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ユーロ危機に付いて 赤旗の主張について

2010/5/12 立石康行 自由業

 この主張はあまりにも表層的である。まずユーロを単にドル基軸通貨体制への 対抗軸とのみ捉えているようであるが、これは間違いである。ドル対抗の面はあ ることは認めても、ユーロにはドイツ等の強国によるヨーロッパ市場支配の側面 があることも見逃せない。事実ドイツの輸出の大半はヨーロッパへであり、ユー ロ導入により更に容易になっている。また強国による金融支配も促進されてい る。BISの最近の統計によれば、PIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリ シャ、スペイン)へのヨーロッパ金融機関のエキスポージャは2.1兆ドルで、そ のうちドイツが5400億ドル、フランスは3500億ドルである。この内スペインへの エキスポージャは40%に相当する。
 またユーロは欠陥通貨であることも忘れてはならない。即ち、ユーロ参加国は フィスカルポリシーを失っている。例えば、スペインの不動産バブルの際、通常 ならば金利を上げバブルを潰す努力するが、スペインはこの手段を取れなかっ た。その結果がスペインの経済危機である。ギリシャにも同じことが言える。こ のよい例はアルジェンチンである。メネン政権時にペソードルペッグで、フィス カルポリシーを失い、2000年初めの金融危機を招き、ペッグを取り除き、IMF 等の規制を拒否することにより経済危機を克服した。
 さて次に、ギリシャの責任であるが、これも単にギリシャを非難することは間 違いである。まづギリシャのユーロ参加の際アドバイスを与えたのは、悪名高き ゴールドマンサックスで、最新の金融、会計技術を用い、ギリシャの財務状態を 隠し、ユーロ参加を実現させた。ブルッセルがそれを知らないはずはない。大目 に見たとしか云えず、EUの責任も重大である。またギリシャ政府と国民を同一 に扱うのは、マルキストのすることではない。
 次に、EU,IMFの支援策であるが、これはIMF,世銀、ワシントンコン センサスの常套手段で、先に述べた金融機関の救済を主目的とする。ギリシャ国 民はなんら責任を持たないのに、彼らに苦しみを押し付けるのは最悪の救済策で ある。また経済の面から云っても、賃金、年金、福祉カット、低所得者への増 税、医療、教育費のカットは、ギリシャを借金漬にするのみである。アルジェン チンの例を振り返っていただきたい。
 救済策はこれら諸国の経済を活性化するようなものでなくてはならない。但し これは現在のユーロ体制下では不可能であろう。
 次に、EUの対処、特にドイツのは確かに遅く、事態を悪化させたことは間違 いないが、ユーロの現体制下では当然の帰結であろう。EU.ユーロ体制は無責 任体制である。例えば、EUにはナチを信奉するファシスト国家(バルト3国 等)、もう少し民主的な国等の混合体である。またEUの政治家の質もかなり悪 い。ナチとソ連を同等として非難する政治家、(ソ連に、特にスターリン、が種 々の問題を抱えていたが、世界をナチの覇権から救ったのはソ連国民でる。ナチ の約80パーセントを撃滅したのはソ連軍である)、またモスレムの女性のスカー フを公共の場所(道路その他)で許すかを真剣に討論する政治家、スペインでは フランコ時代の犯罪を追及する世界的の有名な判事ガルソンを葬ろうとする政治 家。
 第二次世界大戦の最悪の犯罪者はもちろんヒットラーであるが、チャーチルも 最悪の犯罪者である。日本に原爆を落としたのはトルーマンであるが、それをそ そのかしたのはチャーチルである。ルーズベルトはスターリンを、またスターリ ンはルーズベルトを信頼した。残念ながらルーズベルの死亡により、この信頼関 係は崩れた。アメリカの軍部ではアイゼンハワーを含め日本への原爆投下に反対 者がかなりいた。チャーチルはオペレーション・アンシンカブルを作成し、ソ連 を攻撃し、第三次世界大戦を引き起こそうとした。EUにはその流れを汲む政治 家が多くいる。多くの人の意見ではEUも現在の形では存続できない。
 したがって、ユーロをまたEUを世界が支持するとは間違った政策である。現 在の米国の世界覇権をチェックしているのはロシアである。日本共産党の支持す るベネズエラのチャベスもプーチンとは真の友好関係を維持しており、ロシアの 支持なしてではすでにアメリカが彼を追放していたであろう。中国もある程度、 アメリカ覇権を抑える役割をしているが、まだまだ軍事的にも弱く無理である。 EUにはその気もないし、力もない。むしろ米国の言いなり放題である。米国の 世界支配の支持を、また援助をしているのはEUである。
 最後に、カジノ資本主義の抑制は必要であるが、資本主義の自滅を待つ必要が あるかもしれない。マルクスの言うように資本はその墓穴をそれ自体で掘ってい る。それを仕上げるのは世界の労働者である。現在の労働者階級の相対的、むし ろ絶対的困窮化は資本主義の没落を我々が生きている間に実現する源となるよう にも見える。