最初に私の前回の投稿11月26日付け「クマさんの11月19日付の投稿に関して」 で間違いがありましたので訂正させていただきます。それは上田耕一郎の62年10 月の前衛所収論文名を「二つの世界大会と修正主義理論」としていましたが、正 しくは「二つの平和大会と修正主義理論」でしたので訂正します。
風来坊さんの投稿を読ませていただきましたが、それへの論評をさせていただ
きます。
全体を通じ、消費税増税されれば自営業者は大変だという内容だったと存じま
すが、今日の日本の国家財政の危機のもとで、社会保障を維持・拡充しながら国
家財政の健全化に向けての消費税増税以外の選択肢が示されていなかったことは
残念です。
共産党もそうですが、「消費税増税されれば暮らしは大変」という主張がほと
んどであり、危機的国家財政の健全化を社会保障の切り捨てなく行う具体的財源
プランの提示こそ必要ではないでしょうか。
今の日本の国家財政の累積赤字は1000兆円を超える状況で、2011年度予算では
約92兆円の歳入が必要なところ、税収は約40兆円しかなく約44兆円の赤字国債と
いう借金に依存する状況で、まさに異常な借金づけ財政で、その借金は孫子の代
に背負わせている状況で、そういう借金依存の財政は長続きしませんし、社会保
障を維持拡充しながら赤字国債依存体質を改めることが今の日本の緊急課題です
し、消費税増税に反対するならそれへの対案が是非必要と考えます。
風来坊さんは国家財政赤字の要因をプラザ合意に求められていますが、私は複
合的要因が重なり国家財政の危機が生じたものと考えます。
一番の要因は、少子高齢化が進行し、所得税収が伸びない中、社会保障費が90
年度の約11兆円から2011年度の約29兆円まで激増したことが一番の要因と考えま
す。
すなわち税と社会保障費を負担する若年層が大幅に減少し、社会保障給付を受
ける高齢層が大幅に増加したことが財政赤字の一番の要因です。
日本における少子高齢化の進行とプラザ合意は関係ないのではないでしょう
か。
もう一つ90年代に日本経済がバブル化しそれがはじけ、不良債権問題が生じ日
本経済が長期不況に突入し、「失われた20年」とか言われますが、長期不況によ
り企業の業績が悪化し、法人税収も減少したことも要因だと思います。また、そ
ういう不況の中で不況対策として大規模な公共事業を赤字国債で実施したこと、
さらに日米構造協議による内需拡大策として公共事業費が大幅に増加したその点
に関してはプラザ合意が影響があったと考えています。
次の自営業者が消費税増税されれば痛みを伴うと風来坊さんは主張されていま
すが、当然消費税増税による痛みは伴いますが、ギリシャのように国家財政が破
たんすればより多くの痛みを国民皆が受けなければならなくなると考えます。
以前日本は公共事業に多くの財源が投入され、「土建国家」と揶揄されていた
時代がありました。共産党もその時期には「無駄な公共事業を削れ」と公共事業
費の大幅削減を主張しました。結果的に小泉政権の構造改革により大幅な公共事
業費の削減が断行されました。
具体的に、国レベルの公共事業費は98年度が約8兆9千億円に対し、2011年度は
約4兆9千億円に減少し、地方自治体の公共事業費は92年度約17兆円が2005年度約
7兆6千億円まで激減しています。公共事業費の対GDP比でも96年度の6%以上(他
の先進諸国の約2倍)から2006年度の3.2%(他の先進諸国並み)まで激減し
ています。
この公共事業の大幅削減の中で、建設業従事者が97年度の685万人から2010年
度の498万人まで激減し、多くの建設業従事者が職を奪われました。
また、地方・過疎地では他に産業がなく公共事業に依存した地域経済の所も多
くありましたが、そういう地方の地域経済も公共事業削減の中で大きなダメージ
を受け、都市に比べ地方がますます貧しくなるという状況も生まれました。
公共事業の大幅削減は、建設業従事者や地方の経済に深刻な影響(痛み)を与
えましたが、共産党も「無駄な公共事業を削れ」と主張したように、財政危機の
中で湯水のように公共事業に財政を垂れ流すことを止めることは、財政上必要な
措置であったろうと考えます。
公共事業費の削減と同じように、危機的国家財政を再建し、社会保障を維持・ 拡充するためには、消費増税以外の対案がなければ、自営業者に痛みを伴ったと しても消費税増税することが唯一の選択肢ではないのかと考えます。
次ぎに、風来坊さんは消費税が導入されたから正規社員が減少し、派遣社員が
激増したという論を展開されていますが、私は正規労働の減少と非正規労働の増
加は経済のグローバル化が主要因と考えます。
今まで工業が未発達だった中国・タイ・インドネシアなどアジア諸国の工業が
急発展し、世界の生産センターとしての役割を演じるようになり、先進国の生産
労働者とアジア諸国の労働者が国際競争させられるようになった状況が、先進国
で安価な非正規労働を増やす要因になっていると考えます。
例えばデジカメでは、キャノンは日本国内で生産組立していますが、ニコンな
ど他のメーカーはタイ・中国・インドネシアなどでカメラの組み立てをしていま
す。
同一性能のカメラは、同じ価格で売らなければならないとすれば、他のメー
カーがアジア諸国の安価な労働コストで生産したならば、日本で生産している
キャノンも安価な派遣労働を使わなければ、価格対抗できないとなるでしょう。
同じ性能の製品を日本の大企業の正規労働者月収30万円の労働コストで生産
するのと、中国やタイで月収3万円の労働コストで生産するのでは、大きな製品
価格の差が生まれ、競争の結果は明白だと思います。
もちろんアジア諸国の賃金が低いのには、食料品など物価が安く、知人でタイ
に駐在していた人がいますが、日本の大企業の正規社員の賃金でバンコクで生活
すれば大富豪のような生活ができると言っていました。
私は、経済のグローバル化のもとで、先進国でどうすれば良質な雇用を確保で
きるのかは、先進国共通の大きな課題であろうと考えます。
結論としては、日本での非正規労働化の流れは主には経済のグローバル化に求
められるべきで、風来坊さんの言われるように消費税に求めるべきものではない
と考えます。
風来坊さんが消費税増税に反対されるなら、今日の国家財政の危機のもとで社
会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案を提起して
いただきたいと存じます。
それなしに消費税増税反対を主張されても、国家財政の危機のもとで、日本の
国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられることとなるのではな
いでしょうか。