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一般投稿欄

丸氏の12月10日付「日本に福祉国家氏の消費税増税論について」への回答

2011/12/18 日本に福祉国家を

1、丸氏からのクマ氏との議論での無回答に関しての指摘に関して
 前提としてクマ氏は、私との討論の継続を拒否されている。私はクマ氏の提起 した多岐に渡る論点に関し、多くの時間を割き反論を書くことは生産的でないと 判断し、クマ氏が社会保障の課題の解決を社会主義の課題とすることに絞って反 論したもので、論破されてものでも・反論できないものでもないことを断ってお きたい。

 クマ氏は、福祉国家論はアロー氏の論により世界の舞台で破綻していると述べ ているが、主に70年代に活躍したアロー氏の所論により福祉国家論が破綻したとの指摘であるが、1990年にデンマーク人のエスピン・アンデルセンの「福祉資本主義の三つ の世界」が発表された。それ以降世界的に福祉国家研究のブームがおき、日本の 社会科学研究の世界でも福祉国家に関する多くの書籍が出版された。共産党系学 者の二宮厚美・後藤道夫・渡辺治の3氏も、ここ10年来、新福祉国家というタイ トルの入った著書を出し続けている。
70年代に世界の舞台で福祉国家論が破綻しているのに、90年代以降世界でも、 日本でも社会科学研究の場で福祉国家研究の大きな高揚があったことは不可思議 である。  クマ氏が、最近の社会科学の研究動向に無理解・無認識と考える。

 また、クマ氏は厚生年金など保険料の支払いが労使折半だったのが、支払いが 消費税に移行すると企業側の負担がゼロになると述べているが、政府・民主党は 消費税の社会保障目的税化をいっているが、社会保険の使用者負担をなくすとは 一言も言っていない。政府の言う消費税の福祉目的税化とは、消費税の使途を社 会保障費の国費負担に限ると主張しているだけである。社会保険料の労使折半は 今後も継続される。クマ氏の主張は妄想といわざるを得ない。

 私は先にも述べたとおり、今後の討論を拒否している相手に多くの時間を割き 反論を書くことが無意味と判断し、反論をあえて書かなかっただけのことであ り、それを反論不能になったという丸氏の捕らえ方こそ理解に苦しむものであ る。こういうのは言いがかり以外の何物でもない。
 今後の討論を拒む相手に、反論に多くの時間を割くほど、私は暇ではないので ある。

2、論証と反証の問題に関して
 丸氏は地球温暖化の事例を取り上げているが、自然事象と社会事象との混同が はなはだしい。 社会事象は自然事象と異なり、明智光秀の本能寺の変のように 個人の判断・行動が大きく社会のありようを決定付ける偶然性の要素が大きい。
 20世紀の歴史でも、コミンテルンが1920年代後半に社会ファシズム論(社民主 敵論)を提起し、ドイツで社会民主主義者と共産主義者が対立した間隙をついて ナチスがドイツの政権を掌握し、世界大戦につながった。コミンテルンが1935年 に採択した反ファシズム統一戦線という方針を20年代後半に提起し、ドイツで社 会民主主義者と共産主義者の反ファシズムの統一戦線ができていたなら、ドイツ でのナチスの政権掌握と世界大戦はなかったかもしれない。
 今の世界経済の動向・たとえば今後為替相場が1ドル何円で推移するかも、法 則的に解明できない問題である。今大問題になっている欧州の信用不安がどのよ うな展開になるのかも予断を許さない。10年後の石油の値段も正確に法則的に予 測することは難しい。

3、財政問題に関して
 財政破綻の定義に関しては、国家がデフォルト(債務不履行)になることが財 政崩壊した状態である。すなわち、償還期間の来た国債の返済が不能になる状態 で、企業で言えば2回不渡り手形を出した状態になることである。

 イタリアの財政危機・信用不安の状況を見れば、危機的財政状況にあったとこ ろ、ムーディーズなど格付け会社がイタリアの国債の信用格付けを、ネガティブ と大幅に引き下げ、国債への信用不安が広がり、国債の金利が大幅に上昇した。
 サラリーマン家庭でいえば、住宅ローン2千万円を借りているところ、当初の 金利の3%が10%まで引きあがれば、金利負担が激増し、ローン返済額も急増 する。
 同じことが国債の金利上昇で国家財政でも生じ、多くの財源を国債の金利払い に割かなければならなくなり、財政運営が極めて厳しくなる。また、信用不安が 広がった国債そのものを銀行や国民が積極的に買わなくなり、発行した国債を売 ること自体が難しくなる。
 発行した国債が売れなければ、歳入が不足し、国債などの償還が滞り、国家の 支出もできなくなる(学校の教員に給料を払えなくなるや生活保護費を支給でき なくなるなど)デフォルト・債務不履行状態が生じることとなる。
 デフォルトした国は、ギリシャの場合はEU加盟国で、ドイツ・フランスなどと IMFが資金援助(融資)すると共に、増税と福祉の大幅切り下げなど厳しい財政再 建策が課され、それに反対する国民の激しいデモや暴動状態が生じた。
 かつてアルゼンチン・ロシアなども国家財政がデフォルトしたが、IMF(国際通 貨基金)の管理の下で厳しい歳出削減(福祉の切捨てなど)が課されている。
 実は ある経済評論家の見解では、今のところ日本の国債の信用不安が起こっ ていないのは、日本は現在欧州諸国より消費税率が低く、消費税率を欧州諸国並 みに引き上げれば財政を健全化し、プライマリー・バランス(後で触れる)を黒 字化できる余地がある。世界が日本の政治が消費税の引き上げで、財政健全化に 向けた歩みを踏み出すことができるのかどうかを注視しており、それに失敗し財 政健全化に向け動き出せなければ日本国債の信用不安が現実のものとなると言う 見解もある。
 IMFも、日本の消費税率を15%まで引き上げるように提言している。
 実はギリシャの累積政府債務残高の対GDP比が115%(2009年)であっ たが、日本はそれが200%を超えている。実はギリシャやイタリアより、日本 の財政赤字と累積債務の状況は深刻と言うことである。

もうひとつの問題は、ギリシャやイタリアの国債は、外国で多く売られていた が、日本の国債は9割ぐらいを国内の銀行や個人が所有しており、海外依存度が 低い。日本は金融資産が多く、その多くを日本の国債の購入に当てていること が、国債の海外依存度が低い要因であろう。

 次に、当面の日本の財政健全化の方向と消費税に関して述べたい。
 財政問題を考える際に重要な指標としてプライマリー・バランス(基礎的財政 収支)がある。プライマリー・バランスとは、1年間の財政の中で歳入(収入) から国債など借金を引き、それと歳出(支出)から国債の元利払いの金額を引い た額の比較である。
 すなわち、国の歳出の中で国債の元利払いを除いた一般歳出や地方交付税な どが、国債の借り入れではなく、税収などで賄われている状況が、プライマ リー・バランスが均衡化した状況である。
 2011年度予算では、歳入92兆円-国債費(新たな借金)44兆円=48 兆円に対し、歳出92兆円-国債返済の元利払い(今までの借金の返済)21兆 円=71兆円であり、差額が71兆円-48兆円=23兆円の赤字になってお り、1年間で23兆円累積債務が増える状況である。
民主党政権は、2020年までにプライマリー・バランスの黒字化を目標と し、国際公約にしているが、プライマリー・バランスの黒字化は現実的目標とな りえよう。
 プライマリーバランスの黒字化とは、国債などの元利払いより、国債発行額が 少ない状況で、2011年度予算を前提とすれば、23兆円の税の増収か歳出削 減が必要となる数字である。プライマリーバランスの黒字化をすれば、国家の累 積債務は減少に転じる。
 消費税の増税でこの額をまかなうためには、今消費税収が税率5%で約10兆 円であり、税率1%がおよそ2兆円にあたる。
 消費税率を、フランス19.6%・ドイツ19.0%並に引き上げれば、30 兆円近い増収となり、食料品などへの軽減税率の導入や社会保障費の自然増を勘 案してもプライマリーバランスの黒字化は不可能ではない。

 国家財政がデフォルトしないとしても、年に23兆円もプライマリーバランス の赤字を続け、累積債務を増やす続けることは、孫子の代・次世代への負担を先 送りすることになっており、持続性がない財政運営といわなければならない。

 丸氏からは、消費税を引き上げれば、消費が冷え込み、デフレ・不況が深刻化 するという意見が出ようが、ヨーロッパではドイツ・フランスのように消費税率 19%台の国もあり(食料品などには軽減税率が適用されている)、そういう国で 消費が冷え込み・不況が深刻化したのか、消費税の逆進性でヨーロッパの貧困層 の生活状況が日本などと比べ厳しい状況なのか、の実証的検証が必要になろう。
 党員投稿欄で投稿している桜氏は、12月7日付投稿「消費税について」で、ド イツで3カ月滞在したと述べられているが、当時消費税16%(食料品7%)の ドイツでの暮らしはどうだったか、ドイツは自動車産業の盛んな国であるが、消 費税が高くドイツ国民は自動車を買えない状況だったのか、ドイツ国民は日本人 より消費を抑制し、不況が深刻化していたか、ドイツの低所得者の暮らし向きは どうだったかなど、是非聞いてみたいものである。

 次に丸氏は宮本太郎教授のことを書かれているが、宮本教授は政府の設置した 「社会保障改革に関する有識者検討会」の座長として、昨年12月に有識者検討 会の報告をまとめた。有識者検討会の報告では、若い世代を中心とした社会保障 の拡充と社会保障財源としての消費税の引き上げを提言した。これが民主党政権 の「税と社会保障の一体改革」の議論のたたき台になった。

4、丸氏の資産課税の提案に関して
 まず、約1400兆円といわれる日本の潤沢な金融資産は、大量に発行される 国・地方の債券購入にも多くが当てられ、日本国債の多くは国内で購入されている.  外国の金融機関に多くを頼る諸外国の国債より安定性が高く、否定面ばかりで はない。
 日本の潤沢な金融資産がなければ、日本政府の大量国債発行は外国の金融資産 に依存することを強いられ、より不安定なものとなったであろう。
 すなわち多量の金融資産が、大量の国債発行とそれの国内での消費を支えたの である。

 金融資産の課税に関しては、検討課題とも考えるが、高い税率を課し金融資産 が大幅に減少した場合、国債購入の資金が枯渇する危惧はある。
 また、タンス預金の現金をどのように把握するのかという問題もある。今のよ うに預金金利が極めて低く、資産課税が預金金利を大幅に上回る高額であった ら、多くの個人預金者が銀行預金をやめ、タンス預金に移行することも考えられ る。税務当局はタンス預金を正確には把握できないのでないのではないだろう か。銀行預金からタンス預金に多くの金融資産が移行した場合、そのお金は国債 購入にも、企業への融資にもまったく活用されない、寝たお金に換わる。
 そうならない対応策の議論は必要であろう。

それと企業の内部留保に関してであるが、共産党の言う大企業の内部留保と は、企業が設備投資や技術開発に消費済みの分まで、内部留保とカウントしている。  内部留保をすべて吐き出せとなれば、投資した工場や機械を売却し、従業員を 解雇してでも、内部留保を吐き出せということとなる。
 また、大企業が内部留保を大幅に減らせば、2012年春の決算予想が、パナ ソニック4,200億円の赤字・ソニー900億円の赤字などと予想されてお り、日本を代表する大企業の大型倒産と大量の失業者の発生も生じるであろう。

 最後に、丸氏より自衛隊の災害救助隊と軍事費を削れに関しての問題提起をいた だいているが、この問題に関しては後日論じるようにしたい。