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米金融規制法について

2010/7/28 立石康行

赤旗 米金融規制法成立に関する主張について
 この主張は非常に皮相的である。米金融規制法は米銀のロビー活動により、中 身のないものにされた約2000ページに及ぶ法で、抜け穴だらけの法律である。 ヴォルカープランも希薄化され、金融機関の言いなり放題。それを褒め称えるよ うな記事は、ブルジョア新聞なら別であるがマルクス主義政党の新聞にしてはあ まりにもお粗末である。
 この赤旗主張の最初の部分で、「金融機関の身勝手な言い分はもはや通用しま せん」と延べてある。米国の新聞でさえここまで極端な断定をしていない。米国 の主要紙は少なくとも米金融規制法の抜け穴、不完全さ、金融機関の強力な影響 を述べている。
 また次の「税金投入なくす」では、AIG救済のことが記されているが、最大 の救済先はゴールドマンサックス等の投資銀行である。AIGはCDSと言う金 融製品で金融機関の悪質な高リスク投資の担保をした。AIGの救済はこれら金 融機関の救済につながっている。
 「新法は税金による救済の再発を防ぐもの」と述べてるがこれも真っ赤なうそ でる。2000ページに上る抜け穴が用意されている。またオバマの演説を引用して いるが、オバマは二枚舌の天才である。彼は弁護士出身。悪徳弁護士の典型であ る。米国の上層部はダブルシンカーで、矛盾する言動を平気でする。オバマの取 り巻きを見れば、一目瞭然:サマーズはロシヤ経済危機の時のアドバイザーで、 危機を意図的に作り出し、ロシヤを征服しようとした。ガイトナーは元NY連銀 のトップで、ブルーンベルグの報道ではベアシュタインの救済の際、ジャンク債 権を優良債権と称し、連銀に買わせた。その中にはCDSも含まれ、将来すべて 国民につけが回ってくる。
 またグラス・スティーガル法についてであるが、このほうは骨抜きと記してあ るが実際は、破棄された(リピール)。その根幹をなす商業銀行と証券業(投資 銀行)を分離する部分がリピールされ、本米金融規制法でも復活されなかった。 したがって、多くの識者は再び大金融危機が襲ってくると心配している。また米 国、ヨーロッパ(ロシアは除く)の大金融機関はトキシック・アセットを隠し 持っており、それを小出しに出している。筆者は日本の銀行については詳しくな いが、日本の銀行は今度の金融危機であまり被害をうけなかった。今では円は セーフ・ヘブンと称されている。
 次に、「新法は__歴史的転換になるもの」とは180度の的外れである。こ こまでくると赤旗もここまで堕落したかと思わざるを得ない。
 「米国での規制が実効性を持つには、国際協調が欠かせません。」これも的外 れである。ヨーロッパはもっと強い規制を求めている。日本は米国追従国である ので何も要求しない。しかし米国が何か要求すれば、はいと従う。
 さて現在の世界の金融界はデリバティブをフルに利用し、レバレッジを用い、 金融機関の自己資金の数十倍、数百倍の高リスク投資をする。これは米国ばかり でなく、ヨーロッパの金融機関、特にドイツ銀行、UBS,フランスの大銀行、 もカジノ博打に狂奔している。
 彼らは違法、合法の感覚もない。フランスの高名な弁護士ソウシエ氏は、「今 はこれは合法、違法のアドバイスを金融機関にする弁護士は良い弁護士とは見ら れず、抜け穴を探し、金融機関の行為の後始末をやれる弁護士が良い弁護士と見 られる」と述べている。
 今や金融界には道徳、倫理はなく、ゴールドマン・サックスは顧客に金融商品 を儲かると売りつけ、その直後にそれをショートし、自己の儲けを上げると最近 暴露された。
 このような金融界の中で、米金融規制法が情勢を変えるような主張をするのは 完全に間違っている。共産党には優れた経済学者がいるのをフルに利用すべきで ある。