2月6日付け「日刊ゲンダイ」は、大谷昭宏氏のコメントとして、「国会が司法権力に対して歯止めをかける必要性」を強調した上で、「ところが、共産党までが、戦前、戦中、特高警察に嫌というほど痛めつけられた歴史があるのに、自民党などと歩調を合わせ、検察権力の味方になっていた。非常に残念です。がっかりした人が多いと思いますよ」
これに対して2月6日付け「しんぶん赤旗」は、「金権政治を擁護するか「検察の片棒担ぎ」の暴論」と題して「「検察の片棒担ぎ」と非難する立場は結局のところ、金権政治擁護に通じるものといわなければなりません、さらにいえば戦前戦中の日本共産党への弾圧と金権腐敗の摘発追求を同列に置くような「日刊ゲンダイ」などの主張は非常識きわまりないものです。」と反論している。
今回の検察の暴走の中で、特に問題なのは、石川議員の女性秘書の事情聴取だろう。小沢事務所の政治資金規制法違反の捜査で、他の事務所から、3年ほど前に石川事務所に移ってきたばかりの新しい秘書が、石川氏の秘書時代の仕事を知る筈がない。
2月12日付けの「週刊朝日」で上杉隆氏は、「子ども"人質"に女性秘書「恫喝」10時間。さらにこの記事に抗議した2月19日付けの「週刊朝日」「東京地検の「抗議」に抗議する」と記事を掲載している。
この記事の検察の抗議と反論の部分を抜書きしたいと思う。
「抗議」当該検事は、供述人(女性秘書)に対し、「何点か確認したいことがある」旨を告げて来庁を依頼した。
「反論」民野検事が「何点か確認したいことがある」と言ったのは事実であるが、正確には「押収品の返却の他に、何点か確認したいことがある」と発言している。それに対して、女性秘書は「押収品の返却ですね」と3回も聞き直したにもかかわらず、結局、それはウソだった。また<来庁を依頼した>とあるが、それもまったく違う。「午後1時45分に来てください」と有無を言わさず「出頭」の時刻を指定して呼び出している。だからこそ押収品の返却だと信じた女性秘書は、コートも羽織らず、ランチバックひとつで検察庁に出かけたのだ。
「抗議」夕刻、供述人から、子供の迎えもあるので、帰りたい旨申出があったので、当該検事が、「家族の誰かに代わりに迎えに行ってもらうことはできませんか」と尋ねたところ、供述人が夫に電話をかけ、その結果、子供の迎えの都合が付いたことから事情聴取が続けられたものであり、その際、供述人が子供の迎えだけは行かせてほしい旨発言したり、取り乱したことはない。
「反論」検事が「家族の誰かに代わりに迎えに行ってもらうことはできませんか」と尋ねたことになっているが真相は真逆だ。それは母親からの依頼である。しかも、繰り返しの哀願でようやくかけることのできた夫への電話も、その時点で保育園への迎えの都合はついていない。だから、それによって聴取が続けられたというのも虚偽である。しかも、夫は仕事中で迎えに行けず、女性秘書の別の親族が迎えに行っている。夫への電話で子どものお迎えの都合がつかなかったことで、この瞬間、この若い母親はパニック状態に陥り、手が震え、過呼吸症候群に陥ったのだ。ちなみに取り調べ後、病院で診察を受けた女性秘書には診断書が出され、いまだに精神的ショックから立ち直れず、完全な職場復帰を果たせないでいる。
「抗議」事情聴取中、供述人から、家族や事務所に連絡したい旨の申出が何度かあったが、当該検事がこれを拒絶したことはなく、供述人は、その都度連絡を取った。当該検事は、本件事情聴取中、終始、冷静かつ丁寧に対応しており、「恫喝」「換金」「拷問的」などと評されるような言動は一切とっていない。
「反論」これもまったくの虚偽であり、悪質極まる。騙し聴取の始まった13時45分直後から女性秘書は繰り返し外部への連絡を求めているが、民野検事はことごとく拒否している。初めて外部と連絡が取れたのは、先述した夫への電話で、窓の外が暗くなった夕刻である。抗議書にはなぜか記述がないが、繰り返し要請した弁護人への連絡も、解放直前の22時半になって初めて許されている。そしてその電話によって長時間拘束されていることを知った弁護人が、東京地検へ電話をし、女性秘書の解放につながったのだ。また「終始、冷静かつ丁寧に対応」したとあるが、それも真っ赤なウソである。夕刻、無言の女性秘書に対して、「本当のことを言わないから、帰れないんだよ !」声を荒げ始めている。女性秘書が大きな声を出さないようにお願いするが、まったく聞く耳を持たなかった。密室で初対面の男性と2人きり、しかも相手は圧倒的に立場の強い検事である。その人物から怒鳴りあげられたこの時に彼女の恐怖心はいかばかりだったろう。結局終始、民野検事は大声をあげ、女性秘書に向かって怒鳴り続けた。「いいんだよ !とにかく、本当のことを言えばいいんだよ !」こうしたことが、女性秘書に精神的苦痛を与え、ショック状態に至らしめたことは想像に難くない。
このような卑劣な検察の「犯罪行為」を報じる新聞・テレビは皆無である。また、共産党が抗議したという記憶はない。前記の「日刊ゲンダイ」の批判に反論する資格が共産党にあるのだろうか。
この「週間朝日」の一連の検察の手法を見ていて、油井喜夫氏の「汚名」と川上徹氏の「査問」の新日和見主義「事件」の査問の状況が浮かんできた。次回それを書きたいと思う。