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「大きな政府か、それとも小さな政府なのか」という先進諸国での基本的政治対抗軸における共産党の認識の欠落

2009/1/2 日本に福祉国家を 50代

 これからめざすべき政府の姿は、「大きな政府か、それとも小さな政府か」ということが先進諸国では大きな政治的対抗軸となっている。

 「小さな政府」とは、政府の役割を最小にし、市場に多くのことを任せる理念で、低福祉低負担の社会保障システムを展望するものである。まさに新自由主義の政府論という事ができ、ヨーロッパなどで第二次大戦後確立された福祉国家体制に敵対し、それの解体を目指す理念ということができる。

 それに対し、「大きな政府」は、第二次大戦後の欧州諸国の福祉国家体勢を原型とし、経済や国民生活の維持に政府が大きな役割を演じることが必要との理念であり、そのために高福祉・高負担の社会となる傾向が強い。

 新自由主義者は、戦後の福祉国家批判から、「大きな政府から小さな政府」への展開を主張したものである。

 日本の場合、小泉構造改革の時期以降、「小さな政府」の方向性が自民党などから打ち出され、それに基づいて公的サービスの解体・民営化などが進められてきているが、共産党として、今後の日本社会の方向として、「大きな政府」の方向か、それとも「小さな政府」の方向かの指針が明確には示されておらず、個別政治課題への対応に終始しており、将来の日本社会への方向性としての政府論が棚上げされたままである。

 この間の、ブッシュ・小泉両政権による新自由主義的・市場原理主義的な政策による「小さな政府論」の政治が、今日の世界での資本の暴走を引き起こし、金融危機など世界的経済危機を生み出すと同時に、日本においては多くの派遣労働者切りなど、世界中、日本でも多くの国民労働者の間で生活危機を招来させている。

 また、「小さな政府」政策の中で、福祉・教育・医療など公的サービスの解体が進み、国民の生活危機を進行させている。このことが、国民の将来不安に帰結し、消費を著しく抑制し、内需の不振をもたらし、外需(輸出)頼みの経済構造をもたらし、今回のアメリカ発の経済危機により日本経済が深刻なダメージを受け、派遣切りなどの国民の貧困化を促進する要因ともなっている。

 共産党が、「小さな政府」に対抗する「大きな政府」を将来展望として掲げられないのは、新自由主義に対抗する思想を対置できていないからではないのかとも考える。

 社会保障・教育・医療など国民の暮らしを守り、今の経済危機を打開するためにも新自由主義に基づく「小さな政府論」に決別をし、「大きな政府論」に基づく福祉国家建設の方向での日本社会・経済の再生が求められるものと考えるが、日本で明確に「大きな政府・福祉国家」という方向性を打ち出す政治勢力は必ずしも多くない。

 ところで、後藤道夫都留文科大学教授は、今日の貧困問題を解決し、社会保障の拡充を図るためにも「大きな政府」・福祉国家を日本の将来構図として掲げることを主張しているところであるが、今のところ共産党の将来構図には「大きな政府」や福祉国家という方向性は採用されていない。

 共産党が、将来めざすべき明確な政府論が掲げられていないことは、今日時点の大きな弱点と評価されよう。