1月19日付けの桜さんの「企業負担について スウェーデンと日本」を読ま
せていただきましたが、それへのコメントさせていただきます。
桜さんより「赤旗の2007年10月14日の記事 社会保障Q&A の中に、2004年度
の経済産業省の資料から作成された法人所得税と社会保険料の事業主負担をGDP
で割った比較がでています。これによると、日本の8パーセントに対して、ス
ウェーデン14.6パーセントとなっています。」とのことでしたが、前提として法
人所得税収は企業の利益に課税される税であり、景気と企業業績に敏感に反応
し、激変するものです。
たとえば今年3月期の決算予想では、パナソニック4、200億円・ソニー
900億円・NEC1、000億円と日本を代表する大企業が大幅な赤字を予想し
ており、それらの企業が払う法人所得税はゼロとなります。
財務省の資料では、法人税率は同一でも、法人税収が2002年が9.5兆円
が、2006年には14.9兆円になり、それが2009年には6.4兆円まで
激減しています。
結論的には、このように激変する法人所得税収と企業の社会保険料負担分の対
GDP比を比較してもあまり意味がないかもしれません。
あまり意味がないかもしれませんが、財務省の資料では2008年度の各国の
(社会保険料の事業主負担+法人税収)の対GDP比は、日本12.5%・アメ
リカ6.3%・フランス18.5%・ドイツ11.1%・イギリス9.4%・ス
ウェーデン15.6%であり、日本の企業負担は、フランス・スウェーデンより
低いが、ドイツ・イギリス・アメリカよりは高いという状況です。そもそも法人
所得税収は年により激変するものであり、何年のデーターによるものかで大きく
異なるものと認識します。
次に、桜さんは日本の輸出大企業への軽減税率の問題を述べられています
が、まず前提としていま世界の大企業は多国籍企業として国境を越え世界中で自
由に活動するようになっています。そういう中で企業は法人税や労働コストの安
い国に投資する、逆に法人税・労働コストなど高い国から安い国に生産拠点など
を動かす傾向があります。
そういう中で、最近世界的に法人税の引き下げ競争がなされ、低い法人税率を
武器に外国からの投資を呼び込み経済成長する国もあります。
桜さんもよくご存じのドイツですが、以前のドイツの法人税率は38.65%
で世界有数に高い水準でしたが、隣国のポーランドやチェコやスロバキアやハン
ガリーは法人税率が19%と低水準で、ドイツ企業の多くが東欧・中欧諸国に投
資し、法人税の高いドイツ国内にはあまり投資しない状況が生まれました。
ドイツでは、旧東独地域が西独地域に比べ失業率が約2倍と深刻な東西格差を
抱えていますが、ドイツ企業は高い法人税も一つの要因として旧東独地域など国
内に積極的に投資せず、東独地域の失業問題が改善されない状況が生じました。
そういう背景の中、ドイツ政府は2008年に法人税率を38.65%から
29%まで大幅に引き下げ、ドイツ企業の競争力の強化と生産拠点の海外移転を
抑制する政策選択をしました。
日本でも、世界的にも重い法人税負担が企業の生産拠点の海外移転を促進し、
日本国内の雇用問題・若者の就職難を生んでいる要因の一つかもしれません。
共産党の主張のように、消費税増税に反対し、大企業と富裕層に社会保障費の
増大部分を全部背負わせれば、ほとんどの日本企業が海外に流出し、日本国内の
雇用情勢はより悪化するかもしれませね。
また、日本の輸出大企業への軽減税率の問題は、前にパナソニック・ソニー・
NECという日本を代表する電機産業の決算が軒並み赤字と述べましたが、テレ
ビ・携帯電話などの分野の国際競争で、サムスン・LGなど韓国企業との競争で苦
戦を強いられていることも赤字の要因といわれています。2010年のテレビの
売り上げ高の世界シェアでは、1位サムスン(韓国)22.3%・2位LG(韓
国)13.5%・3位ソニー12.4%となっています。
次世代の有機ELテレビでは、韓国メーカーが大型テレビ(55インチ)を今年
中に販売するようですが、日本メーカーは技術開発が遅れ大型有機ELテレビの発
売のめどが立っていないという、技術開発の遅れも深刻です。
韓国の法人税率は、27.5%であり、様々な輸出向け大企業への優遇措置も
あるようで、日本の法人税率の高さも日本企業の韓国企業への国際競争での苦戦
の要因の一つとも言われています。更に、日本の大企業への負担増をすれば、国
際競争で不利な日本の電機産業は競争に敗れ、斜陽産業化するかもしれないですね。
かつては日本企業が世界一の競争力を誇っていた電機産業が斜陽化すれば、多
くの雇用も失われ、下請け中小企業も経営危機に陥ることでしょう。企業が斜陽
化し、赤字決算を続ければ、当然法人税収はゼロとなり、いくら法人税率を引き
上げても法人税収は伸びません。
日本共産党は、日本の産業をどのように発展させるのかという産業政策がな く、負担はすべて大企業にという大企業いじめでは、日本の産業をつぶし、雇用 も減らし、法人税収も結果的に減らすこととなるのではないでしょうか。