航空自衛隊幕僚長だった田母神氏が、「日本の侵略は濡れ衣」として戦前戦後の日本の侵略行為を正当化する論文を発表し懸賞で最優秀賞をとり、定年退職した事件が起こった。
私は、この事件を許す構造として3点を感じる。
1)小泉、安倍内閣での防衛庁の省への格上げが、あまり抵抗なく決まったこと。政府内での位置づけは大変高くなった。
2)対米従属の軍事組織という不満から、戦前美化につながる「自主防衛論」の台頭と、一部タカ派閣僚のサポート。
3)平和勢力とされる共産党、社民党が安保・自衛隊を認知したこと。
社民党は、日米同盟堅持が党是である。
共産党は1998年以後、日の丸・君が代法制化論、安保凍結論、自衛隊認知、現在の綱領での象徴天皇制擁護論と進めてきている。復古的「自主防衛」論者にとっては格好の「援軍」であり、歯止め機能が野党から崩壊していることも見逃せない。
次の総選挙に向けては、自衛隊の暴走、クーデタの危険も防止する仕組みを考える必要があるのではないだろうか。その時には、形式的な文民統制強化論ではなく、統制の主体となる文民の憲法への忠実性が厳しく問われるべきである。