横浜市長の中田宏氏が、唐突な辞任表明をおこなった。総選挙との市長同一選挙をおこなえば、十億円の節約ができる、という訳のわからない理由を発言した。
だが、数日後に驚くべき事実が判明した。なんと、横浜市の教育委員会は、藤岡信勝氏を会長とする「新しい歴史教科書をつくる会」が著作の自由社版の社会科教科書を横浜市十区の内の八カ所で採択するということを行った。
政令指定都市の横浜市がこのようなことを行えば、他の政令指定都市の教科書採択にも大きな影響を与える。また、人口比から見ても、大阪以上の人口の横浜市が「新しい歴史教科書」を採択したことで、人工比一割を突破したことも今までの教科書問題に強い影響を及ぼした。
中田氏は引退したはずなのに、全国知事会の席上で堂々と発言している。もっとも、橋下徹大阪府知事、東国原宮崎県知事などが牛耳った全国知事会の政党評価は、公明党が一位、自民党が二位というもので、共産党や社民党、国民新党の出席は拒否されているきわめて不公平なものだった。総選挙で躍進が予想される民主党は参加者中最後の第三位。この結果を見ても、橋下、中田らの首長の政治的動向がどちらを向いているか明確である。
自公政権がもし敗北しても、反動的保守派として、さらに政界を右寄りに再編する旗頭として、民主党の前原派や自民党の新自由主義派と結託して、政界の右翼寄り再編の中心となっていくだろう。
中田氏がまだ衆院議員で活躍している頃に、氏は清新な「イメージ」で圧倒的な支持を田園都市住民から獲得していた。それが横浜市長となってから、週刊現代らがたたいた女性スキャンダルや横浜開港150周年博覧会の失敗などから責任を問われはじめていた。今回の唐突な辞任は、そのようなスキャンダルの先回りかと思っていた。なんのことはない。やめると言ってすぐの爆弾事件。教科書採択のいわばクーデター的暴挙の責任の所在を放棄したに過ぎないではないか。数日後、同県の川崎市教育委員会は、歴史修正主義に立つような教科書採択は行わなかった。もっとも席上そのようなことは話題にものぼらなかったらしい。
中田、橋下、東国原各氏らの動向はマスコミでも話題となってとりあげられる。しかし、これらの首長の現実の姿は明白に鮮やかになってきた。もはや、マスコミは巨大な幻想で国民を欺かないでほしいものである。