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一般投稿欄

共産党の主張する「資本主義の枠内での民主的改革」と科学的社会主義理論 の検討

2009/5/15 日本に福祉国家を 50代

 共産党は当面、「資本主義の枠内での民主的改革」をめざし、将来の未来社会 論として社会主義・共産主義を展望するとしている。
 「資本主義の枠内での民主的改革」が、共産党への党員・支持者の現時点での 合意点であろう。「資本主義の枠内での民主的改革」と共産党は主張するが、そ の指導理念・理論は明確ではない。共産党の指導理念は科学的社会主義としてい るが、マルクスなどの科学的社会主義の学説・理論が、どのように、「資本主義 の枠内での民主的改革」の指導理念・理論となるのか、自明ではない。
 マルクスもエンゲルスも、19世紀に生きた人であり、19世紀の政治経済状 況に依拠し理論構築したものであり、20世紀後半から21世紀にかけての政 治・経済状況の理解は想定の範囲外である。私の理解では、マルクスは第二次大 戦後の世界の政治・経済体制はまったく予想していなかった。
 私のマルクス理解では、そもそもマルクスは、資本主義の矛盾を解明し、社会 主義共産主義への変革を展望したものであり、資本主義の枠内での改革への処方 箋を書くことを意図していない、と理解する。科学的社会主義自体が、資本主義 の社会主義共産主義への変革に重点があり、「資本主義の枠内での民主的改革」 という課題は、そもそも理論的重点課題ではなかったのである。
 勿論、マルクス主義学者の研究方法が、実際の経済・社会政策へ影響を与えた 事例は存在したと理解はしている。かつて、野呂栄太郎など講座派マルクス主義 の寄生地主制への研究が、敗戦後の占領政策に影響を与え、地主制の廃止を目指 す農地改革の理論的根拠を与えた事例(説)や、戦後直後の経済政策であった傾 斜的生産方式の発案者がマルクス経済学者であったという事例は存在する。マル クス研究の成果を応用した経済社会の政策・対策がなされた事例も存在する。
 しかし、今日激動の21世紀の政治経済状況を踏まえ、「資本主義の枠内での 民主的改革」への理論的根拠となりうる科学的社会主義の研究はほとんど存在し ないのではないのか。
 この問題を考察する上で、マルクス・エンゲルス以降の科学的社会主義の学説 史をどのように理解するのかという問題がある。
 共産党として、20世紀以降のマルクス主義・科学的社会主義の理論的発展史 は明確に示されていない。具体的に、マルクスの研究成果が、20世紀以降誰に どのように継承され、発展させられてきたのか自明ではない。
かつて共産党は、20世紀後半のマルクス主義研究の一大潮流であったネオマル クス主義を批判し、その研究者を弾圧した経緯がある。今でも、ネオマルクス主 義の研究を全面的に否定するものであるのか、見解を示していただきたい問題で ある。
二宮厚美氏は、最近の著書(『新自由主義の破局と決着』新日本出版、2009年) で、ネオマルクス主義の世界的論客の議論に依拠しながら自論を展開していると ころである。
その一方で、共産党はマルクス主義以外の「資本主義の枠内での民主的改革」へ の理論を積極的に吸収しようとはしていない。日本でも近年、社会科学研究で大 きく前進したエスピン・アンデルセンなどの福祉国家研究の成果も共産党内で は、一切取り上げていない。
 二宮厚美・後藤道夫・渡辺治氏などの共産党に近い学者も、今後の日本社会の 進むべき目標として福祉国家という方向を打ち出しているが、近年共産党として 福祉国家という議論は一切していない。
 共産党として、「資本主義の枠内での民主的改革」は、理論的前提がまったく 無く、具体的ビジョンも無く、かけ声のみであるのではないかと考えるところで ある。
 社会主義・共産主義という未来社会論は、具体的議論が一切無く「空想的社会 主義」の段階にあり、共産党を支持する・あるいは貧困や格差者社会の現状に憤 りを感じる国民・党員の合意点は、「資本主義の枠内での民主的改革」であり、 貧困や格差問題が解消され、福祉の充実した日本の実現であろう。近年、それへ の理論的根拠が共産党内で消失しており、具体的社会ビジョンも描けない現状に ある。
 現状を打開するためにも、党内での自由な理論的討論の保障を行うことが必要 ではないのか。