東京新聞は、11月20日のトップ記事で『反原発の記事中傷』というタイトルである記事を掲載した。以下のような趣旨である。
経済産業省エネルギー庁は、メディアの原発報道を監視してきた。その実態は寒気が走るような統制行為につながる重大な問題をはらむ。
情報公開請求によってあきらかとなったエネルギー庁の資料によると、2008~10年度までの三年間で新聞や週刊誌の記事275件が、「不正確な報道の是正対象」として報告された。事業は外部委託で行われ、各年度とも異なる財団法人が受注しており、いずれも電力関係者らが役員を務めている。
報告記事は、原発に関する日々のニュースの一般記事以外にも、社説、読者投稿、広告、漫画も含まれていた。
その具体例は、新聞記事に詳細に紹介されていたが、ここでは省略する。
報告された275件の八割は、主に原発が立地する自治体をエリアとする地方新聞の記事で、最多は県内に伊方原発がある愛媛新聞の28件。柏崎刈羽原発をかかえる新潟日報が25件、玄海原発がある佐賀新聞が21件である。
新聞や週刊誌を対象としたこの事業は、昨年度で終了しているが、本年度はブログやツイッターなどのインターネット情報に対象を変更して継続されている。外部委託費の総額は、四年で一億三千万円にのぼる。エネルギー庁によると、これまでメディアに訂正を求めたことは一度もないという。
私は、「訂正を求めたことはない」というエネルギー庁の発言は、無責任きわまりないと考える。エネルギー庁の行った行為は、情報を恣意的な収集活動によって言論弾圧を行った戦前の特高警察と同様の発想である。
いままで福島原発に対する政府・官庁の対応の遅れや情報隠匿などに批判がなされてきたが、発想を変えるべきだろう。官庁官僚は、福島原発被害者を含め国民への棄民行為を一方で進め、他方でこのような言論弾圧につながる情報収集活動を進めてきたわけである。インターネットの言論掲載欄は、こういった監視下に置かれていることに改めて寒気が走る。
政府・官庁の人権蹂躙の弾圧につらなる政策と行政に、油断なく逆監視を怠ってはならない。