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一般投稿欄

共産党がめざす未来社会論としての社会主義・共産主義の検討

2009/5/22 日本に福祉国家を 50代

 共産党は、未来社会論として、将来社会主義・共産主義をめざすとしていると ころである。ここでは、共産党が将来めざす社会主義・共産主義への理論的検討 を行うものである。
 第1に、20世紀に社会主義への歩みを進めた国々が存在しているが、その多く が独裁体制となり、多くの国民の人命を奪い、人権抑圧体制へと至ったという問 題である。
 ソ連の場合、スターリンの独裁体制の下、粛清の嵐が吹き荒れ、多くの国民が 犠牲となり、乱暴な農業の集団化なども含め、スターリンに時代に数百万人から 数千万人の無実の人命が奪われたといわれている。
 中国でも、毛沢東の時代には、大躍進運動の時期や文化大革命などにより、数 百万人から数千万人という、多くの人命が奪われたといわれている。
 20世紀に、社会主義をめざした国々の多くは、独裁体制に移行し、大量の国民 を殺戮する事態を引き起こすこととなった。
 なぜ、社会主義をめざす国々の多くが、独裁体制となり、多くの国民の人命を 奪う事態になったのか、その要因の解明が求められると同時に、社会主義が独裁 体制や国民の殺戮などに転化しないシステムをいかにつくるのか、という課題が 存在する。
 資本主義の大きな矛盾が表面化している今日であるが、資本主義がだめだから 即社会主義とは言えない、それを国民も受け入れない20世紀の社会主義への実験 の悲惨な結末は、21世紀の今日に深刻な影響を投げかけている。
 第二に、そもそも、共産主義という意味は、資本主義の矛盾を抜本的に解決す るために、生産手段の私的所有を社会的・共同所有に転換する、という生産手段 の社会化を進めるという意味内容がある。
 20世紀社会主義において、旧ソ連でも、かつての中国でも生産手段の社会化が 実践され、産業の国有化と農業の集団化などが図られたが、生産手段の社会化体 制は大失敗に終わり、生産手段の社会化で、労働者・国民の暮らしは改善しな かった。
 私も、1980年代にソ連を訪問したことがあるが、食肉など生活必需品の供給が 極めて少なく、それを購入するためにソ連の人々は長時間の行列を強いられてい た。
 生産手段の社会化体制は、現実的には機能不全に陥り、先進資本主義国に比べ 労働者国民の生活水準は極めて低水準であった。そして、1980年代後半から1990 年代前半にかけ、ソ連・東欧など社会主義国の国民は社会主義という体制の終わ りを選択したのである。
 共産党は、最近の中国などを「市場経済を通じた社会主義」と規定し、それを 賛美しているが、今の中国は生産手段の社会化原則を大幅に緩め、生産手段の私 的所有を大幅に認め、上海などで株式市場も生まれ、大きな規模の私企業や外資 系企業が経済で大きな位置を占めるようになった。生産手段の社会化という側面 からは、社会主義というより資本主義に大きく舵を切ると同時に、格差問題や環 境問題など初期資本主義の様々な矛盾を抱えており、先進資本主義国に比べ社会 保障や福祉の水準も低く、より資本主義の矛盾の集中した体制と評価することも できよう。
 いづれにしても、今日生産手段の社会化体制で、経済を効率的に機能させ、国 民が必要とする物やサービスを、充分に供給し、労働者・国民の暮らしを豊かに するような経済システムをどのようにつくるのかは、今回答が見出せない難問で ある。
 1960年の日本での世論調査では、国民の約3割が資本主義より社会主義という 体制を支持していた、との結果が出たこともあったようである。しかし、今日社 会主義・共産主義への国民の支持は激減すると同時に、社会主義が独裁体制や国 民殺戮を生まないシステムの構築と生産手段の社会化が現実の労働者国民の生活 を豊かにする仕組みを探求しなければならない、という理論的難題に直面してい るのである。
 共産党は、ソ連など社会主義ではなかったという、見解を取っているが、日本 共産党はソ連崩壊まで、ソ連を社会主義国として評価し、1973年段階の上田耕一 郎のようにスターリン時代のソ連も肯定的に評価した歴史が存在する。また、戦 前の日本共産党は、コミンテルンという事実上ソ連共産党を指導党とする国際組 織の一員として、ソ連共産党の間接指導を受けてきた歴史も存在する。
 共産党として、未来社会論として社会主義・共産主義を掲げるのであれば、社 会主義・共産主義への理論的研究を大幅に深化させなければならないと考える。 最近の共産党ではそのような理論的活動は停滞しており、しかも高齢の不破哲三 以外は全く社会主義・共産主義を論じていない。
 将来、社会主義・共産主義を目指すとしながら、最近共産党内ではその社会主 義・共産主義像はほとんど議論すらされていない。
 資本主義に様々な矛盾が存在することは事実であるが、幅広い立場で社会主 義・共産主義にこだわることなくポスト資本主義論を議論・研究することが重要 で、それが社会主義・共産主義としての具体像を描けた段階で、将来社会主義。 共産主義をめざすとすればよいのであり、初めから社会主義・共産主義ありきで は無いのではないか。
 社会主義・共産主義という体制以外にも、よりよいポスト資本主義の体制が見 出せるかもしれない。