「科学をどのように定義するのか」というご指摘ですが
、私は何度か書きましたが、科学とは明らかにできる小さい分
野に絞って仮説を立て、実験をして、真理を明らかにしていく
ものだと考えています。そして、明らかになった真理は「すべ
ての人が認めざるを得ない確かな知識、つまり科学の知識」と
なるのです。
そうした科学が古代ギリシャに生まれていたのか、いなかっ
たのか、という問題ですが、たとえば、「地球」のことを考え
てみましょう。
古代ギリシャの哲学者達は、「地球が球状だ」ということを
知っていたと思いますか?知っていなかったと思われますか?
実は、目に見えない小さなアトム(原子)も大きくて目に見え
ない地球もともに古代ギリシャの時代には研究対象になってい
たのです。
アリストテレスは実に10の証拠を挙げて地球が球状である
ことを証明しています。たとえばこんな風です。
月がみちかけするのはどうしてか、それは地球のかげが映っ
ているからだということをアリストテレスは知っていました。
そして月が満ち欠けするとき、どんな風な月が見えるのか、と
問い
かけたのです。
中学校の理科の試験でありましたよね。
その満ち欠けの形から、地球は球状であるはずだ、というの
です。
またこんな風にも言います。
「船から陸地を見ると、山の頂上から見えてだんだんと下の
ほうまで見えてくる」というのです。これも地球が平面ではな
い証拠だというのです。
さらに、月食はなぜ起こるのか、を考えると、月食は満月の
時だけに起こります。満月の時は、太陽は西の空に沈み、月は
東の空に昇ります。つまり太陽から月に向かう光が地球に邪魔
されて、月食がおこるのだ、というのです。ならば、地球はま
ん丸に違いありません。
こうしてアリストテレスは、地球が球状であることを証明し
ました。地球は球状ではないか、という仮説を立て、実際に月
の満ち欠けを見、船から陸地を見、月食を見たのです。これは
実験にあたります。そして、その結果を当時の多くの哲学者が
真理であると認めたのです。
これは科学ではないでしょうか。
また、古代ギリシャ最大の科学者といわれるアルキメデスは
、「この世には{軽さ}をもったものなど存在しない。{もの
がときとして上のほうに動く}のは、まわりの物体から押し上
げられるからだ」と考え、さまざまな実験を繰り返して、浮力
の法則を発見しました。
また、この2人よりさらに前、ターレスは、日食が周期的に
おこることを発見しています。
そのほかにも、古代ギリシャの時代には様々な科学上の発見
がなされています。
しかし、残念ながら、それらの発見は、中世には忘れ去られ
、灯台守さんがおっしゃるようにガリレオが登場するまで、埋
もれてしまっていたのです。
政治上の問題が科学で解けるかどうか、という問題ですが、
もし解けないということであれば、社会の問題に自然科学の方
法を取り入れるという、灯台守さんとの間で合意したこと自体
が不可能ということになってしまいます。
これについては、長くなりましたので、次回に回したいと思
います。