本欄二月二十五日付の「日本に福祉国家を」氏による小生への批判を拝読した。
小生は自身の主張を前回の投稿で言い尽くしている。それに対して、NF氏(短縮さ せていただく)の結論は、次の二点である。
①櫻井氏が主張されるようにいくら政策全体の構造を考えても、年々増加する社会保 障費による国家財政の危機打開の展望は消費税増税問題を避けては出てこない。 共 産党が財政的に実現可能なプランとして社会保障の在り方を真剣に構想しているとは 思えない。
②櫻井氏が「消費税増税反対の運動は重要」と主張されるのなら、消費税増税以外に 高齢者の急増による社会保障費の急増がさけられず、宮本教授が指摘するような高齢 者以外の子育て支援や若年者・現役世代の生活危機の増大に対応する社会保障が求め られる中で、社会保障費をどう賄うのかの具体的プランを提示してもらいたい。
二点にこたえよう。
第一に、
累進課税である消費税が再三再四値上げしていくと、不況で失業に苦闘している労 働者は、いっそうの生活困苦にさらされる。さらに、老人、障害者、就職氷河期で就 職できずにいる若者達。多くの民衆が、現在以上の生活苦に苦しまされる。
それらを踏まえて、なぜ消費税を値上げするほどの経済無策なのかを突き詰める と、日本の予算に占めるアメリカ軍隊への「思いやり=隷属屈従出費」の法外な予算 措置にたどりつく。「政策全体の構造」という日本語を解釈できないNF氏は、まっ たく逆立ちした論理に立つ。それが①の文章である。
第二に、
NF氏は、政策プランが一人歩きしていくと考えていようである。麻生内閣の評価 や菅内閣への支持を発言するNF氏は、自民党内閣や変質後の民主党内閣の支持者で あられるのだろうか。宮本太郎氏の理論やプランがどんなにすぐれていても、それを 執行する政府がどのような政策を掲げて、行政をおこなうのかを見定めないと、どん なに緻密ですぐれた経済政策でも、実行できるのかさえ、おぼつかないのは当然であ ろう。いま予算案関連法はたなざらしのままである。そのようなこともわからぬNF 氏が「具体的プランを提示してもらいたい」と要求するのは、本末が転倒しているの み甚だしいと考える。
共産党員ではない私でも、NF氏が日本共産党には、社会保障と消費税との統一し た政策がないと批判なさるときに、それはNF氏が日本共産党の政策が理解できない だけだと嗤ってしまう。そもそ日本共産党は、消費税導入の前からこの税制に一貫し 批判し、反対してきた政党であることを、NF氏はご存じなのであろうか。
与えられた枠組みのなかでしか、問題を解けない共通一次優等受験生たちのよう に、問題の枠組みそのものを疑うことを知らないと、部分的には百点満点をとる優等 生が、受験劣等生でさえ見抜くような重大な問題設定のゆがみに気がつかずにすまし てしまうことをふと思い出した。