3月12日付けの桜さんの返信を読ませていただきました。今共産党や社民党が議席数が少ない問題は、選挙制度の問題もあると思いますが、根本的問題として共産党自体の組織的弱体化が主要因と考えます。
1970年代の共産党が40議席以上を衆議院で獲得していたときは、多くの青年学生の党員や民青同盟員が存在していましたが、今共産党には青年学生の党員が極めて少ないのみならず、40歳代・30歳代の党員も少なく、党員の高齢化が急速に進行しており、
共産党の組織力自体の弱体化が極めて深刻な現状にあると考えます。
党員の高齢化進行の契機は、1980年代後半から90年代前半にかけ共産党の青年学生運動が停滞衰退し、それ以降も停滞現象が継続し、ほとんど青年が共産党に入らなくなって20年前後経過し、其の中で共産党員の年齢構成の高齢化が著しく進んだと理解しています。
なぜ80年代後半・90年代前半以降、ほとんど青年が共産党に入らなくなったかという要因ですが、
一つには共産党中央が1980年代にネオマルクス主義など学問研究への弾圧や原水協など大衆団体への弾圧など、党中央の意向に忠実でない党員を弾圧排除する動きがあり、多くの除名処分などもなされました。このような党中央の暴挙が多くの青年学生や知識人などの共産党への幻滅・離反を引き起こしたものと考えます。
もう一つは、80年代後半からの時期は、東ヨーロッパの共産主義体制の崩壊・中国の天安門事件・ソ連崩壊と世界史的事象が続き、多くの国民・青年学生にとって社会主義・共産主義がマイナスイメージとなり、共産党の青年学生運動にとって致命的ダメージを与えたものと考えます。
この時期に、ヨーロッパのいくつかの共産党は、共産党という党名を捨て、社会民主主義政党に生まれ変わったところもあります。
戦後、先進国最大の共産党といわれたイタリア共産党(約2割から3割の得票率と議席占有率を誇っていた)の主流派も、党名を左翼民主党として変更し、社会民主主義者の世界組織である社会主義インターナショナルに加入するという大転換を行いました。
ヨーロッパでは多くの共産党が、共産党という党名を捨て去り、社会民主主義政党に転換しています。
共産主義がマルクスに代表される、労働者の貧困などの資本主義の矛盾を解決するには、資本主義を潰し社会主義革命を起こし(生産手段の社会化や計画経済の実行やプロレタリア独裁)などを内容とする社会主義を実現しなければならないという考えでした。
一方19世紀末から20世紀初めにかけドイツの社会主義者ベルンシュタインがマルクスの社会主義革命論を否定し、資本主義の枠内での改良を重ねることで、資本主義の矛盾は解消し、労働者の状態を改善し福祉を充実することは可能であるという社会民主主義思想を生み出しました。
20世紀の社会主義は、ソ連・コミンテルンに代表される共産主義とスウェーデンの社会民主党などに代表される社会民主主義が対抗することとなりました。
20世紀の共産主義では、ソ連のスターリンの粛清(約1000万人が命を失う)や中国の毛沢東による文化大革命など多くの人命が失われました。
そして、1980年代後半からの東ヨーロッパの共産主義やソ連の崩壊で、20世紀の共産主義は大きく後退しました。
社会民主主義のほうは、スウェーデンなど北欧の福祉国家建設で中心的役割を果たし、今でもヨーロッパで大きな政治的力を持っており、政権担当している国や最大野党の国も存在します。
日本共産党は、ソ連崩壊後もイタリアのように共産党という党名変更という選択をせず、社会主義・共産主義という看板を掲げ続けましたが、日本における社会主義とはどういう社会かという青写真は一切提示せず、最近の赤旗では社会主義・共産主義に関する記事もほとんど載らず、共産党の中で社会主義・共産主義は店晒しされています。
そして、今の共産党の主な主張では「ヨーロッパのようにルールある資本主義の実現を」
などと資本主義の枠内での改良政策ばかりであり、社会民主主義的主張を行うようになっています。
すなわち共産党は、看板は共産主義だが、内実は社会民主主義政党化した主張しか行わず、党内で看板である社会主義・共産主義への議論もほとんど行われなくなっており、看板の共産主義と具体的な主張は社会民主主義化している、ねじれた現状にあると考えます。
少なくとも今の青年学生で共産党の看板である社会主義や共産主義に魅力とロマンを感じ、共産党に加入しようという青年は皆無でしょう。
今の共産党は、看板と内実がねじれているのみならず、内実である社会民主主義的な改良政策が、実現可能性など政策論で大きな弱点があると考えます。
その象徴が、消費税問題であり、財源を示すことなく消費税増税反対と主張する一方で、社会保障や教育の充実を要求するという矛盾を内包していると理解します。
北欧などの社会民主主義政党は、福祉拡充を目指し、その主な財源を消費税増税に求め、実現可能な政策として福祉国家建設を進めてきましたが、今の日本共産党は財政的に実現・両立不可能な主張を消費税と社会保障問題ではしており、知的水準の高い国民は、実現不可能な主張をする共産党に期待しようとはならないでしょう。
日本の社会保障学者で社会保障の維持拡充を主張する人たちのほとんどは、社会保障の拡充のためには消費税増税必要というのが大半の見解と理解しています。
桜さんは、共産党は消費税問題をタブーとしていないという見解のようですが、赤旗を見る限りでは、はじめに消費税増税反対という大前提があり、前提なしに消費税問題と社会保障の在り方と財源問題を全党的に議論しようとの姿勢は感じません。
赤旗に、大半の社会保障学者の見解のように社会保障を維持拡充するためには消費税増税が必要不可欠という意見は絶対に載らないですよね。
結論的には、ソ連崩壊以降共産党の矛盾が深まり、多くの青年が共産党にそっぽを向くようになり、党員の高齢化が進行し、党の組織力が低下し著しく進んでいると考えます。