消費税増税論者は、消費税を増税さえすれば、全て解決するかのような前提の議論をする。
しかし、実際には橋本内閣で消費税が増税され、その後特別減税が廃止されて、9兆円もの大増税がされたにもかかわらず、税収は4兆円も減ってしまったのだ。
今回も増税しても、同じように税収全体がが減らないとどうして言えるのだろう。
また、消費税増税で財政危機が解決できるならば、何故日本より遥かに税率が高い、ギリシャやポルトガル、イタリア等、ヨーロッパ諸国が財政危機に陥るのだろう。
消費税は取引にかかる税金だ。所得税や法人税のように所得や利益の裏付けが在るわけではない。
取引は一つのパイを取り合うようなものだ。消費税の納税義務者は、年商1000万以上の事業者だが、実際の税額を負担する担税者の定めは無い。ということは、個々の取引関係の力関係で、弱い方がより多く負担する仕組だ。増税論者は価格に「転化できない」というと「転化できている」と言う。
同業者との競争上、あるいは元請に泣かされて消費税分以上の値引きを余儀なくされても消費税の納税を免れる事はできない。帳簿上「転化できた」形になっているだけである。
このデフレ不況の中で、消費税が上がっても言われているような直ちに消費税分の商品の値上げは無いだろう。
先日、仕入先がある大手販売業者に石油化学製品の値上げの打診に行った時のやり取り。
「どの位上がるんだよ」「15%位」「間に何社入っているんだ」「3社」「じゃあ5%ずつでチャラだな」
今の現状では、値上げなど困難だ。ただ違うのは、実際に値上げされた場合、この業者が他に押付けるように他の業者も他に押付けるだろうから結局、5%ずつではなく、弱い者がより多くの負担をさせられるという事だ。
消費税が増税されれば、日本中でこれと同じようなやり取りがなされるだろう。
事業者はその負担を、従業員の所得、消費税や厚生年金等を控除できる非正規従業員の増加、短期独立による請負化、仕入先に対する値引き等に転化して利益を確保する。
押付けられた業者は生き残るためにそのまた従業員や仕入先等、さらに弱い人々に押付ける。
弱い者いじめの無限連鎖、これこそが消費税の本質だ。
安定財源というが、今でさえ滞納税額ダントツワーストワン、滞納税額の半分を占める消費税がどうして安定財源と言えるのか。事業者は消費税を免れ利益を確保する為に、税額控除の対象となる非正規雇用や形だけの短期独立させた請負業者との取引を増やすだろう。
私の業界でも、一人前になって独立するのに少なくても6年は必要なのに、2~3年で独立させて、下請け業者として使うケースが増えてきている。
未熟なまま短期独立した請負業者の増加、非正規社員の増大は、技能の伝承、日本の物作りの伝統や伝統芸能の継承、地域の地場産業に致命的な打撃を与えるだろう。
最近、地方を旅行しても、以前のような地方独特の店がほとんど無くなって、どこへ行っても全国展開しているチェーン店ばかりになってしまっていると感じているのは、私だけだろうか。
消費税が増税されれば、厚生年金の対象者は益々減るだろう。また、失業者や低所得者は益々増えるだろう。
年金財源の対象者を減らすような消費税増税が安定財源と言えるのか。
次世代へ付けを回さないようにと言いながら、消費税増税で、一番被害をこうむるのは、その次世代の人たちなのではないだろうか。
財源という事だが、直間比率の見直しという事で消費税の導入の時と全く逆の事をすれば、消費税3%分近くがまかなえるのではないだろうか。
他に法政大学の五十嵐仁教授が、12/20の転成仁語で書かれていた投機目的の国際通貨取引に対して課税を強化するトービン税等はどうだろう。
イギリスでは、税率を平均0.05%とすれば、年間2500億ポンド(36兆円)の税収が見込めるという事だ。
日本でも導入すれば、それ以上の税収を確保できるのではないだろうか。
また、株売買等の金融取引の課税強化、例えば分離課税を廃止して総合課税化、内部留保への課税等、実際の収入や利益など、帳簿上ではなく、裏付けのある課税をすべきではないだろうか。