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芝田進午氏の遺志を継ぐコンサート

2009/6/13 千坂 史郎

 6月20日に平和のためのコンサートが開催される。会場は新宿区の牛込箪笥区民ホールである。詳細はこのさざ波通信伝言欄に投稿して掲載していただいたので、重複は避けたい。

 アメリカのオバマ大統領が核兵器廃絶の声明を出した。それよりもはやく数十年前に、法政大学、広島大学などを歴任した社会学、哲学教授の芝田進午さんは、「ノーモアヒロシマコンサート」を東京と広島で別個に10年間以上も開催してきた。このコンサートに取り組んだ芝田さんご夫妻は、国立予防衛生研究所(現在は国立感染症研究所と改名)が新宿区戸山に強行移転して、住民の住宅や大学などが密集する住宅街で実験を強行し続けてからは、ずっと実験差し止め裁判闘争に地元住民の原告代表として闘い続けた。

 道半ばにして、第一審の判決がおりる頃に、わずか2か月前に、胆管がんによって芝田さんは、周囲の悲嘆の中で御逝去された。まだ70才を超えたばかりの悲報であった。

 芝田さんの志を次ぐひとびとは、「平和のためのコンサート」を開催し続けた。今年はちょうど祈念すべき第10回となった。

 核兵器廃絶も、人類にとって緊急の課題である。同時に生物兵器実験など生化学の分野における実験によって、今まで自然界になかった生物が安全性を無視して世界各国で繰り広げられたなら、自然の生物連鎖や自然界の調和はとんでもない事態に至る。芝田さんが生物化学災害としてバイオハザードの危機的事態を懸念して、最高裁にまで及ぶ裁判闘争に今までのすべての研究課題を棚上げして取り組み続けた事実。

 このことは、東京地裁判決前に芝田さんがなくなり、その後の最高裁において敗訴し、その数年後の現代、思わぬ被害となって現実のものとなった。

 メキシコから始まった豚ウイルスによるインフルエンザの世界的流行は、自然界からおきたインフルエンザではなく、さまざまな憶測を呼んでいる。ひとつだけ確実なことは、核兵器によるジェノサイドにとどまらず、バイオハザードによる重大な被害が現実のものとして国境を越えて、世界中の民衆にとって重要な克服課題となったことである。

 「平和」がいまこそ改めて問われている。今回の記念的コンサートでは、原爆資料館を統括する広島平和文化センター理事長のスティーブン・リーパーさんが、日本語で記念講演をしてくださる。

 私は、芝田進午さんが御逝去されてからも、この平和のためのコンサートを聴きづけてきた。それは、このコンサートが、聴く者に大きな感動をもたらしてくれるからである。さらに、芝田さんが訴え続けた「人類生存のための哲学と文化」について改めて自らの問いとして考えさせられる、祈りに似た沈黙の言葉にふれるからでもある。