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一般投稿欄

グラムシとネオマルクス主義への解説

2009/6/27 日本に福祉国家を 50代

 09年6月20日付の党員投欄での桜さんの投稿で、グラムシとネオマルクス主義への関心を持たれたようですので、私の能力の範囲内で解説させていただきたいと存じます。

 アントニオ・グラムシは、戦前のイタリア共産党の書記長をした活動家で、ムッソリーニとの闘いに敗れ投獄されましたが、獄中で研究を進め、『獄中ノート』を残し、第二次大戦後にそれが出版され、彼の研究が多くの社会科学者やマルクス主義者の注目を集めました。

 詳細は紹介できませんが、イデオロギーなどの重要性を指摘し、ヘゲモニーという概念や陣地戦の概念の提唱など、先進国での社会変革への理論的枠組みを提起し、今日でもネオグラムシアンという研究グループがあり、20世紀のマルクス主義には大きな影響を与えたようです。

 ネオマルクス主義は、ニコス・プーランザスとボブ・ジェソップなどが中心となり、国家論を中心として伝統的マルクス主義とは異なる理論提起をしました。

 すなわち、伝統的マルクス主義=共産党理論では、国家とは社会の土台である生産関係に直接的に規定され、国家とは階級支配の道具である(道具説)すなわち資本主義国家とは、資本家階級による階級支配のための道具であるとの規定がされてきました。

 それに対し、ネオマルクス主義では、国家が土台から相対的に自律していると捉えられ、プーランザスによれば、「国家とは階級関係の凝集」したものであり、資本主義国家においても、階級関係の変化によりその性格が変わりうる、資本家階級と労働者階級の力関係で、労働者の力が強い場合は、労働者階級に奉仕するような国家も可能、という理論的帰結を導き出しました。  

 グラムシもネオマルクス主義も、史的唯物論の土台(生産関係)から上部構造(政治・国家・イデオロギー・文化など)が、相対的に自律したものと捉えられているのに対し、共産党などの伝統的マルクス主義においては、上部構造は土台に規定されるという認識に立っており、史的唯物論の土台と上部構造の関係をどのように理解するのか、という論点の対立があると理解します。

 1970年代ぐらいは、マルクス主義研究で、史的唯物論の土台と上部構造の関連性に関しての大論争があったと理解しています。

 私は、ネオマルクス主義の理解が、資本主義の下でも、スウェーデンのように労働者を支持基盤とした社会民主党政権が長期に継続した場合、福祉国家という福祉の拡充を大きな課題として取り組む国家も20世紀に生まれたことが、積極的に捉えられる理論ではないのかと考えております。

 上記のグラムシとネオマルクス主義は、共産党により嫌われ、1980年代から90年代に掛けて弾圧を受けました。

 私の理解では党の中央委員会で、ネオマルクス主義と闘わなければならない、との方針が決定され、肯定的に研究する学者党員が、上記の党決定への違反の容疑で査問・除籍などの処分を受けたと記憶しております。