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丸氏の2月1日付投稿「消費税増税論者が立つ、ある前提について―その再考を 迫るいくつかの点」に関しての反論

2012/2/11 日本に福祉国家を

 まず丸氏は前提として 

「”消費税(率)を引き上げれば税収が増える(はず)”と言うものである。
 日本に福祉国家を氏、立石康行氏および多くの消費税増税(によって税収が増 加すると言う前提に立っている全ての)論者にはぜひとも、今すぐにでも日本の 財務省のホームページを確認してもらいたいのだが、それによると、消費税 (率)を引き上げても必ずしも税収は増えないようなのである。
 財務省ホームページ中のデータに従えば、日本で消費税が3パーセントから5パー セントへ引き上げられた1997年を境に、むしろ税収は大きく落ち込み、以降今日 まで(2011年度については予算額、それ以前は決算額)、97年の税収水準を回復 した年は一度もない。消費税率引き上げによって”消費税収は”確かに増えた。し かしその増収分を大きく上回って所得税収・法人税収が減収したため、”総額と しての”税収は減り、その状態が今日に至ってもなお(実に14年間も)、基本 的に継続しているのである。」

と97年の消費税増税で法人税所得税など他の税が下がったと主張している。 消費税は、税率3%で1989年に導入され、97年に税率5%に引き上げられ たものだが、89年の消費税導入時の所得税・法人税収の推移も見る必要がある。
 丸氏の主張にあったように財務省の資料で税収の推移を調べたが、消費税導入 の前年の88年を起点に、それ以降3年の法人税・所得税収の計の推移は、88 年 36.4兆円 ・89年 40.4兆円・90年 44.4兆円・91年  43.4兆円(決算額・財務省資料)と88年より大幅に増加している。89年 の消費税導入時は所得税・法人税収は減るどころか大幅に増加している。
 89年の消費税導入時も、97年の引き上げ時も、所得税・法人税収が同じよ うに下がっていたならば、丸氏の主張するように消費税増税は所得税・法人税収 を引き下げるという論も成り立とうが、89年の消費税導入時の経緯からは、明 確に丸氏が主張される「消費税増税は、所得税・法人税の税収減につながる」と いう前提は崩壊する。
 89年と97年の異なった税収の動き、97年以降の所得税・法人税収の落ち 込みは、消費税以外の別の要因によるものと理解することが妥当である。
 記憶を呼び起こせば、97年当時の経済状況はバブルの後遺症で銀行などが不 良債権に苦しみ、三洋証券・北海道拓殖銀行・山一證券などが経営破たんし、そ れ以外の銀行も不良債権が経営を圧迫し、中小企業などへの融資に消極的にな り、貸し渋り・貸しはがしが横行し、中小企業の倒産が激増し、失業者も増大し た経済状況にあった。また、当時の橋本政権は公共事業の大幅削減をし、建設業 従事者の失業も増大させた。
 上記のような不良債権問題や公共事業の削減が主要因として、97年以降の景 気低迷と所得税・法人税収の落ち込みが生じたのであり、97年の消費税増税が あろうがなかろうが税収減は生じたと結論することができよう。

 丸氏は、89年の消費税導入時の税収増は全く触れず、97年の消費税増税時 の税収減だけを問題にし、また不良債権問題も全く触れずに、消費税増税が景気 悪化・税収減の主要因と決めつける手法は、詐欺的手法ではないだろうか。

 次に丸氏は 

「さらに財務省のホームページを見ていくと、97年を境に歳出 と公債発行額が大きく増大していることが分かる。97年の消費税増税以後、日 本は財政再建の途からむしろますます遠のいたようである。
 公債発行額が増大した要因としては、一つは、”消費税を増税したにもかかわ らず引き起こされた”税収減を補うため、もう一つは歳出増に対応するため、が 考えられる。次に歳出増については、急激な経済悪化を受けてのいわゆる”景気 対策”による多額の財政出動が大きな要因の一つといえるだろう。このことか ら、消費税増税が必ずしも財政再建に直結するものではない=消費税増税を財政 再建に結びつけるためには、先に見てきた①②の条件に加え、さらに財務省の ホームページを見ていくと、97年を境に歳出と公債発行額が大きく増大してい ることが分かる。97年の消費税増税以後、日本は財政再建の途からむしろます ます遠のいたようである。
③歳出・公債発行額が増大しないこと。もしくは
④歳出・公債発行額の増大を補って余りある消費税(収が見込めるだけの消費 税)率を設定することという条件が必要であることがわかる。」

と歳出の増大を税収減への対応と景気対策のための財政出動に求められるが、 2000年以降の状況では、人口の高齢化による社会保障費の急増も歳出増大の 大きな要因でもある。
 社会保障費の高齢者3経費(基礎年金の国庫負担分・高齢者医療費・介護保険の国負担分)が、99年は8.8兆円だったが、これが2010年には16.6兆円とほぼ倍増している。
 丸氏は、歳出の増大が悪かのような議論をされているが、人口の高齢化が進めば、社会保障費の増大による歳出の増大が進むことは当然のことであり、社会保障費の急増による歳出増大を回避するには社会保障の大幅削減以外に方法はない。
 消費税増税反対論者は、高齢化の進行による社会保障費の急増が歳出を増やす、という現実をあえて無視するようである。
ここで一般歳出(歳出から、国債返済金と地方交付税を引いた額)に占める社 会保障費の割合を見たいが、03年は40%が、07年には45%となり、 2011年には53%と一般歳出の過半数以上を占めている。(厚生労働省資料) すなわち、今では国の歳出の半分以上が社会保障費に使われており、社会保障費 の増加が歳出増加の主要因となっている。
 共産党の赤旗にも、最近の社会保障予算の推移は全く載せず、人口の高齢化に よる社会保障費の急増という事実を意図的に隠ぺいしている。
 丸氏には、こういう事実の歪曲への猛省を促したい。
 社会保障費の増加による歳出増がある中で、税収が伸びなければ公債発行が増 えるのは当然といえよう。

次に丸氏は

「<ア>、たとえ消費税率を引き上げても、それによる税収増加分以上の所得 税・法人税減収をもたらす景気後退が起これば、せっかくの消費税増税による増 収までもが無効化されてしまうこと。 <イ>、そもそも消費税(増税)それ自体が、消費支出に対していわばペナル ティを課すがのごとき租税方式であり、とりわけ97年当時および現在のデフレ不 況下においては、消費・内需をますます抑制・縮小させる方向に作用し、デフレ 不況を悪化・長期化させる要因となるであろうことが強く懸念されること。」

と述べられる。
 丸氏の消費税がデフレ不況下では消費・内需の縮小を引き起こすという主張だ が、日本の現在の金融資産に関しても見ておく必要がある。
 今、1400兆円を超える金融資産(負債を差し引きすれば1100兆円程 度)があると言われ、これが国・地方の国債・公債の国内での消化を可能にする 条件でもあるが、このような大量の金融資産は一部の大企業や富裕層だけではな く、一般庶民が消費を削って蓄えた預貯金も多く含まれている。
 少し前(2007年ごろ)に団塊の世代が大量退職し、それなりの退職金を受 け取った人も多いであろうが、退職金の多くが消費に回されず貯金に回り、企業 の退職金を目当てにした商戦は完全に不発だったようだ。
 少し前、NHKでテレビで時代劇の放映が激減し、製作地の京都の太秦の映画産 業が危機という内容の番組があったが、その理由として時代劇の視聴者の大半が 高齢者であるが、企業のマーケティングでは高齢者は消費をしないという結果が あり、時代劇にはスポンサーがつかなくなり、水戸黄門も現代劇に代わっている。
 高齢者が、退職金を貯金し、消費になかなか回そうとしないのは、日本の社会 保障の現状と将来に不安を覚え、少しでも現金で残そうとする姿勢が強いものと 推察する。
 将来要介護状態になった時、公的老人ホーム(特別養護老人ホームなど)が今 40万人程度の待機者が存在し入ることがきわめて困難で、介護難民問題が深刻 化している。介護に疲れ親や配偶者を殺す、一家心中する不幸な事件も後を絶た ない。民間の有料老人ホームに入るには莫大な費用が掛かり、介護への不安が解 消されない限り貯金を取り崩せない。
 消費税増税しても、社会保障の安定財源を確立し、日本の社会保障は将来も大 丈夫という認識が国民・高齢者にも広がれば、高齢者も少しは貯金を消費に回す ようになるのではないか。
 消費税増税で日本の社会保障の持続性への安心を培うことも、消費・内需拡大 につながるだろう。

 も一つは、子育て世代は高い大学学費を賄うため、消費を抑制し子どもが小学生 の時より学資保険などへの積み立てをしており、高い大学学費も消費を抑制する 大きな要因と考える。
 1970年代は、高卒でも学校でまじめに勉強していれば、市役所の正職員に なれる時代でもあったが、今公務員になるためには難関大学学生が、公務員試験 の予備校に通いやっと採用試験に合格できるかどうかというように、市役所職員 になるために必要な教育費が激増している。
 大学の学費も、70年代と比べ物価上昇分以上に急騰している。私も70年代 に私立大学で学んでいたが、初年度納入金24万円・年間学費16万円で、公立 高校の授業料無償化の前の学費とそう変わらなかった。今は私立大学なら最低で も年間学費100万円は下らない。

 民主党の「社会保障と税の一体改革」の構想にはないが、ヨーロッパ諸国のよ うに消費税・税負担が重くとも、大学の学費の無償化や大幅引下げすれば、学費 負担が少なくなり、子育て世代の消費も増加すると期待される。

 結論的には、消費税の課税が消費・内需を縮小しているというよりも、社会保 障の未整備と財政問題での持続性への不安、そして日本の高等教育への公的支出 の少なさが、国民に過剰な預貯金を強制し、消費・内需を冷え込ませる要因の一 つと考える。
 逆にスウェーデンのように消費税率25%でも十分な公的介護が整備され、大 学の学費が無償であれば、日本のように国民が過剰な預貯金をする必要もなく、 それなりの消費・内需も確保されるものと考えるし、もし丸氏の主張のように消 費税が消費・内需を冷やすならば、消費税の高い欧州諸国は大幅に消費税率を引 き上げたとっくの昔に大恐慌になっていたのではないか。私は欧州諸国で消費税 引き上げによる恐慌が発生したという話は聞いたことがない。

 もう一つの日本の不況要因は、雇用の劣化である。90年代後半から企業も公 的機関も正規雇用を減らし、低賃金不安定雇用の非正規雇用を拡大させた。この ようなワーキングプアといわれる人々の増大も、消費を抑制する大きな要因であ る。同時に低賃金の非正規雇用の拡大は所得税収を大幅に引き下げる要因でもあ る。年収400万円の正規職員社員は、年収200万円の非正規社員より多くの 所得税を払う。雇用の非正規化の流れは、所得税収の税収基盤も侵食する。

 私は、共産党が与党の自治体に居住しているが、わが町の自治体の正規職員の 退職を欠員不補充で、その仕事を月収15万円程度(年収180万円)で、賞与 も退職金も定期昇給もない1年契約の臨時職・嘱託など非正規職員に置き換える という行革が進行している。
 年収180万円のワーキングプアで、そこから税金や社会保険料も払い、家賃 を払い、車代(地方のため車は必需品)を払えば、食費を確保するのも難しいだ ろう。このようなワーキングプアが増えたことは、消費税どうこう以前に消費・ 内需を著しく冷え込ませる要因であるし、所得税収の税収基盤の侵食でもある。
 私は共産党に経済政策・産業政策がないといったのは、共産党が与党の自治体 で、共産党地方議員が正規職員を大幅に減らし、内需・地域経済を冷え込ませる 低賃金の非正規職員に置き換える行革を積極的に推進したことである。
 共産党が消費税は内需を冷え込ませる、貧困層に負担が重いといくら主張して も、共産党の地方議員が自治体の正規職員の大幅削減とワーキングプアの非正規 職員を大幅に増やす旗振り役を務め、貧困者を増やし内需・地域経済を冷え込ま せる行動を行う実態が大きな矛盾と言わざるを得ないし、共産党議員が雇用の劣 化を推進するようでは共産党に経済政策・産業政策はないと結論付けざるを得ない。

 雇用劣化が進行し、若者の貧困化・失業率も増大する中で、そういう困難を抱 えた若者・現役世代の生活保障をどう進めるのか、民主党の「社会保障と税の一 体改革」案では十分検討されていないが今後の大きな課題であろうし、消費税の 増収部分で困難を抱えた若者・現役世代の社会保障・生活保障の拡充を図ること も重要な課題と考える。
 日本はセーフティーネットが、社会保険(若年者であれば失業保険)と生活保 護との間にほとんどなく、失業保険が受けられない等の場合、生活保護しか救済 策がなく、一方自治体の生活保護の窓口では若く働ける人々には生活保護をでき るだけかけないように対応することも多く、失業が自殺や路上生活やネットカ フェ難民に直結することが多い。
 日本も若者の失業率は高く、15歳から25歳では失業率は10%近い。 (2010年現在)

 欧州でも若者の失業問題は深刻な問題だが、低所得者には住宅手当など社会保 険と生活保護の間に何層かの生活保障のセーフティーネットが張られている国が 多い。
 家賃も捻出できないワーキングプアの人々に、月3万円でも住宅手当が支給さ れれば、生活困窮者の大きな生活保障にもなろう。
 日本は、欧州諸国に比べ社会保障給付が高齢者に偏りすぎ、若年者・現役世代 への給付が極端に少ない。
 増税により、若者・現役世代への社会保障・生活保障の拡充を主張する社会保 障の研究者も多数存在する。

 民主党政権の経済ブレーン(管直人が財務大臣時代に経済学を教授した)であ る小野善康大阪大学教授は、消費税増税を含む増税で財源を作り、介護・医療・ 保育などの分野で新たに雇用を生み出し、失業率を下げれば、住民福祉の向上と 共に失業者が雇用につけば消費するようになり需要を喚起し、経済不況脱却への 方向にもつながると、消費税増税が需要拡大・不況克服の手段として論じられて いる。(小野善康『成熟社会の経済学―長期不況をどう克服するのか』岩波新 書、2012年)

 またスウェーデンなど北欧諸国は、高い税収(スウェーデン・デンマークは消 費税25%)で福祉・医療・教育などの分野の公務員を大量に増やし、全就労者 の3割程度を占めている実態は、福祉の充実という便益が生じるとともに、労働 市場の下支えとなり、雇用劣化の防波堤ともなろう。

 結論的に丸氏の消費税の増税が消費を縮小し・不況を深刻化するという議論は あまりにも単純な思考であり、小野教授のように、増税してその財源で雇用を生 み出し、需要を喚起し、不況を克服すると同時に、福祉の充実という便益にも国 民は享受することができる、また公的介護・医療などへの国民の信頼感が増せば、貯蓄を消費に回す高齢者も増える、内需も拡大する、という発想こそ必要ではないだろうか。

 丸氏も内需拡大が必要という認識論のようだが、例えば自動車のように日本で の普及率が高く(乗用車の所有台数・人口千人当たり 455台、2009年) 飽和状態で、少子高齢化・人口減少社会のもとでは高齢のため自動車運転を止め る高齢者が、新たに成人をして自動車に乗り出す若者を上回る状況では、国内の 自動車販売台数は低下せざるを得ない。
 中国・インドなど人口の多く経済成長が著しく、自動車などの普及率の低い途 上国と異なり、日本など先進国は自動車も家電なども普及率が高く、飽和状態で あり、消費税増税しなければ単純に内需が拡大するというものではない。
 物が飽和状態にある日本で需要・内需を大幅に拡大するには、市場任せ・「神 の見えざる手に任せる」では生み出せないのであり、小野教授が主張されるよう に増税で、公的財政により需要・内需を生み出すことこそ必要である。

 少子高齢化が進む日本では、介護・医療・保育どの分野が大きな成長分野と考 えられるが、そういう分野は自動車の製造販売のように民間企業ベース・市場原 理ではいかず、公的政策分野になり、そういう分野での供給の拡大には公的財源 が必要であり、それを支えうる税負担が必要で、それが確保されなければ内需の 拡大もできない。
 老人ホームのような介護分野での供給を増やすには、施設建設の補助金や介護 保険での介護報酬の増大が必要となり、社会保障費・歳出の増加を伴うものである。
 そのためにも大幅な財政赤字を抱える日本では、消費税を含む増税による財源 確保・社会保障費の確保が、これからの日本における内需拡大の絶対的条件であ り、増税に反対すること自体がそういう分野での内需拡大の可能性の芽を摘むこ ととなろう。例えば介護という分野で内需拡大するためには、国の歳出が増えざ るを得ないのである。
 国の歳出が増えることが悪であるかのような丸氏の見解では、介護医療などの 分野での内需の拡大は不可能である。

 次に直接税か間接税かの問題を検討したい。私は1980年代からの所得税・ 法人税・消費税の税収の推移の財務省の資料を検討したが、第一の印象は直接税 である所得税・法人税の税収変動がきわめて大きいのに対し、消費税は税収が安 定していることである。
 今の日本のように大きな財政赤字を抱えている状況では、安易に赤字国債を増 やすという選択はできない。直接税である所得税・法人税は景気の変動の影響を 強く受け、不況局面では税収が激減する。絶対に赤字国債は増やさないという前 提を据えれば、直接税に依存した財政構造では、大幅な税収減の時には歳出を大 幅にカットしなければならなくなる。果たして不況で所得税・法人税が大きく落 ち込んだ時、歳出カットとして大幅な社会保障の削減や教育の削減ができるの か、またそのことが妥当かという問題がある。
 不況のたびに、年金3割カットや教員の首切りで教育の質を落とすなど繰り返 してよいとは思えない。
 莫大な赤字財政のもと赤字国債は増やさないという前提の下では、不況で法人 税や所得税収が激減しても、基本的に福祉や医療などの歳出を維持することを確 保するためには、一番税収が安定している消費税収入の比率を高めざるを得ない と考える。

 次に法人税に関しては、財務省の資料では赤字法人が全体の法人の 72.8%・資本金1億円以上の企業でも53.2%に上る。(09年・財務省)
 赤字企業は法人税がゼロとなり、結局大企業が利益を上げなければ法人税収は 伸びないという構造である。
 実は大企業の利益は、外因的要因に大きく左右され、極めて不安定である。丸 氏は輸出の増加が円高要因と書かれていたが、昨年日本は震災以降貿易収支は赤 字であったが、対ドル・対ユーロに対し急激な円高が進行した。日本が震災で大 きなダメージを受け貿易収支が赤字でも、アメリカやヨーロッパの経済状況がよ り悪ければ、円高が進行するというのが昨年後半の状況であった。今ヨーロッパ では、政府の債務の信用不安が深刻な問題となっているが、これが解消しなけれ ば対ユーロでの円高は解消しないし、ヨーロッパ向け輸出も低迷する。アメリカ もまだ金融機関が多くの不良債権を抱えている状況であるとともに、最近の戦費 負担で国家財政の赤字も進行しており、アメリカがこれらの問題を解決しなけれ ば、対ドルとの関係での円高も解消しないというように、円高解消は、外国頼み の側面も大きい。

 所得税に関しては、2006年の民間サラリーマンの年収の所得別割合では、
300万未満            38.8%
300万以上900万未満      54.3%
900万以上             7.0%

であり、大半は年収900万未満であることが分かる。高額所得者の累進性の問 題も重要だが、所得税収を増加させるには、やはり割合の多い低所得層・中間所 得層の所得の底上げが不可欠であることが分かる。
 どのように雇用の劣化を食い止め、庶民の所得の増加を図るのかが大きなポイ ントで、共産党が与党の自治体の共産党地方議員のように低賃金の非正規職員を 増やすような行動は厳に慎むべきである。
 構造的問題として、少子高齢化が進行し勤労所得のある現役世代が減少し、年 金所得のみの高齢者が増加しているが、年金収入には大きな控除があり勤労所得 ほど所得税が課税されないという税制度上の問題がある。
 少子高齢化の進行で現役の勤労世代が減少し、大きな税控除のある年金生活の 高齢者の増加するなかでは、所得税収が減少することは避けられない。

 最後に民主党・政府の「社会保障と税の一体改革」案に関しては、社会保障の充 実という観点からは不十分さは大きいと認識するが、財政の持続可能性として国 のプライマリーバランスが23兆円も赤字という状況を放置することも、国民の 暮らしには極めて危険なことであり、消費税増税問題は避けれない課題であろう。
 小泉政権時代に、「増税なき財政再建」の声のもとで、消費税増税はなかった が、社会保障の大幅削減が実行されたことも記憶に新しい。消費税増税をつぶせ ば、次は社会保障の大幅削減かギリシャやイタリアのような財政破たんが待って いよう。