小沢一郎氏の秘書を務めていた現職の国会議員が、政治資金規制法違反により 逮捕された。自民党や公明党、共産党は、徹底した政治資金に関する説明を、今 度の国会で追及する構えを見せている。
私は、別の二つの視点からこの問題を考えたい。日本の国政は、表面の政治と は別に、多額のカネを使用することで政治の流れを形成してきた。市町村から国 政に至るまで、選挙には莫大な資金を必要とする。落選してしかも法定得票に達 しなければ、多額のカネを支払わねばならない。また、当選するには、法律に定 められた規定内でも、莫大な資金を必要とする。
この視点からすれば、長らく自民党の幹事長など要職を務めた経験のある小沢 一郎氏が、庶民には考えられないほどの多額の政治的金銭と関わりがあったこと は容易に推測できる。
しかし、問題は、政治の資金が政治資金規制法の枠を超えたかどうかだけにと どまってはいない。二つ目の視点とは、民主党連立政権の樹立による自公政権の 打倒と新しい政権が、どのような国政再建の行政をなし得るかどうかにある。
政権発足以来、鳩山首相は、今までの自民党政治とは異なる手法で政治に取り
組んできた。たどたどしさや民主党内部の意見の相違や連立政党同士の調整など
があって、決して一直線に改善されたとは言えないまでも、あの自公政権の時期
とは異なる政治の風穴が感じられるようになってきた。
しかし、民主党には様々な動きがある。今回の小沢氏周辺の逮捕は、自らの幹
事長休職の意向表明(2010年1月16日現在)など新たな波紋を呼びつつあ
る。
私見によれば、巨大な自公政権の打倒のためには、小沢氏のような権力中枢に
居たことのある小沢氏のようなマキャベリストの働きがなかったら、かなわな
かったことも多くあったであろう。通常国会開始から始まる今夏の参院選へと一
気に連なる政治の季節直前に、小沢氏を強い力で牽制することには、明確な政治
的意図が感じられる。もちろん、そうはいっても、小沢氏が護憲と平和を守る政
治家であるとは言えない。
一説には、国会での内閣法制局長官の答弁禁止は、単なる官僚の国会答弁禁止
と同じではなく、これから憲法改悪にむけて、現憲法の外堀である教育基本法改
悪に続き、さらに憲法改悪を行い易くするひとつの手立てとなるだろうと言われ
ている。民主党連立政権は、社民党が入ったことで、護憲の重しもあるけれど
も、肝心の民主党は憲法護憲よりも改憲にウエイトがある。小沢氏も護憲政治家
ではない。
だが、国民は、民主党連立政権を、自公政権時の安部晋三政権のような明確な
反動的な国家主義政権とは異なる政権として、政治に期待を持たせている。それ
が改憲政治家の鳩山氏や小沢氏を、軍国主義ではなく、民主主義に軸足を置かせ
る結果ともなっている。
これから東京地検特捜部が、小沢氏を逮捕や起訴するようであれば、民主党連
立政権の政治的求心力は低下するかもしれない。その時、民主党と自民党の内外
の政治家たちは、右往左往して分裂と融合をきたし、いわゆる政界再編成が起こ
るだろう。それが、社民党排除となって二大反動政党ができることも考えられ
る。憲法改憲をよしとする政治家たちが、国会の三分の二を占めることは確実で
あろう。
その時、日本の政界は、容易にアメリカ軍部の意向を容認する政権に占められ
る。今回の小沢氏を揺さぶる捜査は、そのような政治的背景と連動していること
が危惧される。それゆえに、私は、「現在」の民主党連立政権の立役者である小
沢幹事長をめぐる政治的圧力に、傍観者として沈黙してはいられない。一連のプ
ロセスの流れの中で、情勢を把握せず、政治家はクリーンなカネの使い手でなけ
ればならないと、当たり前のことをオウム返しに反復するだけでは、いまの危機
的政治状況の解決策にはなるまい。
アメリカ政府との米軍基地の移転問題と参院選に連動する通常国会直前に、平 和と国民生活保護、雇用と社会福祉を前進させるための国民の意思を国会に反映 させなければならない。資金規正問題で、政党の政争に明け暮れたままでは、日 本社会はますます崩壊の度合いを強めるしかない。