今世界でも、日本でも金融危機から世界同時不況の様相を呈している。
このような中で、日本でも派遣切り問題のように、雇用問題が深刻化しつつあるが、不況という状況の中でいかに雇用を守り、雇用機会をつくるのかという課題が重要な政策上・理論上の課題として浮上している。
共産党は、派遣切りに反対する主張・運動を展開しているところであるが、大企業が内部留保を多く持つため、大幅赤字でも派遣切りなど許さない、という見解は表明されているが、資本主義体制の下で、しかも経済のグローバル化が進行している下で、雇用機会をいかに守り、作り出すのか、そして非正規雇用の拡大ではなく正規雇用など良質な雇用機会をいかに増やすのか、いう政策論・理論は明確に提起されていない。
オバマ次期米大統領は、アメリカの雇用危機への対応として、環境対策への投資と公共事業の拡大による大幅な雇用対策を提起しているところである。
今日の資本主義の下での雇用対策を論じるためには、公共事業という問題が重要な政策上の争点として浮上してこよう。
実は、日本の社会科学者の間で、1970年代以降の自民党政治の中で、地方・過疎地への傾斜的公共事業が実施され、雇用創出や地方への所得の再分配が行われ、欧州諸国より社会保障・福祉などの支出は小さいながらも、大きな公共事業が雇用機会を作り出し、国民の生活保障機能を担ってきたという「日本型生活保障システム」論が提起されているところである。(宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年)
これらの政策は、小泉構造改革の中で批判の対象となり、公共事業の大幅削減されたものであるが、今日における雇用危機の一つの要因として大規模公共事業削減により雇用機会が大幅に減少したことも一つの要因といえると考える。
共産党は、それまでの自民党政治の進めてきた大規模公共事業に対し、無駄な公共事業を削れと小泉構造改革に康応するかのように主張したところであるが、公共事業に代わる雇用機会をいかに生み出すのかという雇用政策論は提起されなかった。
すなわち、共産党の大規模公共事業への批判は、それが持っていた雇用創出効果への分析が欠け、雇用論抜きの公共事業批判の一翼を担ったと考える。
今後日本では、公共事業への総括も含めながら雇用政策を打ちだすことが緊急の課題であるが、共産党としても雇用対策の一環としての公共事業への評価と雇用政策としての公共事業論に立たないのであれば、公共事業以外での雇用対策に関する政策を明確に打ち出すことが求められよう。