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一般投稿欄

人文学徒さんへ

2009/4/24 日本に福祉国家を 50代

 3月26日に、「人文学徒さん」から投稿を受けました。返答が遅くなり申し訳ありません。

 人文学徒さんの、3月26日の一般投稿欄への投稿の趣旨は、共産党の運動の中で生活改善運動の位置づけが弱く、階級闘争より低い位置づけしかなされていない、という論旨であったと理解します。

 私も、生活改善運動の意義は否定するものではありませんが、私の見解では、最近の共産党を見ていると個別領域での生活改善運動をパッチワークのように積み重ねるだけで、日本社会全体を具体的にどう変革するのか、というトータルな社会ビジョンが欠落していると認識します。

 以前であれば、『日本経済への提言』のようなトータルな経済社会分析もありましたが、21世に入り『日本経済への提言』の改訂版を出されておらず、また、政策論も共産党内外の知識人・学者の知恵を借り、共同作業で政策論を練り上げるという取り組みも弱く、共産党の党役員のみでセクト主義的に政策を提起しており、最新の社会科学の研究成果も積極的には組み入れられていない、あるいは党役員がそのような研究成果を学び・吸収しようとの取り組みを放棄しているのではないのか、と考えます。

 スウェーデンの例ですが、1930年代以降社会民主党が長期間政権担当し、社会民主党が主導して福祉国家建設を進め、今日の世界での福祉の先進国が形成されたのでありますが、1930年代に、世界不況に苦しみながら、人口問題の危機(少子化の進行)という状況の中で、ノーベル賞学者のミュルダール夫妻という世界的な知識人と社会民主党そして労働組合LOが協働で社会ビジョンの作成に努力し、その理念に基づき社会民主党政権下での福祉国家建設を進めたことが今日のスウェーデン・北欧の福祉国家に?がったものと理解しています。

 私の考えでは、生活改善の運動もイデオロギーと具体的トータル・ビジョンに支えられてこそ、社会変革にもそして組織的前進にも結びつくのではないかと考えます。

 今、日本の左翼・共産党の中で、イデオロギー分野・具体的社会ビジョンを提起する能力が大きく弱体化している、と感じます。

 最近、二宮厚美『新自由主義の破局と決着』新日本出版、2009年2月を読みましたが、

5章 ポスト新自由主義の新福祉国家か福祉ガバナンスの選択 で、二宮氏が宮本太郎北海道大学教授(故宮本顕治の長男)の所論を批判しているのを興味深く読みました。

 今日、日本の論壇で大きな影響力のある宮本太郎氏と二宮氏の論争の論点に関して、多くの共産党関係者の間で関心を共有できれば、共産党も理論的に少しは前進するのではないかとも感じました。

 ただ、二宮氏も議論でエスピン・アンデルセンの理論を使っており、社会科学研究で多大の影響力のあるアンデルセンの理論も知らない共産党幹部であれば、理論的停滞もきわめて深刻と言わねばならないでしょう。