佐賀大学の豊島耕一教授ら、3.11後に「原発事故緊急対策マニュアル」を発行し日本科学者会議の四名のかたたちが、しんぶん赤旗と日本共産党に、以下の文書をメールとファックスで送った。
豊島氏らは、その文書を公開され、広く転載転送を許可なさっているので、ここで取り上げさせていただく。
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2011.10.13
しんぶん赤旗と共産党は「避難の権利」を擁護すべきです
JSA福岡 核問題研究委員会メンバー
岡本良治
豊島耕一
本庄春雄
三好永作
貴紙と貴党の福島原発災害と原発問題への取り組みに敬意を表します.
しかしながら,現在の政策には,以下に述べるように重大な問題点があるように考えます.
福島県の多くの住民が放射能汚染地域に居住し続けることを余儀なくされています.しかも「放射線管理区域」の定義である「3ヶ月あ たり1.3mSv」(時間あたりに直すと0.6μSv)という高い値を超える地域も広範に及びます.このような区域内では,未成年者の就労が法律で禁じられるような環境ですが,未成年者といわず,小児や幼児までもが四六時中この中にいます.しかもこの線量には内部被ばくはカウントされていません.
このような異常な状況に対し,多くの人々が「避難の権利」を求めて闘っています.他人(東電)に生活環境を放射能で汚染されて,それを受忍しなければならない理由などありません.この「権利」はあたりまえ過ぎるほどあたりまえのことです.
しかしながら,「しんぶん赤旗」紙面にも,また三次にわたって出された共産党の「大震災・原発災害にあたっての提言」にも,この権利についての言及はありません.それどころか,例えば,10月10日の「赤旗」の野口邦和講演会記事の「除染が決定的です」という見出しや,10月3日の同氏の「福島の放射線量 3年で半減する」というタイトルの文章などに見られるように,除染のみを一面的に喧伝し,避難の必要性あるいは「避難の権利」の擁護については全く触れていません.
しかし除染の効果が現時点で限定的なのは福島県のサイトでも明らかですし[1],除染作業に伴う作業者の内部被ばくの危険もあります.除染だけで避難に触れないのは,また除染作業の危険性にも触れないのは,まるで「竹槍で放射能と戦え」と言うに等しいでしょう.
短期間に効果的な除染が出来ないときは,つまり,平常値と大きく違わない程度にまで線量を下げる見込みがない場合は,だれもが「避難の権利」,つまり支援と賠償を伴う避難を実行する権利を持つのは当然です.これは最低限の権利であり,本来は,このような高リスクの地域に対しては,国が責任を持って「義務的避難」をさせるべきと考えます.
この最低限の権利としての「避難の権利」を,貴紙と貴党は明確に支持し主張されるよう要請します.さもなければ,この原発災害における被災者支援,人権擁護の活動において決定的で重大な過ちを犯すことになりはしないかと危惧しております.
[1] http://bit.ly/rboxE1
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引用した[1]以外の文書と記事へのリンクです.
「提言」
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20110331hisaisyasien_teigen.html
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20110517_daishinsai_genpatsu.html
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20111007_sinsai_genpatsujiko_3th_teigen.html
野口氏の10/3の記事
http://ad9.org/pegasus/nuclear/noguchi111003.gif
同じく10/10の記事
http://ad9.org/pegasus/nuclear/noguchi111010.gif
* JSAは日本科学者会議の略称
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私は豊島氏らのこの見解を見て、勇気ある行動と感じた。日本共産党の原発事故についての見解には、すぐれた核物理学者らの提言が生かされている一方、民衆から見て首肯しがたい見解もある。私のような素人には専門的なことはわからないけれど、たとえば豊島氏らが提言した「避難の権利」とは、まさに原発事故被災者の「生きる権利」の問題である。それは福島県民にとどまらない。日本国民および日本国土に居住するすべての人間の生きる権利に関わる重大なことがらである。
世田谷区における異常放射能が首都圏を瞠目させたが、それが福島原発事故の影響でないとして、世間はほっとしている。けれど、これも私の知る識者は「東京新聞の報道によれば、日本アイソトープ協会が文部科学省の依頼で、その「ビン入りダンボール」を回収に向かった」を伝えつつ、日本アイソトープ協会そのもののずさんな実態の危険性を指摘なさっている。
日本国中が、「ヒバクシャ」(被曝者およびこれから被曝による影響を受けるかも知れないすべての危険性を現実性としてもつ人類すべて)として「生きる権利」と「生命を危険にさらされない基本的権利」を著しく脅かされている。
豊島氏ら日本科学者会議に属する四名の方々が、最も原則的原理的に、米ソの核恫喝政策に根源的な批判をなし得る団体と期待されてきた日本共産党が、緻密な検討をないがしろにして、福島原発被曝地のかたがたの「避難する権利」について、いささかでも不十分な政治的対応があったなら、それは充分に批判され修正を求められる対応である。
そのような根本的な次元で、判断を誤るならば、もはや日本共産党にはノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキの守護神のように核廃絶を全世界に訴える根拠を失うからである。
福島原発被災者の住民の「避難の権利」についての豊島教授ら日本科学者会議福岡核問題研究委員会メンバーの質問に、日本共産党としんぶん赤旗とがどのような対応をするかは、これらの両団体・部局の真実を問われる重要な根本問題である。