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志位氏のグルジア問題の発言について

2008/9/7 立石康行

 志位氏の声明は事実を捻じ曲げ、また歴史を考慮せず、デマを交えた、悪意に 満ちた声明である。またこの軍事衝突は米国、NATO、EUによる敵対的ロシ ア包囲のもとで起きたこと、米国のグルジアのサカシビリ政権の軍事化、米国 に、特にそのネオコンに支持されたその目に余る軍事挑発も注目する必要がある。 以下に氏の声明の順に反論する。
(1)まづグルジア政府による南オセチアへの武力行使の部分であるが、単に武力 行使との抽象的な表現は、グルジアの民族浄化的な民間人虐殺、また国際社会で 認められたロシアの平和維持隊員の虐殺の事実を覆い隠すものである。約 2000もの女子供を含む民間人の虐殺を見逃してはいけない。南オセチアは人 口約7万人の自冶国で、約2000は総人口の約3%である。しかもその大多数 はロシア国籍である。世界のどこの国がこのような事態を静観するであろうか。 米国はカリブ海の小国グラナダの米人医学生(なんら生命の危険にさらされてな い)を救助するとの口実で侵略しキューバ人、グラナダ人を殺害した。次に南オ セチアに駐留の部隊と本国から新たに投入した部隊の部分であるが、南オセチア 駐留の部隊は平和維持軍である。ロシア軍のグルジア攻撃であるが、グルジアの 侵略軍はグルジア本土から出撃している。それをたたくのは軍事のイロハであ る。また今も続くロシア軍のグルジア内の駐留はメドベージェフ大統領とフラン スのサルコジが結んだ停戦6項目によるもので、またサカシビリの武力による彼 の主張する領土回復意図が変わらないためである。次にグルジアの領土南オセチ アとアブハジアの独立と、そのロシアによる承認であるが、これはこの地域の民 族構成、歴史、ソ連憲法等を考慮せねばならない問題でる。まずこれらの国の人 口の大多数はグルジア人ではない。両国とももともとは独立国で、スターリンが 勝手にグルジアに編入した。ソ連憲法第70条、72条ではソ連の構成国はその自由 意図で独立できた。従ってソ連の解消時にこれらの国は独立を宣言している。グ ルジアはそれを認めなかった。ソ連解消時に国境非変更の原則が宣言されている が、これの合法性は疑わしい。またロシアによる両国の独立承認であるが、ロシ ア16年以上紛争防止のために独立承認をしなかった。しかしグルジアの侵略行 為、また米国、西側諸国のグルジア支持に当面し、平和維持のためにこの処置を とることを余儀なくされた(これに関しては、例えば、ロシアのチュルキン国連 大使の国連での対応を見よ)。
 次に国際社会の憂慮と批判であるが、国際社会ではなく、あくまでも米国、 NATO加盟諸国の批判である。例えば上海協力機構では中国を含めロシアの処 置に理解を示し、集団安全保障条約機構はロシアを支持しており、またニカラグ アはすでに独立を承認している。キューバ、ベネズエラ、その他の中南米の国、 もとのソ連構成国、アフリカ等からの承認、または支持は確実である。国際社会 と、単に西側のみを国際社会と考えるのはアメリカ病に感染しているのではない か。またメドベージェフ大統領の新しい冷戦を恐れないとの発言を引用して悪意 に満ちた中傷をしているが、彼の発言は冷戦を勿論望まないが、西側が冷戦をロ シアに押し付けるのならば、新しい冷戦を恐れないと述べているので、大統領の 発言の一部のみを取り出すのはマルクス主義者のすることではない。もっとも志 位氏はマルクス主義者ではないのかも知れないが。
(2)これについては(1)で反論しているが、一言付け加えると、全ての事項は ある状況、条件のもとで当てはまることはマルクス主義者であれば、理解してい るはずである。
(3)これも(1)で述べたが、内政問題と片付けるには、グルジアの行為はあま りにも重大である。またロシアが独立承認に踏み切ったのは、グルジアがあくま でも平和的解決への努力を拒否し、協力しなかったことによる。グルジアは西 側、特に米国にそそのかされ、武力の非行使を拒絶し、ロシアはこの地域の平和 を維持するために独立を承認した。
(4)これも(1)に述べている。
 メドベージェフのロシア、ソ連の歴史的認識は基本的には正しい。ロシア、ソ 連、特にソ連は殆どの場合侵略された国である。「数々の領土拡張主義、軍事的 派遣主義」は歴史の歪曲である。米国、ヨーロッパ諸国と比較して、ロシアを含 めてもこの表現は大きな誇張でる。帝政ロシアのもとでロシアの一部であった フィンランドをレーニンは独立させている。ソ連の覇権主義と言ってもチェコ、 ハンガリー等への侵攻は西側によるソ連包囲に対する反応である。
 事情に通じた西側のメディアでも、また国際政治、軍事評論家の論説でも志位 氏の意見ほどの極端に反ロシアのはまれである。例えば保守派のパット ブキャ ナン氏でさえも今度の事件の非は西側の好戦的なロシア包囲にあると述べてい る。