・庶民のためになっている のか

 が、しかし、小泉・安倍政治も官僚政治の弊害をあまり改め ないまま、もっとひどい状況を生み出しました。

 地方分権と称して、実際は、地方交付税をカットし、弱みに 付け込んで、札びらでほっぺたをひっぱたくようなことも多か った。

参照: 「平和宣言」が消える広島・大竹市の原爆死没者追悼式

 外交でも小沢さんがいうとおり、日本は、国連にオーソライ ズされない「違法」なアメリカの戦争にアフガンで加担してい る。イラク戦争にも真っ先に支持を表明した。「そこまでして やっても」アメリカが何をしてくれたか。

 北朝鮮とアメリカは日本を差し置いて緊張緩和しつつある。 小泉・安倍路線ははしごをはずされたのではないかという疑念 が広がっている。

 それでも、まだ、格差是正などを後まわしにして、「新憲法 制定」や、「集団的自衛権」行使解禁と称して、解釈改憲に突 き進もうとする安倍さん。

 山谷えり子さんら仲良しのネオコン政治家や知識人と一緒に 、庶民感覚から乖離した「教育再生会議」という「田楽」「闘 犬」に、北条高時よろしくふける安倍さん。

 山谷さんをはじめ、小池百合子さん、高市早苗さんらネオコン 女性政治家=現代の御内人に「護衛」され、「仲良し政治」を 進める安倍さん。

 彼への違和感は、生活を重視する保守層でも高まった。広島 県の農村部でも自民党比例区ポスターが見られませんでした。

 そんなときに、野党がマスコミの挑発に乗ったらいいことは ない。民意が安倍路線を否定したのだから、それを継承したら 自殺行為です。

 今の状況は、北条高時=安倍総理が事実上失脚した状態です 。高時と違い、「切腹」を拒んだ安倍さんすがこのままでは、 党も安倍さんも「野垂れ死に」でしょう。

参照: 「北条高時」にもなりきれなかった安倍総理

北条幕府=自民党幕府滅亡後どうすればよいか?  もちろん、北条幕府滅亡後、一時的に権力を握った後醍醐天 皇の「建武の新政」のような現実から乖離した理想主義ではい けない。かつての日本社会党ならそういう危惧を抱かせたかも しれない。だが、それは今はない(むしろ、組合なども十分困 っている労働者のためのラジカルな闘いができなかったほうが 問題)。

参照: 「なんちゃってリベラル」から脱却を―連合・林誠子さんへ

 NHK大河ドラマ「太平記」では、鎌倉幕府滅亡後、足利高 氏は以下のようなせりふをはきました。

 「鎌倉陥落の話をして「これで我らの世じゃ!良い世の中に なりまするぞ」と則村(赤松円心のこと:筆者注)は笑って立 ち去っていった。

 「のう、直義、師直……戦には勝ったが、あの子たちに食べ 物をやらねばならん、家も建てねばならん。これから大仕事じ ゃのう」と高氏は言うのだった。 」

参照: 第二十二回「鎌倉炎上」(徹夜城の多趣味の城、太平記)

 今ならこんな感じでしょうか?「国民の皆さん……。自民党 には勝ったが、あの子たちに食べ物をやらねばならん、家も建 てねばならん。これから大仕事じゃのう。ご協力お願いします !」

 今後とも、野党が、生活再建など「小泉安倍政治」の弊害を 除去する法案を出し、国民もこれを支持すれば、政府・自民党 もむげには拒否できないでしょう。

 野党の皆さんは、国民の暮らしを第一に考え、「足利高氏」 のような気持ちを忘れないことです。国民はうかつにマスコミ の挑発にのらず、また自民党を負かしただけで満足せず、国民 の利益を守るよう政治家を監視・叱咤激励していきましょう。

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