1、反論、批判・問題提起に対する無回答
クマ氏の党員用討論欄2011,11,5付け投稿「消費税は”社会福祉破壊税です”(桜さんへ)」について、日本に福祉国家を氏は党員用討論欄および一般投稿欄2011,11,11付けで批判・問題提起を行った(「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」)。それに対しクマ氏が一般投稿欄2011,11,19付け「”日本に福祉国家を”さんへ」で以下の回答、反論、逆批判・問題提起を行った。
「「福祉国家論」が理論的に破綻しているという論拠は何かを示して、という質問ですが、 それは、すでに私の投稿でその理論名を示しあります。ケネス・ジョセフ・アロー(1973年アメリカ経済学会会長)がノーベル経済学賞を受けた理論「一般不可能性定理」によって「福祉国家論」は世界の舞台で破綻しています。」
「私は、「『福祉国家論』は『革新3目標』とは正面から敵対する理論です」と言いましたが「反動理論」だとは言っていません。それは貴方が付け足した言葉です。」
「(福祉国家と基本法研究会)「新たな福祉国家を展望する」は、貴方のいうような「福祉国家推進を主張」するものとは趣が違い、日本国憲法が明確に定めた社会保障制度の確立は国の義務である、その発展方向を探究している延長の内容にあるものです」
「日本共産党が当面資本主義の枠内での革命を主張していることについて、貴方は、ソ連・東ヨーロッパの社会主義崩壊の後に選択したと述べていますが、全くの間違いです。」
「ソ連崩壊によって日本「共産党内でも社会主義ははるかかなた先の課題に追いやられ」と貴方は言っていますが、それも間違いです。」
「貴方の言う「スウェーデン・・消費税25%の国ですが、消費税収が貧困を緩和するために社会保障財源として使われており」の記述以下の捉え方も、数字データ―も正しくありません。」
「貴方の貧困率のデータ―がどこのものか解りませんが違います。」
「国際比較」においては「単純にデータ―を運用できない問題」があること
「消費税に関する貴方のコメントは、日本国憲法による社会保障制度の確立の立場からして、徹頭徹尾間違っています。」
・「消費税という逆進的な税制によって社会保障を賄おうと考えている点」
・「厚生年金、雇用保険、健康保険が労使折半だったが、社会保険の支払いを消費税に移行すると企業の側の負担がゼロになる。今後は100%労働者が社会保障を負担するということになる。」
日本に福祉国家を氏は、「共産党が財源政策を持たないと言っているがその調べた形跡がない」
「消費税は国の財源に入れば、それは「色」が付いていないので、社会保障とも軍事とも大企業・資産家優遇のための使途かも誰も解りません。――だから、スウェーデンの国民は税金の使途を徹底的にチェックしているそうです。貴方のコメントでは全くそれをしていません。」
(以上、詳細は クマ 「”日本に福祉国家を”さんへ」参照)
これらの諸点について、日本に福祉国家を氏は12月4日現在まで、なんらの反論、回答、弁明もしていない(一般投稿欄2011,11,26付け 日本に福祉国家を 「クマさんの11月19付けの投稿に関して」、同2011,12,1付け 日本に福祉国家を 「風来坊さんの11月23付け投稿「消費税に関して」への評論」参照)。
これは日本に福祉国家を氏が、クマ氏の以上の反論(及び批判)に反論できないということであり、したがって(少なくとも以上の点にかかわる範囲で)自らの主張の欠陥を自覚し、認めたも同然ということになるであろう。ならば当然、日本に福祉国家を氏はそのことを率直に認め、持論の(一部)撤回、ないし修正・再検討を行わなければならない。でないと、(以上の点にかかわる範囲での)日本に福祉国家を氏の主張の整合性、妥当性はいつまでも損なわれたままであろし、また読み手はそういうものとして、日本に福祉国家を氏の主張を(この先も)受け取らざるを得ない。
2、論証と反証の忌避
例えば地球温暖化問題においては、温室効果ガスと地球温暖化の関連性、温暖化が今現にもたらしている具体的弊害、将来現実的に予測されうるシナリオパターン(温室効果ガスの排出がどれだけ増えると何年までに気温が何度上昇し、それによって何が起こるか、等)が科学的、実証的に明示されている。もっとも、そのようなデータや想定の精度・信頼性、さらには、そもそも温室効果ガスとされているものと温暖化との関連性や、果ては地球温暖化そのものへの批判的見解というものも根強くあるようだ。しかし、温暖化についてそのような反証も含めた多角的検討が可能なのも、そして何より、温室効果ガスが問題だとして、その対処のために必要な具体的行動の実践・実行(排出量をいついつまでにどの程度までに抑えることで、どの程度までの温暖化にとどめるか、とどめなければならないか、等)を可能にするのも、温室効果ガスと地球温暖化の関連性、将来現実的に予測されうるシナリオパターン等が科学的、実証的に明示されていればこそである。
「今日の日本の国家財政の危機」
「危機的国家財政」
「まさに異常な借金づけ財政」
「そういう借金依存の財政は長続きしませんし・・・」
「社会保障を維持拡充しながら赤字国債依存体質を改めることが今の日本の緊急課題」
「当然消費税増税による痛みは伴いますが、ギリシャのように国家財政が破たんすればより多くの痛みを国民皆が受けなければならなくなると考えます。」
「危機的国家財政」
「風来坊さんが消費税増税に反対されるなら、今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案を提起していただきたいと存じます。(改行)それなしに消費税増税反対を主張されても、国家財政の危機のもとで、日本の国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられることとなるのではないでしょうか。」(以上、日本に福祉国家を 「風来坊さんの11月23付け投稿「消費税に関して」への評論」)
「ギリシャやイタリアで、財政赤字と累積債務で大きな危機が生じていますが、いつ日本国家が財政破たん(破産)するかもわからない状況です。日本の国債が危険という評価が広がり、銀行や国民が国債を買わなくなれば、日本の国家財政は破綻します。」(日本に福祉国家を (「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」)
「危機」「異常」「緊急課題」「破綻」「破産」といった読む者に強い印象を与えそうな語句がたびたび使われる一方で、具体的にどうなることが「日本の国家財政が破たん」した状態に当たるのか?具体的にどのような指標によって「日本の国家財政が破たん」したと判断されるのか?「日本の国家財政が破たん」することで発生する事態とは具体的にどのようなものなのか?について、日本に福祉国家を氏はほとんど明らかにしない。しいて言えば、日本においても「ギリシャやイタリア」のような事態が生じ得るであろうこと(それによって「社会保障の大幅切り捨てを強いられること」)を示唆しているようではある。だが、そうであれば当然あってしかるべき、否、むしろ必然的になければならない、「ギリシャやイタリア」の国家財政と日本の国家財政の比較検討による、実証的な両者の類似性の説明、論証がどこにもない。また、「日本の国家財政が破たん」するに至るプロセス、シナリオのパターンにしても、「日本の国債が危険という評価が広がり、銀行や国民が国債を買わなくなれば、日本の国家財政は破綻します。」とはあるものの、なぜ、どのようにして、どのような事態・段階になった時に「日本の国債が危険という評価が広が」るのか?それがどの様に、またどの程度「銀行や国民が国債を買わなくな」る事態へとつながるのか?といった具体的なことについては何一つ、論証可能な説明も現実的可能性を追求した想定も示されていない(日本に福祉国家を氏の一連の投稿も参照)。ただただ「日本の国家財政の概要(2011年度)」(日本に福祉国家を 「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」参照)といった数値――それ自体は客観的事実でも――に「危機」「異常」「緊急課題」「破綻」「破産」等々の抽象的語句をいくら装飾したところで、それだけでは、その対処のために必要な現実的・具体的行動の実践・実行(例えば、国債残高をいついつまでにどの程度までに抑えることで、どの程度までの財政赤字にとどめるか、とどめなければならないか、等々)のために、何の役にも立たないことは明らかであろう。
念のため誤解の無いよう断っておくが、今私が言っているのは、日本の国家財政は破たんしない、などということでは無い。なんらの実証的、論理的な国家財政破綻の定義も指標も、そこへ至る現実的に予測され得るシナリオパターンも明示されないなら、そもそもそのような反証さえ成立し得ないであろう。論理的、実証的検討・論争の土台が存在しないという意味で、文字通り、日本に福祉国家を氏の財政危機論・財政破綻論は空中楼閣である。
日本の国家財政破綻の定義も、そこに至る現実的に予測され得るシナリオも十分に提示することなく、「危機」「異常」「緊急課題」「破綻」「破産」等の印象的・抽象的語句を多用しながらくり返される、日本に福祉国家を氏の財政危機・破たん論は、故に、印象操作の域を出ないものと言わざるを得ない。「消費税は弱い者にしわ寄せが行き、強い者だけが得をする」(一般投稿欄2011,11、23付け 風来坊 「消費税増税について」参照)等の、消費税増税に対する具体的庶民生活に立脚した批判、懸念に対し日本に福祉国家を氏が
「風来坊さんが消費税増税に反対されるなら、今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案を提起していただきたいと存じます。(改行)それなしに消費税増税反対を主張されても、国家財政の危機のもとで、日本の国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられることとなるのではないでしょうか。」(日本に福祉国家を 「風来坊さんの11月23付け投稿「消費税に関して」への評論」)
「クマさんが、どうしても消費税廃止を主張されるのであれば、毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどう賄うのか、1000兆円を超えるという日本の国の累積債務をどうするのか、具体的財政プランをぜひ提起していただきたいと思います。 それなしに、消費税廃止を主張されても絵に描いた餅にしかすぎません。」(日本に福祉国家を (「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」)
と財政危機論・財政破綻論で応じるのであれば、「日本の国家財政が破たん」する、とは何か、そこに至る、想定し得るシナリオパターンとそれを回避するのに必要な財源規模・行動パターンの想定、等を日本に福祉国家を氏自身が示すことは、議論の前提として必要とならざる得ないであろう。
3、消費税の限界
「全体を通じ、消費税増税されれば自営業者は大変だという内容だったと存じますが、今日の日本の国家財政の危機のもとで、社会保障を維持・拡充しながら国家財政の健全化に向けての消費税増税以外の選択肢が示されていなかったことは残念です。」
「今の日本の国家財政の累積赤字は1000兆円を超える状況で、2011年度予算では約92兆円の歳入が必要なところ、税収は約40兆円しかなく約44兆円の赤字国債という借金に依存する状況で、まさに異常な借金づけ財政で、その借金は孫子の代に背負わせている状況で、そういう借金依存の財政は長続きしませんし、社会保障を維持拡充しながら赤字国債依存体質を改めることが今の日本の緊急課題ですし、消費税増税に反対するならそれへの対案が是非必要と考えます。」
「自営業者が消費税増税されれば痛みを伴うと風来坊さんは主張されていますが、当然消費税増税による痛みは伴いますが、ギリシャのように国家財政が破たんすればより多くの痛みを国民皆が受けなければならなくなると考えます。」
「公共事業費の削減と同じように、危機的国家財政を再建し、社会保障を維持・拡充するためには、消費増税以外の対案がなければ、自営業者に痛みを伴ったとしても消費税増税することが唯一の選択肢ではないのかと考えます。」
「風来坊さんが消費税増税に反対されるなら、今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案を提起していただきたいと存じます。(改行)それなしに消費税増税反対を主張されても、国家財政の危機のもとで、日本の国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられることとなるのではないでしょうか。」(以上、日本に福祉国家を 「風来坊さんの11月23付け投稿「消費税に関して」への評論」)
「消費税増税以外に、増大する社会保障費を賄える財源があればいいのですが、現状では難しいものと判断します。」
「クマさんが、どうしても消費税廃止を主張されるのであれば、毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどう賄うのか、1000兆円を超えるという日本の国の累積債務をどうするのか、具体的財政プランをぜひ提起していただきたいと思います。
それなしに、消費税廃止を主張されても絵に描いた餅にしかすぎません。」(以上、日本に福祉国家を 「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」)
「国家財政の危機のもとで、日本の国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられる」事態、「ギリシャのように国家財政が破たん」し、「より多くの痛みを国民皆が受けなければならなくなる」のを回避すべく、「今日の日本の国家財政の危機のもとで、社会保障を維持・拡充しながら国家財政の健全化に向けて」「赤字国債依存体質を改める」ためには、「消費税増税以外・・・現状では難し」く、したがって「消費税増税することが唯一の選択肢」である、と、日本に福祉国家を氏は主張する。逆から言うと、唯、消費税の増税”のみが”(「消費税増税”以外”・・・現状では難しい」「消費税増税することが”唯一の”選択肢」)、「1000兆円を超え」る「国家財政の累積赤字」、「2011年度予算では約92兆円の歳入が必要なところ、税収は約40兆円しかなく約44兆円の赤字国債という借金に依存する」「まさに異常な借金づけ財政」「その借金は孫子の代に背負わせている状況」のもとで、「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費」を賄い、かつ、「社会保障を維持拡充しながら赤字国債依存体質を改め」、「財政再建を進める」上で唯一の、「対案」「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」である(「今日の日本の国家財政の危機のもとで、社会保障を維持・拡充しながら国家財政の健全化に向けての消費税増税以外の選択肢が示されていなかったことは残念です。」「消費税増税に反対するならそれへの対案が是非必要と考えます。」「公共事業費の削減と同じように、危機的国家財政を再建し、社会保障を維持・拡充するためには、消費増税以外の対案がなければ、自営業者に痛みを伴ったとしても消費税増税することが唯一の選択肢ではないのかと考えます。」「風来坊さんが消費税増税に反対されるなら、今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案を提起していただきたいと存じます。」「クマさんが、どうしても消費税廃止を主張されるのであれば、毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどう賄うのか、1000兆円を超えるという日本の国の累積債務をどうするのか、具体的財政プランをぜひ提起していただきたいと思います。」)、と、日本に福祉国家を氏は「考え」、「判断し」、くり返し主張しているのである(注)。
(注)日本に福祉国家を氏は、宮本太郎氏についてたびたび言及している。しかし日本に福祉国家を氏自身の引用によると、
「もっともこの点を考えても、将来的に消費税増税が選択肢の一つになることは避けられないであろう。新しい生活保障が確立されない中での消費税増税は、自立の機会が提供されていない困窮層にとっては大きなダメージになりかねない。それゆえに、税負担が確実に生活保障の確立のために使われるように、独自の信頼醸成装置が組み込まれる必要がある。(宮本太郎『生活保障』岩波新書、2009 年、217ページ)」(一般投稿欄2011,11,29付け 日本に福祉国家を 「宮本太郎氏は消費税増税を不可避と認識している」)
とあり、少なくともこの引用(日本に福祉国家を氏自身の引用)の限りでは、宮本太郎氏が「消費税増税以外・・・現状では難しい」「消費税増税することが唯一の選択肢」と認識しているとも、消費税増税が”複数ある選択肢のうちでも最優先の選択肢”、と認識しているとも読み取れないように思われる。
このような消費税増税以外の選択肢をあらかじめ除外する姿勢、議論への憤りこそが、消費税増税反対運動を支える一つの要因であろうことは想像に難くないが、ここではそのような心情的な話は置く。
より深刻・重大な問題は、ただ消費税の増税を言うだけでは、財政・社会保障上の「今の日本の緊急課題」を達成する「対案」「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」には一向になり得ない点である。
日本に福祉国家を氏はこれまで、――「今の日本の国家財政の累積赤字は1000兆円を超える状況で、2011年度予算では約92兆円の歳入が必要なところ、税収は約40兆円しかなく約44兆円の赤字国債という借金に依存する状況」で「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費」を賄い、かつ、「社会保障を維持拡充しながら赤字国債依存体質を改め」、「社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める」ためには――消費税によってどれだけの額の税収を確保しなければならないのか?消費税でその税収を確保するためにはどれだけの税率を設定しなければならないのか?それだけの税収の確保、税率の設定が、(とりあえず政治的な”妥協”や”配慮”は抜きにしても)現実的にどの程度、消費税において可能なのか?といった、「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」を(先に指摘した、例えば、国債残高をいついつまでにどの程度までに抑えることで、どの程度までの財政赤字にとどめるか、とどめなければならないか、等々といったこととあわせて)、まったく明らかにしてない。(日本に福祉国家を氏の一連の投稿を参照)。
消費税反対論者に対しては、「今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める具体的財源プランの対案・・・なしに消費税増税反対を主張されても、国家財政の危機のもとで、日本の国家財政が破たんし、社会保障の大幅切り捨てを強いられることとなるのではないでしょうか。」「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどう賄うのか、1000兆円を超えるという日本の国の累積債務をどうするのか、具体的財政プラン・・・なしに、消費税廃止を主張されても絵に描いた餅にしかすぎません。」と、応じる以上、日本に福祉国家を氏もまた、「今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める」ために、消費税増税によってどれだけの税収を見込んでいるのか、見込めるのか、見込まなければならないのか、等の「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」に基づいて消費税増税論を主張しないわけにはいかない筈であろう。にもかかわらず、消費税増税によって「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどう賄うのか、「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費をどうするのか、具体的財政プラン」を、日本に福祉国家を氏がこれまでまったく「示されていなかったことは残念」では済まされないだろう。これでは、ご都合主義のダブルスタンダードではないのか?といった疑念さえ抱かれかねないだろう。
日本に福祉国家を氏が消費税(増税)反対論者に対して求めていたはずの「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」が、そもそも日本に福祉国家を氏の消費税増税論において欠如している、という、議論の前提を欠いた状況ではあるが、それでも、日本に福祉国家を氏の「今日の国家財政の危機のもとで社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める」ためには「消費税増税以外・・・現状では難しい」「消費税増税することが唯一の選択肢」という主張について、確実に言えることがない訳ではない。それは、”消費税はいくらでも財源をもたらすことの出来る打ち出の小槌では無い”、”消費税の税率は青天井に設定できるものでは無い”、という、ごく自明のことである。
日本経済の長期停滞・低迷の形態がデフレ不況であり、供給力の過剰、内需の弱さ、国内消費の低迷を直接的な要因としているなら、消費、とりわけ経済的に最も大きなウエイトを占める個人消費に、いうなれば”ペナルティ”を課すかのごとき消費税(増税)は、経済政策としてみるなら、正気の沙汰では無いであろう。そして、消費支出がますます抑制されれば、デフレ不況は一層深刻化ないし長期化し、トータルで見た(つまり法人税・所得税等を含む)税収はむしろますます減ることにもなりかねない。それらをなお補って余りある消費税の税率とは、一体何パーセントになるのだろう?
「毎年1兆円を超えて増大する社会保障費」、「1000兆円を超えるという日本の国の累積債務」、「社会保障を維持拡充しながら財政再建を進める」ことを、消費税(増税)によって賄うにはどれだけの消費税税収が必要であり、そのためには消費税率を何パーセントにしなければならない、といったことを、消費税増税に伴って予測される消費支出・経済動向の変動とそれに伴う税収見通しを踏まえた「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」によって一切示すことなく、消費税増税を主張する日本に福祉国家を氏は、その主張が――自身が(他者の主張に対しては)言うところの――「絵に描いた餅」に当たらないと本気で「考え」、「判断し」ているのであろうか?だが、日本に福祉国家を氏のような「具体的財源プラン」「具体的財政プラン」なき消費税増税論を繰り返し、それで消費税(増税)反対論を(「反対するならそれへの対案が是非必要」「具体的財源プランの対案を提起していただきたい」と言って)退けたつもりになった所で、日本の国家財政と社会保障が消費税(増税)によって改善される見通しが立つことは無いであろう。
補遺1、消費税より優先するもの
消費税の逆進性や、デフレ不況下での消費税増税による一層の消費抑制・低迷とそれに伴う不況深刻化・長期化、等、消費税の多くの問題点、いわゆる”痛み”自体は、広く認識・共有されていることと思われる。それでもあえて”消費税を増税したい”と言うのは(根拠についてはともかく)一つの見解ないし信念ではあるかもしれないが、少なくとも、税収を増やす、という観点で、消費税より優先して検討させるべき税はほかにあるだろう。
一つとして、金融資産、企業の内部保留に対する課税強化である。
消費税がデフレ不況、内需主導の日本経済における消費支出、消費活動にペナルティ的に課税することになるのに対し、金融資産、企業の内部保留に対する課税は、消費に回らないカネに対して課税するのである。
日本の個人金融資産、大企業の内部保留の膨大さは、たびたび指摘されてきたことである。課税対象の規模としては、消費税と比べても軽んじていいような規模でも無いだろう。金融資産への課税なら、(経済的により苦しいであろう)無貯蓄世帯への直接の負担増は一切無い。また、課税対象となる個人金融資産額に下限を設け(例えば一世帯あたり一千万円とか)、さらに額に応じた累進性も取り入れれば、中間層への負担緩和もある程度は図れるだろう。もちろん、世界でも有数の日本の個人金融資産総額は、日本の社会保障の貧弱さ、将来不安の反映とも考えられる。それなら、個人金融資産課税の税収は、全額、社会保障に使途を限定する、というのも一つの考えだろう。
このようなアイディアは、別に新しいものではない。消費税増税を選択肢の一つにする、というのは、消費税の問題点を不問にしたり、あらかじめ消費税以外の税について、排除したり優先順位を引き下げたりすることではない。
補遺2、軍事費についての詐術、すりかえ
「次に軍事費の問題ですが、日本の防衛関連予算は約4兆7億円で、約29兆円の社会保障費に比べ少ない割合です。東日本大震災の時は、自衛隊が救難・救援活動に大活躍しました。約10万人の自衛隊員が被災地に派遣されました。クマさんの主張のように日本に自衛隊がなければ・防衛予算がゼロであれば、もっと人的被害は拡大したことでしょう。 自衛隊員や自衛隊のヘリコプターやトラックなどの車両が、被災地での救難活動に大活躍したことはテレビ放映されているところです。そのような自衛隊員の人件費もヘリコプターやトラックなどの装備代も、防衛予算から捻出されていることも踏まえなければなりません。」(日本に福祉国家を 「クマさんの「消費税は”福祉国家破壊税です”(桜さんへ)」に関して」)
「共産党が「軍事費を削れ」という主張をするなら、自衛隊が担っている災害救助隊としての機能をどうするのか、自衛隊の災害救助機能を縮小してまで「軍事費を削減」すべきなのか、是非皆さんにも考えてもらいたい問題である。」(一般投稿欄2011,3,17付け 日本に福祉国家を 「軍事費を削って、日本の災害救助機能を確保できるのか?」)
日本に福祉国家を氏が「是非皆さんにも考えてもらいたい」という問題の(複数あり得る内の一つの)解答として、自衛隊を「災害救助隊としての機能」に特化してしまう、というのは、だれもが比較的すぐに思いつきそうである(その是非はここでは置く)。そのような「災害救助隊」があれば、別に現行の自衛隊・防衛予算がゼロでも、災害時に日本に福祉国家を氏が懸念するような事態は起こらないだろう。むしろ従来の軍事の側面に予算・装備・人員を振り向けなくて済む分、(どの程度、かは別としても)予算の削減やより一層充実した「災害救助機能を確保」出来そうにさえ思える。今すぐ現行の自衛隊・防衛予算をゼロにする、というこでなくとも、軍事の側面での予算・装備が削減される限りにおいては、「自衛隊が担っている災害救助隊としての機能」が損なわれることを回避するのは可能だろう。
従って、上記の日本に福祉国家を氏の主張は(意図的であるかどうかはともかく、結果的に)論点のすり替え以外の何ものでもない。日本に福祉国家を氏の猛省と真摯な自己批判を促したい。
補遺3、公共事業と日本共産党
「以前日本は公共事業に多くの財源が投入され、「土建国家」と揶揄されていた時代がありました。共産党もその時期には「無駄な公共事業を削れ」と公共事業費の大幅削減を主張しました。結果的に小泉政権の構造改革により大幅な公共事業費の削減が断行されました。
具体的に、国レベルの公共事業費は98年度が約8兆9千億円に対し、2011年度は約4兆9千億円に減少し、地方自治体の公共事業費は92年度約17兆円が2005年度約 7兆6千億円まで激減しています。公共事業費の対GDP比でも96年度の6%以上(他の先進諸国の約2倍)から2006年度の3.2%(他の先進諸国並み)まで激減しています。
この公共事業の大幅削減の中で、建設業従事者が97年度の685万人から2010年度の498万人まで激減し、多くの建設業従事者が職を奪われました。
また、地方・過疎地では他に産業がなく公共事業に依存した地域経済の所も多くありましたが、そういう地方の地域経済も公共事業削減の中で大きなダメージを受け、都市に比べ地方がますます貧しくなるという状況も生まれました。
公共事業の大幅削減は、建設業従事者や地方の経済に深刻な影響(痛み)を与えましたが、共産党も「無駄な公共事業を削れ」と主張したように、財政危機の中で湯水のように公共事業に財政を垂れ流すことを止めることは、財政上必要な措置であったろうと考えます。」
共産党の公共事業政策は、公共事業を、大規模開発事業から生活に密接した小規模事業へ転換させることで、総額としての事業費は削減しつつ、より効果的に雇用を確保し、地域・地方経済により寄与する公共事業のあり方を追求するもであった。けっして、「小泉政権の構造改革によ」る「大幅な公共事業費の削減」と同列に論じられるべきものではない。