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データで検証 福祉国家をさんの消費税論

2012/1/28 大方等

 桜さんから福祉国家をさんへのデータに基づく反論が提出されました。

 その内容は、日本とスエーデンの企業負担の差についてです。(対GDP比、日本のGDPはおおよそ500兆円)
 日本 8% 40兆円 に対し、スエーデン14,6%73兆円となり、企業負担をスエーデン並みにすれば、それだけで、33兆円の税収増となるわけです。

 福祉国家を さんが主張される、プライマリーバランスの確保に必要な23兆円を、それだけで、他の誰にも増税することなく達成し、なお、10兆円程余ることになります。

 何のことはない、日本の巨額の赤字国債累積は、本来、企業が負担すべき税負担・社会保障負担、、その未負担分の総計そのものだった、と言うことでもあります。

 それならば、企業に負担させるのが筋でしょう。

 福祉国家をさんが、消費税のみに注目し30兆円近い消費増税を主張され、反対ならば、反論を!と言われておられることを、非情に奇異な御主張と感じ、データで検証しましょう、と私が持つデータを提出してきましたが、その成果が早速こうして得られたことについてうれしく思います。

 桜さん、貴重なデータをありがとうございました。

では、私からも新たなデータを提出しましょう。

 福祉国家をさん曰く

>スエーデンの税制では、国税の所得税は高額所得者のみですが、地方税 (県税・市税)が所得に関係なく、31,44%課税され、それがスエーデンの自 治体が担う福祉や教育や医療を支える財源となっています。

 上記ご紹介は所謂、フラット税制というものの亜種でしょうが、フラット税制 というものは、低所得者へのとてつもない負担を強いる税制(高所得者に圧倒的 に有利)として有名です。

 したがって、普通は累進課税が採用されているわけです。(民主的課税制度)

因みに、消費税は逆累進課税であり、そういう面ではフラット税制よりも、なお、 一層、反民主的な税制なわけです。
 この点が、消費税に反対する主要な論点でもあります。

 福祉国家をさんの御主張では、スエーデンの高福祉は、反民主的なフラット 税制(地方税)ともっと反民主的な25%もの消費税によって支えられている かのような印象を受けます。

 しかし、実態はかなり違うように感じます。

 では、私が持っているデータを紹介しましょう。

 竹崎孜氏・元在スエーデン外務省専門調査員、ストックホルム大学客員教授、 著「貧困にあええぐ国ニッポンと貧困をなくした国スエーデン」p92より、

 所得税率一覧表(地方税と所得税は所得税に一本化されている、とした上で)

 14000kr      23,8%
 16000kr      25,0
 18000kr      25,9
 20000kr      26,6
 24000kr      27,7
 26000kr      28,1
 30000kr      30,5
 36000kr      34,3
 40000kr      36,1
 46000kr      38,9

 以上、2007年現在、08年は減税が検討されている、とのこと。

 また、上記からローン利子控除があり。
 さらに、公的給付金が税金控除後に支払われる。 (児童手当金や住宅手当金や年金など)

 こうした給付金は一定額であることが多い(日本の子供手当を見よ) ので、低所得層は払う税よりも受け取る給付金の方が大きくなる、と 言うこともある(年金)し、実際の税負担率はもっと低くなる。

一例、p98
 女性・単身、子供有の場合、
収入164300kr ー税金65200kr +給付金合計104400kr  =203500kr

 つまり、税金<給付金となる。
さらに、教育や子供の医療費は無償となっている。
貧困にあえぐ日本の母子家庭とはずいぶん様相が違っている。

 反民主的フラット税制+もっと反民主的25%消費税で高福祉 というのとはずいぶん違うような気がします。

 スエーデンの企業負担について、桜さんから2007年のデータが提出されていますが、少々古いデータですが、実は、私が提出したはじめのデータからも、計算できますので、紹介します。 もう少し詳しく紹介すれば良かっただけですので。

 1998年 スエーデンにおける租税・社会保障負担の内訳

 対GDP比を追記し、さらに日本のGDP500兆への換算値を追記します。
 日本のGDPについては、98年当時も現在もおおよそ500兆円のまま、ほと んど停滞しています。(こんな国は紛争地、内戦地以外では世界中で実にたった一か国、日本だけです。)

 98年のスエーデンの租税社会保障負担は対GDP比52%でした。(260兆円、日本換算)

1、所得課税      40.9%   21,3%   106,3兆円
 1)個人        35,2%   18,3%   91,5兆円
 2)企業         5,7%    2,96%  14,8兆円

2、社会保険料     28,8%    15,0%   74,9兆円  1)被用者本人    5,8%     3,01%  15,1兆円  2)使用者      22,6%    11,75%  58,8兆円  3)自営業者     0,4%      0,2%    1兆円

3、給与・労働力
  課税         4,8%     2,5%    12,5兆円

4、資産課税       3,8%     1,98%    9,9兆円/p>

5、財・サービス
  課税        21,6%     11,23%  56,1兆円

 その内
 1)付加価値税    13,5%     7,02%  35,1兆円
 2)その他        8,1%     4,21%  21,1兆円

6、その他          0,1%     0,052% 0,26兆円

 合計          100%        52%    260兆円

 SKr(スエーデンクローネ)での総額は、9794億5300万Krです。

 以上から、企業負担は、企業の所得課税と社会保障負担費の合計だけで、28,3% 対GDP比14,71%となり、桜さんが提出された07年のデータとほとんど変わらないことが分かります。

 実際には、固定資産税がこれに加わりますので、もう少し大きい数値となるでしょうけど。

 14,71%ですと、73,6兆円の企業負担をスエーデン企業は負担している ことになるわけです。

 98年の日本の租税社会保障負担合計額は対GDP比28,4%ですから142兆円となり、企業負担がスエーデン並みなら、総額の実に半分以上は企業が負担している計算になるわけです。

 それだけの重い負担・社会責任をスエーデン企業は負っている(支払っている) と言うことになります。

 日本とは大違いなわけです。

 福祉国家をさんは、プライマリーバランスを取るには、毎年23兆円不足して いる、それを、何とかするには、消費税増税しかない、とおっしゃいますが、 (消費税で30兆円近い増税を見込むのだそうですが)なんのことはない、日本の企業が今まで、ずっと、逃れ続けてきた、社会責任を果たせば、すぐにでもプライマリーバランス程度の問題は解決し、さらに10兆円ほど余ってしまうのです。 それが日本の政治家にはできない、しない。

 皆こぞって、マスコミまでもが消費税増税しかない!と主張する。

 そういうところが、スエーデンと日本の決定的な違いでしょう。

 また、そうした主張に与する議論が巷でもなされ、この板でも福祉国家をさんからなされているわけです。

 なお、私は旧HNはスカンジナビアンと言いまして、HNからもお分かりかと思いますが、北欧諸国や蘭の成功に学ぼう、という立場です。(欠点も多々ありますが)
 そういう立場ですから、ずっと昔から、北欧の高福祉は25%もの消費税で支えられている、だの、ひどいのになると、北欧の高福祉は武器輸出で支えられている、だのという中傷・誹謗に具体的なデータで反論してきました。

 ですから、消費税増税と高福祉社会構築については、もうずいぶん以前から、言わば、言い古した、使い古した、というような実感を持って、議論を眺めている次第です。