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一般投稿欄

世界の社会民主主義の評価に関して

2009/5/5 日本に福祉国家を 50代

 20世紀以降の世界の社会主義は、共産主義とともに社会民主主義が存在す る。
 共産党の社会民主主義への評価に関しては、かつてコミンテルンが社会ファシ ズム論を提起し、社会民主主義とファシズムを同一視し、社民主敵論を提起した 歴史も存在する。
 一般的に、共産党は社会民主主義に対し修正主義や第一次大戦時に帝国主義戦 争への協力問題など、否定的評価が多く見られた。
 しかし、1990年代以降、ヨーロッパではイタリアのように共産党が社会民主主 義政党に移行したり、ドイツ左翼党のように共産党勢力と社会民主主義勢力が合 同したりする動向も多く見られている。
 今日でも、世界で社会民主主義勢力は、ヨーロッパを中心に大きな政治勢力を 誇ると同時に、社会民主主義勢力が多くの期間政権担当した国も存在し、そこで の経験を学ぶことは、今共産党が唱える「資本主義の枠内での改革」を理念的に も政策的にも、より豊かにすることにつながると同時に、資本が国境を越え、グ ローバルに動き回る今日、革新勢力の国際連帯をすすめ、グローバル資本への対 抗勢力の構築を進める上でも、大きな意義があるものと考える。
 この間の社会科学研究の中で、福祉国家の類型研究が大きく前進した。その代 表的な研究者エスピン・アンデルセンは彼の代表的著作である(『福祉資本主義 の三つの世界』ミネルヴァ書房、原著1990年・邦訳2001年)において先進諸国の 福祉国家体制を、北欧などの社会民主主義体制・ヨーロッパ大陸諸国などの保守 主義体制・アメリカなどの自由主義体制と3類型区分をした。
 すなわち、北欧など福祉国家建設推進の中心勢力を社会民主主義勢力が担った 福祉国家を社会民主主義型福祉国家とし、ドイツのようなヨーロッパ大陸諸国な どカトリックの影響下にあるキリスト教民主運動など保守主義勢力が福祉国家建 設の中心勢力を担った国々を保守主義型福祉国家とし、アメリカなど自由主義勢 力が福祉国家建設の中心を担った国々を自由主義型福祉国家と区分した。
 そして、アンデルセンは社会民主主義型の福祉国家が、もっとも普遍的で、平 等的で、高水準の福祉国家であることを解明したのである。
 最近、貧困問題や格差問題も大きな論点となっているが、OECDの貧困率調査な どによれば、社会民主主義型福祉国家のスウェーデンやデンマークなどが、世界 で最も平等で貧困率の低い国々とも評価されているところであり、北欧の福祉水 準に関しては、日本でも多くの紹介があるように世界で最も先進的な福祉システ ムの構築に成功している。
 また、男女平等や環境政策などの側面でも世界での先進国として理解されてい る。
 スウェーデンに関しては、1930年代より大半の期間社会民主党が政権与党とし て国づくりの中心を担い、福祉国家建設を進めてきたものである。
 北欧の社会民主主義政党は、強力であると同時に、政権担当する中で、世界で 最も福祉の充実した国づくりを進めてきた、という実績がある。
 これら、北欧を中心とした社会民主主義により形成されてきた社会とその経験 は、日本においての国づくりにも、共産党が唱える「資本主義の枠内での民主的 改革」を具体化し、その中身を豊かにする上でも、多くの示唆に富むものであろ う。
 アンデルセンが言うところの福祉国家の社会民主主義体制に関して、共産党と していかに評価するのかという課題がある。かつてのように社会民主主義=修正 主義というレッテル張りを続けるのかという課題がある。
 もう一つの問題は、今日グローバル化が進行し巨大資本が国境を越え世界中を 動き回り、投機問題など世界の人々に否定的な大きな影響を与える状況が進行し ている。
 当然、革新政党も労働運動など社会運動も一国内のみの運動では大きな限界が 存在している。
 グローバル化の進行の下で、国際連帯が大きな課題として浮上していると理解 するが、今日共産党としての国際交流は中国など一部のアジア諸国に限定され、 先進諸国との、特に欧米の革新運動・政党との国際交流は停滞している。
 中国との国際交流を否定するものではないが、今日の中国は社会経済発展段階 が先進国レベルには到達しておらず、先進国間の革新勢力の国際交流が不可欠で あろう。
 欧米など先進国の間で共産党勢力が大きく退潮している現状を踏まえるなら ば、世界の社会民主主義勢力との国際交流を促進し、資本のグローバルな動きに 対抗する革新の国際的連帯を構築する努力が必要ではないか。
 そのときに、世界の、特に欧州の社会民主主義勢力との交流・連帯は、避けて とおれない課題ではないだろうか。
 全労連も、世界労連が壊滅的状況に陥った今日、労働運動の国際連帯をいかに 構築するのかとの課題にも直面している、と考える。
 結論的には、世界の社会民主主義勢力を反動勢力と理解するのか、進歩勢力と 理解するのかの共産党の評価が問われていると認識する。