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既報のとおり「平成版・北条高時」状態に陥った安倍総理

2007/8/30 さとうしゅういち 30代 サ ラリードパーソン(社会市民連合事務局長、連合組合員、一応 民主党員)

参照記事:
政治・「北条高時」にもなりきれなかった安倍総理

 まさに、自民党を支持してきた保守層からも、「小泉支持」 の無党派層からもそっぽを向かれ、参院選で「KO負け」を喫 しました。まるで、後醍醐天皇はおろか、「身内」のはずの足 利高氏(最後の執権・赤橋守時の妹の夫)にも裏切られた北条 高時のようです。

 安倍改造内閣は27日発足したが、その効果はいかがなもの でしょうか?たしかに大臣を「総とっかえ」しました。だが、 安倍総理が「高時」を脱出できるかどうかははなはだ疑問です 。

「虻蜂取らず」で「北条高時」状態に

 そもそも、なぜ、安倍総理は、「北条高時」状態に陥ったか ?

 その前に、前回使用した、政界の座標分析を再び持ち出しま す。

 図の上のほうがリベラリズムで下へ行くと権威主義。図の右 へ行くと格差大(ネオリベラリズム)で、左へ行くと格差小( 社民主義)です。

 「日和見」が続きそうな改造後の「安倍内閣・自民党」。右 上に近い石原政調会長と左下に近い麻生幹事長で安倍総理はリ ーダーシップを取れるのか?  前総理・小泉純一郎さんは、旧来自民の基盤であった左下を 切り捨てつつも、ネオリベラリズムをはっきりさせ、図で言え ば、右上と右下を固めました。また、左下も、「与党」である 自民党に我慢してついていく人もいたので、左下もそれなりに 固め、9.11総選挙で圧勝しました。

 しかし、今、小泉さんの政治による矛盾が噴出しました。つ いに、左下の人々も堪忍袋の緒が切れてきた。これに対し、安 倍総理は、右下のイデオロギー(新自由主義+権威主義)にシ フトすることで、左下の歓心を買おうとした。また、左下を支 持基盤とする郵政民営化反対離党組を復党させました。

 一方で、経済政策では新自由主義を堅持することで、右上勢 力(都市部のネオコン的無党派層やアメリカ)に色目を使った つもりでした。しかし、虻蜂取らずとなったのです。その上で 、ご本人の年金問題や政治と金の問題での後手後手の対応が響 いたのです。

アメリカの冷酷さと日本の古臭さを合わせた最悪の政治に

 山谷えりこさんら総理側近は「母乳で子育て」「子守唄で子 育て」などを呼号し保守層の歓心を買ったつもりでした。しか し、いまや、多くの女性が、低賃金でしかも正社員並みの労働 時間を働いているのです。

 小泉政府の構造改革の元、夫たちの賃金はずいぶん削られま した。若い世代では夫婦ともにフリーターというケースも多い のです。山谷さんら高齢世代が若いときにあった「地域の助け 合い」なども消滅しています。戦前で言えば(よいか悪いかは 別にして、歳の離れた)兄や姉が弟や妹の面倒を見ていました 。

 「日本型権威主義」の前提としてあった「日本型社民主義」 が崩れているのに気がつかないでいた安倍さんの「KY」ぶり が惨敗の一因です。

 「高時は異常なまでに闘犬に熱中しており、将軍や御家人達 も呼びつけて闘犬見物をさせていた。犬達の闘いにはしゃいで いた高時だったが、ふと同席している高氏が退屈そうにあくび をしているのを目にしてしまう。怒った高時は高氏に闘犬用の 猛犬を引いて場内を回るように命じる。高氏は引くどころか猛 犬に引きずられ、さらに飛びかかられ、犬と組み合う乱闘に。 たまらず場内を逃げ回る高氏の姿に、高時は「あれ見よ!」と 大喜び。見物客一同もどっと笑うなか、高氏は身も心もボロボ ロになって闘犬場を引き揚げていく」(徹夜城の多趣味の城  NHK大河ドラマ「太平記」大全 第一回「父と子」)

 これが以下のようにいいかえられます。

 「安倍・山谷は異常なまでに『教育再生』に熱中しており、 国民も呼びつけて実践をさせていた。『教育再生』にはしゃい でいた安倍・山谷だったが、ふと同席している女性たちが退屈 そうにあくびをしているのを目にしてしまう。怒った安倍・山 谷は女性たちに「母乳で子育て」「子守唄を聞かせる」ように 命じる。女性たちは仕事でくたくた。地域の支援も昔のように は得られない。なので、どうすることもできない。たまらず場 内を逃げ回る女性たちの姿に、安倍・山谷は「あれ見よ!」と 大喜び。閣僚たち一同もどっと笑うなか、女性たちは身も心も ボロボロになって闘犬場を引き揚げていく」

 悪く言えば「現代の庶民の苦労を知らない年寄り(昔のそれ は知っていても現代のそれは知らない)」のイデオロギーを振 り回し、現役世代の反感も買いました。「アメリカの冷酷さと 日本の古臭さを合わせた最悪の政治」になったということです 。

 そこまでいかなくとも、暮らしを無視して新憲法制定を求め る安倍総理への違和感は若い世代でも広がった。

参考ニュース:
http://www.chugoku-np.co.jp/senkyo/sanin/07/News/Ew07061904.html

 むろん、ネオコン無党派も、「安倍さんは古臭い」と感じ、 離反した。テレ朝キャスターの古舘伊知郎さんなどは、安倍さ んを「改革が後退している」と毎晩論難しました。彼に影響さ れやすいようなネオコン支持の無党派は安倍さんから離れたで しょう。

 アメリカや官僚からも警戒感が広がった。たとえば北朝鮮を めぐるアメリカの姿勢転換に安倍総理は邪魔になったのです。 官僚や財界の中でも、格差の拡大などの中で、さすがに「これ はまずい」という雰囲気が広がった。あるいは、「世界版北条 高時」にアメリカがなりつつあるとき、極端なアメリカ追従は 日本の官僚にとってもまずいし、アメリカ自身も「日本の面倒 まで見ていられない」のです。

参考記事:
「世界版・北条高時」ブッシュ大統領の「滅亡」に巻き込まれ る日本

 にもかかわらず、安倍さんは八田・大阪大学教授(経済財政 諮問会議議員)らを重用し、小泉路線を堅持しながら、山谷さ ん的古臭さを導入したのです。「ネオコン」無党派からは、「 古臭さ」を嫌われ、庶民からは「飯を食わせないのにうるさい ことを言う」ことを嫌われた。その根本矛盾を解決できない限 り、安倍総理に明日はありません。

民主党と対照的な結果に

 民主党は、逆に言えば、「社民主義」(=国民の生活が第一 )一本に旗を絞り、左下と左上を固めたのです。だから「わか りやすかった」。小沢さんはある意味、小泉さんの「向こうを 張った」のです。

 民主党は本来、右上の政党でした。すなわち、政治的リベラ ル、経済的にはむしろ新自由主義です。これに、小選挙区制に より、「共産・社民ではどうせだめ」とあきらめた左派的な人 々や労組が加わったのです。

 しかし、今回、小沢さんは、左へシフトした。そして、全党 的な議論を一応経て、マニフェストを作った。 パブリックコ メントもきちんと昨年12月に行った。私と仲間がやっている 政治グループも意見をおくらせていただき、それなりの幹部の 方と議論もできました。

 ですから、あの前原誠司さんでさえ、最終的には、テロ対策 特別措置法の問題でも小沢さんに従う意向を示した。議論を国 民を巻き込んできちんとして、「決めたらさわやかに従う」と いうことです。

 安倍さんは、違う。「裏でこそこそいろいろな人に色目を使 った」のです。一方で、「言うことを聞かない人」や国民に対 しては強圧的な態度に出る。「美しい国」といいながら、実際 は「えらい人」の「談合政治」です。

抜本的解決は「高時切腹」

 今回、閣僚は取り替えました。 まさに「北条高時殿以外全 員切腹」内閣です。しかし、
 1、参院選で示された国民の意思に沿った抜本的政策転換
 2、民主的な議論でいろいろ決める
 3、総裁選の前倒し実施(安倍さんも出てよいが信を問わね ばなるまい)
という抜本転換がないかぎり、「北条高時状態」を脱すること は不可能です。

 たとえ、「脱お友達」で、いろいろな人を登用しても、総理 自身のスタンス転換がなければ意味を成さないでしょう。逆に いえば、小沢さんは、党内に多様な意見を抱えながらも、昨年 末に、侃々諤々、議論をしてまとめたスタンスを貫いて、勝っ たのですから。というより、今の安倍さんを見る限り、「高時 切腹」=総理退陣以外に方法はないでしょう。