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戦争の危機についてはとさんへ

2011/2/25 風来坊 自営業

「そして北朝鮮を支配し、その支配を中国に広げアジア全域の支配をアメリカは狙って います。アメリカが対中、対北朝鮮に戦争をするためには日本を引き連れねばならない。 そのためには日本が戦争のできる体制を作らねばならない。つまり、憲法9条を廃止し、 自衛隊を軍隊にし、徴兵制を引かねばならない。このような背景が尖閣列島の問題に なって現れたのではないだろうか。」

 この認識は妄想と言うしかない。
 あなたの認識は、1960年代、70年代と全く変わっていないのではないだろうか。
 昔、似たような文章を見た事があると思ったので探してみました。

「アメリカ帝国主義はその世界政策の一つの重点を「中国封じ込め」を中心とするアジア 侵略におき、その拠点として日本を特に重視し、日本の支配をつづけ日本の核武装化を おしすすめています。
 日本独占資本は、アメリカに従属しながら急速に復活しその力をつよめています。そして 日本の核武装化と憲法の改悪など戦争と反動の政策をつよめ、軍国主義体制をいそいで つくりあげようとしています。(略)
政府自民党の徴兵と海外派兵に道をひらく憲法改悪のたくらみは、全人民と青年にとって さしせまった重大な攻撃となっています。」(日本民主青年同盟第九回全国大会、大会と 任務 1965年)

 この引用あなたの投稿とそっくりと思いませんか。
 ソ連崩壊と中国の変質によって、米国の戦略はとっくに変わっている。
 直接、孫崎享氏の「日米同盟の正体」を引用したいところだが、小沢氏に近い存在なので、 「「日米同盟の正体」に学ぶ」という社会主義協会の理路部長の津和崇氏の論文を引用 したいと思う。

 2005年10月日米間で「日米同盟の未来のための変革と再編」という文書が取り交わ された。(略)(町村外務大臣、大野防衛庁長官、ライス国務長官、ラムズフェルド国防長官、署名) 以下「変革と再編」と略す。
 二つの点において、「変革と再編」は、60年安保条約を質的に変えたという。 ひとつは、日米を対象とする安全保障の範囲の変更である。日米安保条約には、 極東条項があり、その対象範囲は、極東に限られていた。「日本国の安全に寄与し、 ならびに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」(第6条)と、 極東の安全保障を目的としていたが、「変革と再編」では、日米同盟関係は、「世界に おける課題に効果的に対処するうえで重要な役割を果たしている」として、日米の 安全保障協力の対象が、極東から世界全体に拡大された点である。
 ふたつめは、理念における質的な変化である。日米安保条約では、国連の役割と 国連憲章の理念が強調されている。「国連憲章の目的及び原則に対する信念・・・を 再確認し」(前文)、「国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも 慎む」「国際連合を強化することに努力する」(第一条)。ところが、「変革と再編」に おいて重視されるのは、「地域及び世界における共通の戦略目標である」そして この著書で、孫崎氏が一番強調しているのは、世界戦略を考え、それを提示している のは、もっぱらアメリカであり、日本はそれにただ追従しているにすぎない。という点にある。 この本は、ソ連崩壊後のアメリカの「世界戦略」の確立の過程を追うなかで、新たな 日米同盟の危うさに警鐘を鳴らしたものである。(略)
 私がこの本で、一番刺激を受けたのは、「イラン・イラク・北朝鮮悪の枢軸国」論、 「先制攻撃」論、などの「ブッシュ(息子)ドクトリン」は、ネオコンによってブッシュ(息子)時代に 確立されたものではなく、九〇年代初頭のソ連崩壊後のアメリカの世界戦略を見直しの なかからすでに形成されていたものであり、その継承にすぎないこと、そして、オバマも 基本的には、この枠組みのなかにあるという分析の提示である。(略)
 このようなアメリカの世界戦略のなかで、日本はどこへ向かおうとしているのか ? 孫崎氏の評価は厳しい。日本は「さしたる考察をすることなく、米国戦略イコール 日米共通の戦略とする・・・方向に動いている」と。その結実したものこそ、05年の 「変革と再編」にほかならないものである。「変革と再編」は、その目的を次のように 規定している。「地域及び世界における共通の戦略目標を達成するため、国際的な 安全保障環境を改善する上での二国間協力は、同盟の重要な要素となった。この 目的のため、日本及び米国は、それぞれの能力に基づいて適切な貢献を行う」と。
 この規定の重大性を、筆者は次のように警告する。「攻撃されたからとか、攻撃が 迫っているから共同で脅威を排除しようというのではない。目的は、国際的安全保障 環境を改善することにある。両者には大きな差がある」。例えば、核兵器に拡散を防ぐ ためにイラン、北朝鮮にたいして軍事力を行使しても「国際的安全保障環境の改善」の ために正当化しうる。これは先制攻撃でさえなく予防戦争である。
 孫崎氏は、このような日米同盟を否定される。「日本の核武装論」「敵地攻撃論」 「ミサイル防衛」についても、ユニークな論法で批判される。例えば「敵地攻撃、ミサイル防衛の いずれも、中国、ロシアを仮想敵国と想定した場合においては、無力である」と。 そして、氏が強調されるのは、「近隣諸国からの核攻撃の抑止は非軍事の分野に ある」という主張である。
 詳細は直接読んでいただきたいが、赫々たる経歴をもつ人物が、このような主張を されることに私たちは励まされるはずである。スタンスの違いはあっても共同の道を歩む ことができると思う。

 私もこの孫崎享氏の「日米同盟の正体」は是非一度読んでみる価値があると思います。
 アメリカが、対北朝鮮強硬路線を採っていた時期は、確かに何回かある。 しかし、アメリカにとって、北朝鮮の戦略的重要性はそれほど高くはない。 ソ連や中国との関連に応じてのみ、北朝鮮に対する政策は変化してきただけである。 それに対して、中東は、イスラエルとの関係においても、アラブ同時に石油の問題においても アメリカにとって戦略的に重要性は、はるかに高いのだ。
 その中東のイラクやアフガニスタンでの戦闘が泥沼化して苦戦しているアメリカに、 北朝鮮や中国との新たな戦端を開く余裕などある筈がないだろう。 今はむしろ朝鮮半島の沈静化を望んでいるのではないだろうか。
 中国は昨年12月27日北朝鮮の羅津地区の港湾や工業を開発するための 中国・吉林省から羅津まで高速道路と鉄道を建設する協約を北朝鮮と締結した。 もし、朝鮮半島が戦争寸前の状態だったら、中国が北朝鮮の経済開発に資金を 出す筈がないのではないだろうか。
 戦争は偶然から起こる場合もあるので、絶対にアメリカと北朝鮮との戦争が可能性が 無いとまでは言わないが、アメリカも中国も直接対峙する事を避けて、緩衝地帯としての 北朝鮮を維持しようというのが、両国の思惑だと思う。
 「変革と再編」の結果「地域及び世界における共通の戦略目標」全てが日米同盟の 対象となった。問題なのは津和崇氏が、孫崎氏が一番強調しているのは、世界戦略を 考え、それを提示しているのは、もっぱらアメリカであり、日本はただ追従しているに すぎないと指摘している点にある。
 アメリカとそれに追従する勢力がやろうとしているのは、はとさんが言うような、北朝鮮や 中国と戦争する為の体制作りなどではなく、アメリカが考える「地域及び世界における 共通の戦略目標」との戦争に日本を無条件に参加させる為の体制作りだということだ。
 津和氏は、孫崎氏を日米安保破棄や非武装の立場に立つ者ではなく、 政治的スタンスが異なっているが、とした上で、スタンスの違いはあっても共同の道を 歩むことができると結んでいる。
 改憲を主張しないからと言って、憲法を拡大解釈してアメリカの言いなりに自衛隊を 海外に派遣してきた勢力より、改憲を主張しても、国連決議を前提とすべきだとか、 駐留無き安保を主張する勢力の方が、反動的で危険だとは必ずしも言えまい。
 護憲を主張していても、非武装、自衛のためなら憲法に反しない、自衛隊、安保条約等に 対する考え方は同じではない。
 改憲を主張していても、自主防衛、国連決議順守、駐留無き安保、対米従属、戦前肯定、 天皇制復活等考え方は同じではない。
 日本が極めて危険な方向に進もうとしている中で、日米安保破棄派か存続派か、 護憲派か改憲派か、という昔からの視点だけでなく、個別の勢力や個人がどのような 考え方を持ち、どのような役割を果たしているのか見極め、より危険な勢力に対して、 政治情勢や政治課題によって、共同の道を探っていく必要があるのではないだろうか。