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一般投稿欄

政治と社会進歩の弁証法

2010/9/18 櫻井智志

 自公政権が倒れ、民主党政権と政権交代しました。それは、戦後続いた自民党政権 の実態が国民生活の窮状を解決できなくなっていたことの当然の帰結でした。その克 服をめざした鳩山-小沢体制の民主党政権は、その克服に意欲も展望ももっていまし たが、立ちはだかるアメリカ政府・巨大資本・従属的日本資本などの巧妙な仕掛けと 妨害によって、ついには立ちゆかぬ情勢に追い込まれました。

 もともと右翼社会民主主義の社会民主連合出身の菅直人は、民主党政権が生まれ自 らが代表の地位に立つという情勢のもとで、いきなりと言ったほうが適切なくらい変 身を見せました。いままでの市民運動家としての周囲の期待を裏切るかたちで、新自 由主義にたつ政治家達に屈しました。政治的野望を燃やす長期政権保持のために、 次々に、自民党公明党政権当時の基本政策に回帰して国政の舵取りを始めたと私には 思われてなりません。

 今回の民主党代表選は、政権交代の原点にたつ小沢一郎と、小泉「改革」路線を継 承するはめになった菅直人との対決でした。
 国会議員では、200人-206人のわずかな差。地方議員では40票-60票の 差。大きな差が開いたとされる党員・サポーター票も、「総取り方式」というからく りによって大差のように見えますが、党員・サポーターの総数そのものは、40パー セント対60パーセントの差でしかありません。大手マスコミの国民向けの意識操作 をはじめとして、今回の代表選では、国民の民意をゆがめる仕掛けがあちこちで地雷 のようにはりめぐらされていたことでしょうか。

 しかし、菅直人政権はスタートしています。内閣の組閣も発表されました。これか ら菅政権は、自民党・公明党・自民党脱藩新党群との親和性も見せながら、困難な道 のりを歩き始めました。小沢一郎グループが自民党と連立をめざすというマスコミ評 もありますが、今後の政界地図はいまはわかりません。

 菅政権と国民との間に矛盾がなく、菅総理が国民の生活困難を解決していけば、菅 政権は国民の幸福を保障する政権となりましょう。また、菅政権が国民の生活と幸福 を犠牲にしてアメリカ軍とアメリカ政府に追随することを第一の課題とすれば、菅政 権そのものが鋭い矛盾に立たされます。 その時に、菅政権は、大きく危機的な崩壊 のうきめを観ることでしょう。

 いまその対立軸は、かつて田中角栄のもとに自民党幹事長を四十代で経験した小沢 一郎です。1960~70年代ならば、自民党政権時代にその役割を果たしたのは日 本共産党と社会党などでした。その革新統一戦線は、最も効果的な政治的効果をあげ ました。国土の三分の一は革新統一戦線の地方自治体となりました。それが国会に及 び政権を獲得しようとする勢いを見せたときに、国会では統一戦線崩壊の策略がしか けられました。共産党は委員長宮本顕治のイメージダウンと反共の大量宣伝をこうむ りました。そして、社会党と公明党の合意が取り決められ、政界は大きく変わってい くこととなりました。いまでは共産党そのものが、政治力を大幅に後退させていま す。

 それでも、歴史の弁証法は生きています。まさに革新統一戦線がめざしたものは、 過去に対抗した自民党幹部の経験をもつ政治家によって、ある意味では継承されてい ます。もちろん小沢一郎と革新統一戦線とでは、政治理念からして大きく異なりま す。それでも、新自由主義にもとづいて進められる政治と、小沢一郎が具体的に提案 した政治の実情は、完全に正反対に近いといえます。権力意志か国民本位か。

 今後わがくには、今までの政治形態と異なる新たな視界に入っていくことでしょ う。民衆の立場にたつという基本点を明確にして、国民の幸福と平和をめざす営みが 果たして実践されるでしょうか。もし実践されるとしたら、どの政治家どの政治勢力 によって担われるでしょうか。私には、1960年安保闘争や革新自治体闘争を継承 する営みは、まさに弁証法という論理的法則によって、今後私たちの目前に顕れてく ることと思えるのです。