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一般投稿欄

日本に福祉国家を氏の2月11日付「反論」について

2012/2/19 丸 楠夫

 1、

私は前回の投稿(一般投稿欄2012,2,1付け 丸 楠夫 「消費税増税論 者が立つ、ある前提について――――その再考を迫るいくつかの点」 以下、『ある 前提について』)において、

「消費税(率)を引き上げても必ずしも税収は増えないようなのである。」
「財務省ホームページ中のデータに従えば、日本で消費税が3パーセントから5 パーセントへ引き上げられた1997年を境に、むしろ税収は大きく落ち込み、以降 今日まで(2011年度については予算額、それ以前は決算額)、97年の税収水準を 回復した年は一度もない。消費税率引き上げによって”消費税収は”確かに増え た。しかしその増収分を大きく上回って所得税収・法人税収が減収したため、” 総額としての”税収は減り、その状態が今日に至ってもなお(実に14年間 も)、基本的に継続しているのである。
 以上のことから、消費税増税によって税収増を実現するためには、少なくとも 次の条件のうちのいずれかが絶対に不可欠であることがわかる。

①消費税収以外の税(その他の)収入が(消費税の増収分以上に)減らないこ と。または

②所得税・法人税(その他の)収入の減少を補って余りある消費税(収が見込め るだけの消費税)率を設定すること。

 上記二点についての十分な認識と考慮、いずれかの条件を確保できる見通しま たはそれを確保すための現実的・具体的な考察・提言、を欠いた消費税増税(に よって税収増を図ろうとする)論は、論者個人の主観的な熱意や良心とは関係な く、その実効性において、無責任などんぶり勘定の域を出ない。少なくとも、” 消費税率は上げましたが税収は減ってしまいました”という97年の喜劇的(とい うにはあまりに悲劇的な)事態を再び繰り返すような愚は、到底許されるもので はない。」(以上 丸 『ある前提について』)

と述べた。つまり、消費税を増税しても“無条件に”税収が増えるわけでは「必ず しも」なく、消費税増税によって税収(全体の)増を図るには“一定の条件”を満 たす必要があることを私は主張したのである。従って、日本に福祉国家を氏の

「89年の消費税導入時も、97年の引き上げ時も、所得税・法人税収が同じよ うに下がっていたならば、丸氏の主張するように消費税増税は所得税・法人税収 を引き下げるという論も成り立とうが、89年の消費税導入時の経緯からは、明 確に丸氏が主張される「消費税増税は、所得税・法人税の税収減につながる」と いう前提は崩壊する。」(一般投稿欄2012年2月11日付 日本に福祉国家 を 「丸氏の2月1日付投稿「消費税増税論者が立つ、ある前提について―その 再考を迫るいくつかの点」に関しての反論」 以下、『反論』)

という記述には、そもそもの私の主張に対する明らかな事実誤認が含まれている と言える。私は、消費税増税が「所得税・法人税の税収減につなが」ら“ない”場 合があり得ることをなんら否定していない。そもそも私が、本当に日本に福祉国 家を氏が言うように「「消費税増税は、所得税・法人税の税収減につながる」と いう前提」に立っているのなら、「消費税増税によって税収増を実現するため」 の「条件」となるのは「②」で言っている「所得税・法人税(その他の)収入の 減少を補って余りある消費税(収が見込めるだけの消費税)率を設定するこ と。」“だけ”となるはずであり、さらにわざわざ「条件」のもう一つとして「① 消費税収以外の税(その他の)収入が(消費税の増収分以上に)減らないこ と。」などと挙げる必要はないし、それどころか、日本に福祉国家を氏が言うと ころの「前提」からすば「①」は明らかに背理した「条件」となってしまう。

 また、日本に福祉国家を氏は、「89年の消費税導入時は所得税・法人税収は 減るどころか大幅に増加している。」点を指摘し、あわせて

「89年と97年の異なった税収の動き、97年以降の所得税・法人税収の落ち 込みは、消費税以外の別の要因によるものと理解することが妥当である。
 記憶を呼び起こせば、97年当時の経済状況はバブルの後遺症で銀行などが不 良債権に苦しみ、三洋証券・北海道拓殖銀行・山一證券などが経営破たんし、そ れ以外の銀行も不良債権が経営を圧迫し、中小企業などへの融資に消極的にな り、貸し渋り・貸しはがしが横行し、中小企業の倒産が激増し、失業者も増大し た経済状況にあった。また、当時の橋本政権は公共事業の大幅削減をし、建設業 従事者の失業も増大させた。
 上記のような不良債権問題や公共事業の削減が主要因として、97年以降の景 気低迷と所得税・法人税収の落ち込みが生じたのであり、97年の消費税増税が あろうがなかろうが税収減は生じたと結論することができよう。」

と述べ、

「丸氏は、89年の消費税導入時の税収増は全く触れず、97年の消費税増税時 の税収減だけを問題にし、また不良債権問題も全く触れずに、消費税増税が景気 悪化・税収減の主要因と決めつける手法は、詐欺的手法ではないだろうか。」

としている(以上 日本に福祉国家を 『反論』)。「89年の消費税導入時は 所得税・法人税収は減るどころか大幅に増加している。」点については、すでに 述べたように、私の主張は、消費税増税が「所得税・法人税の税収減につなが」 らない場合があり得ることをそもそも否定するものではないので、日本に福祉国 家を氏が指摘する消費税導入時の事例に照らしても、なんら整合性が損なわれる ことはないものと考える。そもそも「前提について」での私の目的は、消費税増 税によって税収増を図るために“「絶対に不可欠」な”条件を提示することであ り、その限りにおいては、89年の事例についてあえて言及しなければならない 必要性は薄かった。なるほど確かに、消費税増税によって税収増を図るという主 張について検討する上で、89年の事例が重要な参考例を提供しているのは間違 いない。では、消費税が導入された89年とはそもそもどういう年であったの か?“なぜか”日本に福祉国家を氏は触れていないので、代わりに言っておくが、 89年は日本経済の空前の好況期、いわゆるバブル景気の真っ只中の年である。 もっともいつからいつまでをバブル景気と見なすかは、基準とする指標によって も違ってくるであろうから、ここでは参考までに経済白書の副題をあげておこう。

88年 内需型成長の持続と国際社会への貢献

89年 平成経済の門出と日本経済の新しい潮流

90年 持続的拡大への道

91年 長期拡大の条件と国際社会における役割(注、1)

このような経済状況、時代条件の下、消費税は3パーセントの税率でもって導入 された。そして「89年の消費税導入時は所得税・法人税収は減るどころか大幅 に増加している。」(注、2)。以上のことから、「89年の消費税導入時」と 同じような諸条件をすでに満たしているかもしくは、そのような諸条件を確保で きる見通しまたはそれを確保すための現実的・具体的な考察・提言を示した上 で、3パーセント程度の消費税増税を行おうというのであれば、89年の事例に 照らして、消費税を増税しながら「所得税・法人税収は減るどころか大幅に増 加」させることも不可能ではないかもしれない。そんなことまで否定しようとい う気は、私には毛頭ない。だが、日本に福祉国家を氏が『反論』において89年 の事例を持ち出して言おうとしていることは、どうもそういうことではないよう である。では89年の事例から日本に福祉国家を氏はどういうことを言おうとし ているのか?正直私にはよくわからない。

(注、1)、

ちなみに87年は「進む構造転換と今後の課題」、92年は「調整をこえて新た な展開を目指す日本経済」

(注、2)、

それでも(バブル景気の真っ只中であったにもかかわらず)、消費税導入後、民 間消費と住宅市場には一定の落ち込みが見られたようである。

 また、日本に福祉国家を氏は、私の『ある前提について』での主張を、「不良 債権問題も全く触れずに、消費税増税が景気悪化・税収減の主要因と決めつける 手法」としているが、それについては

「さて、97年の急激な景気後退と、以降基本的に今日まで続くことになるデフレ 不況のさらなる長期化を”(いわゆる9兆円の負担増と言われた、97年の社会保険 料引き上げ、所得税特別減税廃止を含む)消費税増税のせいだ”と言うのは、い ささか早計かもしれない。少なくともこの時の景気悪化の原因を消費税増税(を 含む9兆円の負担増)だけに求めることは、正確さを欠くであろう。」(丸  『ある前提について』)

と、述べることで、私はきちんと釘を刺しておいたつもりである。たしかに「不 良債権問題」や「公共事業の削減」といった具体的言及こそしてはいないが、ま さかそれをもってして「詐欺的手法ではないだろうか。」とまで問うてくると は、実に意表を突かれる反論であった。これに関しては、「詐欺的手法」“にし ては”懇切丁寧に釘を刺す言及をわざわざしている“間抜けぶり”に免じて、どう かお許しいただきたいものである(あわせて、『ある前提について』の主題が、 消費税増税によって税収増を図る上での必要な条件を提示すること、であって、 そもそも「97年以降の景気低迷と所得税・法人税収の落ち込み」について詳述 することではなかった、という点についても考慮いただきたい)。

 次に

「不良債権問題や公共事業の削減が主要因として、97年以降の景気低迷と所得 税・法人税収の落ち込みが生じたのであり、97年の消費税増税があろうがなか ろうが税収減は生じたと結論することができよう。」

という日本に福祉国家を氏の指摘はそのとおりであろうが、ここで本来問題とす べきは、「97年の消費税増税があろうがなかろうが税収減は生じた」かどうか ではなく、「97年の消費税増税が」「97年以降の景気低迷と所得税・法人税 収の落ち込み」にどのような影響を与えたか、であろう。日本に福祉国家を氏は 「89年と97年の異なった税収の動き、97年以降の所得税・法人税収の落ち 込みは、消費税以外の別の要因によるものと理解することが妥当である。」とし て、「97年以降の景気低迷と所得税・法人税収の落ち込み」に影響を与えたと 考えられる、消費税以外の要因をいくつかあげているが、「97年の消費税増税 が」「97年以降の景気低迷と所得税・法人税収の落ち込み」に影響を与えたこ とそれ自体については、なんら具体的な否定も反論もしていない。89年という バブル景気の真っ只中という経済状況下“ではなく”「97年当時の経済状況」、 すなわち、「バブルの後遺症で銀行などが不良債権に苦しみ、三洋証券・北海道 拓殖銀行・山一證券などが経営破たんし、それ以外の銀行も不良債権が経営を圧 迫し、中小企業などへの融資に消極的になり、貸し渋り・貸しはがしが横行し、 中小企業の倒産が激増し、失業者も増大した経済状況にあった。また、当時の橋 本政権は公共事業の大幅削減をし、建設業従事者の失業も増大させた。」中に あっての消費税増税が、「97年以降の景気低迷と所得税・法人税収の落ち込 み」に更なる悪影響を与えたとするならば(繰り返すが、日本に福祉国家を氏も この点については具体的な否定・反論を一切していない)、それは紛れもなく愚 策であったといわざるを得ないであろうし、同じ愚を再び繰り返すようなこと は、到底許されるものではないであろう。そして、今日の経済状況は、消費税を 増税(導入)しても「所得税・法人税収は減るどころか大幅に増加し」た「89 年の消費税導入時」の経済状況からは程遠く、どちらかといえば消費税増税後に 「景気低迷と所得税・法人税収の落ち込みが生じた」97年の経済状況の方にこ そより近いといえるのではなかろうか?

 ところで、89年がバブル景気の真っ只中であることに「全く触れずに」、 「89年の消費税導入時は所得税・法人税収は減るどころか大幅に増加してい る。」事を持って、「「消費税増税は、所得税・法人税の税収減につながる」と いう前提は崩壊する。」「と決め付ける手法は」、日本に福祉国家を氏の定義に おいては「詐欺的手法」には当たらないのであろうか?あるいは、「97年以降 の所得税・法人税収の落ち込み」には「消費税以外の別の要因」“も”あった事を 持って、「97年以降の所得税・法人税収の落ち込みは、消費税以外の別の要因 によるものと理解することが妥当である。」(日本に福祉国家を 『反論』) 「と決め付ける手法は」、日本に福祉国家を氏の定義においては「詐欺的手法」 には当たらないのであろうか?日本に福祉国家を氏にとっての「詐欺的手法」な るものの判断基準がいったいどこにあるのか、正直、私には全くわからない。

2、

「次に丸氏は 

「さらに財務省のホームページを見ていくと、97年を境に歳出と公債発行額が 大きく増大していることが分かる。97年の消費税増税以後、日本は財政再建の 途からむしろますます遠のいたようである。
 公債発行額が増大した要因としては、一つは、”消費税を増税したにもかかわ らず引き起こされた”税収減を補うため、もう一つは歳出増に対応するため、が 考えられる。次に歳出増については、急激な経済悪化を受けてのいわゆる”景気 対策”による多額の財政出動が大きな要因の一つといえるだろう。このことか ら、消費税増税が必ずしも財政再建に直結するものではない=消費税増税を財政 再建に結びつけるためには、先に見てきた①②の条件に加え、さらに財務省のホー ムページを見ていくと、97年を境に歳出と公債発行額が大きく増大しているこ とが分かる。97年の消費税増税以後、日本は財政再建の途からむしろますます 遠のいたようである。
③歳出・公債発行額が増大しないこと。もしくは
④歳出・公債発行額の増大を補って余りある消費税(収が見込めるだけの消費 税)率を設定することという条件が必要であることがわかる。」

と歳出の増大を税収減への対応と景気対策のための財政出動に求められるが、 2000年以降の状況では、人口の高齢化による社会保障費の急増も歳出増大の 大きな要因でもある。
 社会保障費の高齢者3経費(基礎年金の国庫負担分・高齢者医療費・介護保険 の国負担分)が、99年は8.8兆円だったが、これが2010年には16.6 兆円とほぼ倍増している。
 丸氏は、歳出の増大が悪かのような議論をされているが、人口の高齢化が進め ば、社会保障費の増大による歳出の増大が進むことは当然のことであり、社会保 障費の急増による歳出増大を回避するには社会保障の大幅削減以外に方法はない。
 消費税増税反対論者は、高齢化の進行による社会保障費の急増が歳出を増や す、という現実をあえて無視するようである。
ここで一般歳出(歳出から、国債返済金と地方交付税を引いた額)に占める社会 保障費の割合を見たいが、03年は40%が、07年には45%となり、 2011年には53%と一般歳出の過半数以上を占めている。(厚生労働省資 料)すなわち、今では国の歳出の半分以上が社会保障費に使われており、社会保 障費の増加が歳出増加の主要因となっている。
 共産党の赤旗にも、最近の社会保障予算の推移は全く載せず、人口の高齢化に よる社会保障費の急増という事実を意図的に隠ぺいしている。
 丸氏には、こういう事実の歪曲への猛省を促したい。
 社会保障費の増加による歳出増がある中で、税収が伸びなければ公債発行が増 えるのは当然といえよう。」(日本に福祉国家を 『反論』)

 これについては日本に福祉国家を氏自身による引用にもあるとおり、私は歳出増 の要因として「景気対策のための財政出動」以外にも要因があり得ることを否定 していない。また、そもそも私がここで言っているのは、直接には「97年の消 費税増税」前後の比較においての公債発行額と歳出の増大についてである。した がって、それに対して96年と97年(を中心とした前後数年)の社会保障費を 比較し、“97年を明確に境として、社会保障費の増加ペースが大幅に上昇して いる”、よって、“97年以降の歳出増の主要因は社会保障費増加ペースの(97 年を境とする)急上昇である”、とでも言ってくれるのであれば、確かに議論と しても噛み合おう。だが、ここでなぜか日本に福祉国家を氏は、「2000年以 降の状況では、人口の高齢化による社会保障費の急増も歳出増大の大きな要因で もある。」と、いきなり「2000年以降の」話をしだし、「社会保障費の高齢 者3経費(基礎年金の国庫負担分・高齢者医療費・介護保険の国負担分)が、 99年は8.8兆円だったが、これが2010年には16.6兆円とほぼ倍増し ている。」と、よりにもよって「99年」と「2010年」の比較を行ってい る。それらが事実であるのは確かだろうが、そのような事実を言うために、なぜ わざわざ(私が「97年の消費税増税」前後の比較においての公債発行額と歳出 の増大について語っていることは、日本に福祉国家を氏自身が『反論』で引用し ている文章からも明らかであるはずにもかかわらず)「丸氏は・・・(中 略)・・・歳出の増大を税収減への対応と景気対策のための財政出動に求められ るが」という前置きがしてあるのか?日本に福祉国家を氏のその意図は全く不明 である。とりあえず、「97年の消費税増税以後、日本は財政再建の途からむし ろますます遠のいたようである。」(これは良いとか悪いとかの価値判断の問題 ではなく客観的な事実ではないだろうか?)という点、「97年の消費税増税」 前後の比較においての公債発行額と歳出の増大については、「景気対策のための 財政出動」が大きな要因のひとつであろう点、その他ここで私が述べた主要な点 については(何も反論がないようなので)、日本に福祉国家を氏も異論はないも のと解してよいのであろうか?

 それはとりあえず(私の勝手な解釈で結論を出すわけにもいかないので、これ 以上は)置くとして、次に、日本に福祉国家を氏は、「丸氏は、歳出の増大が悪 かのような議論をされているが」と言い、あるいは『反論』の後半部分でも再 び、「国の歳出が増えることが悪であるかのような丸氏の見解では、介護医療な どの分野での内需の拡大は不可能である。」と述べておきながら、私のどの文 章・どの語句が、どのような文脈・解釈によって「歳出の増大が悪かのような議 論をされている」と言い得るのか、「国の歳出が増えることが悪であるかのよう な・・・・・・見解」と見なし得るのか、全く明らかにしていない。そうである 以上、これは根拠のない言いがかりと言わざるを得ないだろう。私の主張に対し て根拠を全く示さない・示せない言いがかりをつけていること、そのような言い がかり的解釈をさも私の主張であるかのように見立てて私への反論を展開してい る(かのように偽っている)こと、の2点について、日本に福祉国家を氏には猛 省と真摯な自己批判を促したい。改めて明言しておくが、私は「歳出の増大が悪 かのような議論を」するつもりもしたつもりも一切ないし、「国の歳出が増える ことが悪であるかのような・・・・・・見解」を示すつもりも示したつもりも一 切ない。したがって、「丸氏は、歳出の増大が悪かのような議論をされている が・・・・・・」、「国の歳出が増えることが悪であるかのような丸氏の見解で は・・・・・・」等の事実に反する事柄を前提として、日本に福祉国家を氏が 『反論』において行った一切の記述は、そもそも最初から、反論の体を成してい ない。

 また、日本に福祉国家を氏は、「消費税増税反対論者は、高齢化の進行による社 会保障費の急増が歳出を増やす、という現実をあえて無視するようである。」 「共産党の赤旗にも、最近の社会保障予算の推移は全く載せず、人口の高齢化に よる社会保障費の急増という事実を意図的に隠ぺいしている。」と述べている が、「一般歳出(歳出から、国債返済金と地方交付税を引いた額)に占める社会 保障費の割合」、「03年は40%が、07年には45%となり、2011年に は53%と一般歳出の過半数以上を占めている。(厚生労働省資料)すなわち、 今では国の歳出の半分以上が社会保障費に使われており、社会保障費の増加が歳 出増加の主要因となっている。」といったことは政府機関によって大々的に公表 されていることであって、一少数野党(共産党)が「隠ぺい」できることではな いだろう(現に全く「隠ぺい」できていない)。「赤旗に」「最近の社会保障予 算の推移」を「全く載せ」ない、というのは、(それを問題視するにしても)少 なくとも「隠ぺい」というのとは違うのではなかろうか?「隠ぺい」という語の 本来の意味を「歪曲」してまで、日本に福祉国家を氏が「隠ぺい」という語を共 産党に対して使う(少なくとも合理的)理由はまったくわからないと言わざるを 得ない。さらに「丸氏には、こういう事実の歪曲への猛省を促したい。」という 主張にいたっては、私がいつ、どこで、どのような・どのように、「事実の歪 曲」を行ったのかという肝心の点について、日本に福祉国家を氏が一切明らかに してくれないので、せっかく「猛省を促」してくれても残念なことに猛省の仕様 がない。

3、

「消費税がデフレ不況下では消費・内需の縮小を引き起こすという主張」に対し て、日本に福祉国家を氏は次のように述べている。

「消費税増税しても、社会保障の安定財源を確立し、日本の社会保障は将来も大 丈夫という認識が国民・高齢者にも広がれば、高齢者も少しは貯金を消費に回す ようになるのではないか。
 消費税増税で日本の社会保障の持続性への安心を培うことも、消費・内需拡大 につながるだろう。」
「結論的には、消費税の課税が消費・内需を縮小しているというよりも、社会保 障の未整備と財政問題での持続性への不安、そして日本の高等教育への公的支出 の少なさが、国民に過剰な預貯金を強制し、消費・内需を冷え込ませる要因の一 つと考える。」
「民主党政権の経済ブレーン(管直人が財務大臣時代に経済学を教授した)であ る小野善康大阪大学教授は、消費税増税を含む増税で財源を作り、介護・医療・ 保育などの分野で新たに雇用を生み出し、失業率を下げれば、住民福祉の向上と 共に失業者が雇用につけば消費するようになり需要を喚起し、経済不況脱却への 方向にもつながると、消費税増税が需要拡大・不況克服の手段として論じられて いる。(小野善康『成熟社会の経済学―長期不況をどう克服するのか』岩波新 書、2012年)」
「結論的に丸氏の消費税の増税が消費を縮小し・不況を深刻化するという議論は あまりにも単純な思考であり、小野教授のように、増税してその財源で雇用を生 み出し、需要を喚起し、不況を克服すると同時に、福祉の充実という便益にも国 民は享受することができる、また公的介護・医療などへの国民の信頼感が増せ ば、貯蓄を消費に回す高齢者も増える、内需も拡大する、という発想こそ必要で はないだろうか。」
「物が飽和状態にある日本で需要・内需を大幅に拡大するには、市場任せ・「神 の見えざる手に任せる」では生み出せないのであり、小野教授が主張されるよう に増税で、公的財政により需要・内需を生み出すことこそ必要である。」
「そのためにも(社会保障充実による内需拡大のためにも――引用者注)大幅な財 政赤字を抱える日本では、消費税を含む増税による財源確保・社会保障費の確保 が、これからの日本における内需拡大の絶対的条件であり、増税に反対すること 自体がそういう分野での内需拡大の可能性の芽を摘むこととなろう。例えば介護 という分野で内需拡大するためには、国の歳出が増えざるを得ないのである。」 (以上 日本に福祉国家を 『反論』)

 まず一つ確実に言えることは、日本に福祉国家を氏が、「消費税がデフレ不況 下では消費・内需の縮小を引き起こす」という点に対しては一切否定も反論もし ていない、ということである。むしろ、「消費税増税しても、社会保障の安定財 源を確立し、日本の社会保障は将来も大丈夫という認識が国民・高齢者にも広が れば、高齢者も少しは貯金を消費に回すようになるのではないか。」「丸氏の消 費税の増税が消費を縮小し・不況を深刻化するという議論はあまりにも単純な思 考であり、小野教授のように、増税してその財源で雇用を生み出し、需要を喚起 し、不況を克服すると同時に、福祉の充実という便益にも国民は享受することが できる、また公的介護・医療などへの国民の信頼感が増せば、貯蓄を消費に回す 高齢者も増える、内需も拡大する」という記述からは、日本に福祉国家を氏が 「消費税がデフレ不況下では消費・内需の縮小を引き起こす」ということを暗に 前提としながらその上で、“社会保障の充実が同時に行われるならば”、消費税増 税による消費・内需の縮小を相殺して上回る消費促進・内需拡大効果が得られ る、と主張しているように受け取れる。

 2つ目。これは日本に福祉国家を氏の上記のような主張を読む上で注意しなけ ればならない点であるが、社会保障の充実によって内需拡大を図る・図れる、と いうことと、社会保障充実のための財源を消費税増税に求めるかどうか、という ことは、本来別々の話である。日本に福祉国家を氏は「消費税がデフレ不況下で は消費・内需の縮小を引き起こす」という点については否定せず、同時に、内需 拡大の観点からも社会保障の充実が必要であると主張している。したがって――実 現可能かどうか、という点は一旦は置くとして、少なくとも――消費税増税外の方 法で社会保障充実のための財源が得られるのであれば、その方がより望ましい、 ということは日本に福祉国家を氏も認められているはずである。まことに“金に 色はついていない”のである。

 社会保障の充実そのものの必要性・重要性や、社会保障の充実が同時に内需拡 大にとっても必要・重要であるという観点において、また雇用の問題、非高齢 層・若年者への社会保障の問題、「物が飽和状態にある日本で需要・内需を大幅 に拡大するには、市場任せ・「神の見えざる手に任せる」では生み出せない」 (日本に福祉国家を 『反論』)という認識、等において、私は日本に福祉国家 を氏と意見や問題意識を同じくするものである。したがって、私と日本に福祉国 家を氏の対立点は、社会保障充実の財源を確保する上で、消費税増税を最優先の 手段と位置づけるか否か、にほぼ絞られていることは明らかである。

4、

「次に直接税か間接税かの問題を検討したい。私は1980年代からの所得税・ 法人税・消費税の税収の推移の財務省の資料を検討したが、第一の印象は直接税 である所得税・法人税の税収変動がきわめて大きいのに対し、消費税は税収が安 定していることである。」
「直接税である所得税・法人税は景気の変動の影響を強く受け、不況局面では税 収が激減する。」
「莫大な赤字財政のもと赤字国債は増やさないという前提の下では、不況で法人 税や所得税収が激減しても、基本的に福祉や医療などの歳出を維持することを確 保するためには、一番税収が安定している消費税収入の比率を高めざるを得ない と考える。」(以上 日本に福祉国家を 『反論』)

 まず、「直接税である所得税・法人税の税収変動がきわめて大きい」というこ とと、応能負担原則・累進課税制度・税における所得再配分機能の後退、を放 置・拡大していいのか、ということは分けて考えなければならない。「直接税で ある所得税・法人税の税収変動がきわめて大きい」事を持ってして、応能負担原 則・累進課税制度・税における所得再配分機能の後退、を放置・拡大することに は必然性も整合性もない。むしろ、デフレ不況下での消費・内需のいっそうの抑 制・縮小を極力回避しつつ税収増を図る上では、応能負担原則・累進課税制度・ 税における所得再配分機能の再確立・抜本強化こそをまずは優先しなければなら ないはずであろう。それでもなお避けて通ることのできない「直接税である所得 税・法人税の税収変動」という課題にいかに対処するか?その時に消費税(増 税)が検討課題の一つと位置づけられるのではないのだろうか(注、3)。

 次に、「直接税である所得税・法人税は景気の変動の影響を強く受け、不況局 面では税収が激減する。」ということに関して言えば、すでに97年の消費税増 税時の事例でも見たとおり、税収全体が所得・法人税収を含めて成り立っている 以上は、そこに消費税を加味したとしても、税収全体の変動性・不安定性は本質 的に逃れようがない問題である。税収全体を100パーセント消費税だけで担う (注、4)、という選択もあるのかもしれないが(それでも、厳密に言えば消費 の変動に伴う変動性からは逃れられないだろう)、日本に福祉国家を氏も別にそ ういうことを言っているわけではないようである。経済の変動性から隔絶された 安定した税収、安定した財政、というのは一つの理想ではあるかもしれないが、 それはあくまで理想である。現代において、経済・財政・税収は密接に関連する ものであり、ゆえに、本質的にはこの三者の安定性は一連・一体のものとして追 及していかざるを得ないのではなかろうか。税収・財政だけを切り離して考えよ うとすることに、そもそも大きな限界があるのではないだろうか?

(注、3)、

 消費税や所得税・法人税以外の税財源として、私は一般投稿欄 2011,12,10付けの『日本に福祉国家を氏の消費税増税論について』 で、「金融資産、企業の内部保留に対する課税強化」にふれた。それについては 日本に福祉国家を氏も同12,18付け『丸氏の12月10日付「日本に福祉国 家氏の消費税増税論について」への回答』で、「金融資産の課税に関しては検討 課題とも考える」とし、あわせて金融資産課税、企業内部保留課税それぞれにつ いての疑問・指摘も受けた。それらの疑問・指摘に対しては、同12,24付け 『日本に福祉国家を氏の12月18日付投稿に寄せて』で回答し、その後日本に 福祉国家を氏からの再度の指摘・反論もないことから、金融資産・企業内部保留 課税が、少なくとも消費税増税と並ぶ税財源としての検討対象たり得ることにつ いては、日本に福祉国家を氏も認められていることであろう。にもかかわらず、 日本に福祉国家を氏が今だに、かたくななまでに消費税増税“だけを”、税財源と して推し続ける様は不可解ですらある。もうここらで、消費税増税の“優先順位 付け”については、日本に福祉国家を氏も考え直したほうが良いのではないだろ うか。

(注、4)、

 市場経済の中で生存(消費)することそれ自体に対して課税するという点で、 消費税は人頭税(人が“在る”こと自体に課税する、封建時代の税制)的発想の税 とも言える。人頭税では子供は課税対象からはずされることも多かったようなの で、子供の買い物にまで負担を求める日本の現行の消費税は、その点では人頭税 以上の呵責のなさとも言える。

また、

「逆にスウェーデンのように消費税率25%でも十分な公的介護が整備され、大 学の学費が無償であれば、日本のように国民が過剰な預貯金をする必要もなく、 それなりの消費・内需も確保されるものと考えるし、もし丸氏の主張のように消 費税が消費・内需を冷やすならば、消費税の高い欧州諸国は大幅に消費税率を引 き上げたとっくの昔に大恐慌になっていたのではないか。私は欧州諸国で消費税 引き上げによる恐慌が発生したという話は聞いたことがない。」(日本に福祉国 家を 『反論』)

ともあるが、このような記述を受けては、日本に福祉国家を氏には本気で消費税 増税を主張するつもりがあるのか疑わざるを得ない。もし日本に福祉国家を氏に 真剣に消費税増税を主張する気があるのであれば、「スウェーデン」や「欧州諸 国」においては、一体どのような(経済状況等々の)諸条件のもとで「大幅に消 費税率を引き上げ」ていったのか?その際どのような影響がどの程度あったの か、あるいはなかったのか?それはなぜなのか?「大幅に消費税率を引き上げ」 るにあたって何らかの対策は講じられたのか?それはどのような対策だったの か?それらのことはすべて日本においても適合することなのか?日本において 「大幅に消費税率を引き上げ」る場合には、「スウェーデン」や「欧州諸国」の 場合とは異なる対処や考慮は必要なのか?必要だとすればそれはどんなことか? 等々、等々と“セットで”日本における消費税増税を提起するのは、まともな消費 税増税論者であれば当然不可欠のことであろう。それが“現実的に”消費税増税を 考えるということではないのか?「私は欧州諸国で消費税引き上げによる恐慌が 発生したという話は聞いたことがない。」という投げやりな発言からは、まじめ に消費税増税を主張しようという気はまるで感じられないと言わざるを得ないだ ろう。少なからぬ消費税増税論(者)が、このようないい加減なものである限 り、消費税増税への懸念や不安、反対はますますつのるばかりであろう。そして このようないい加減な消費税増税論(者)によって現実の消費税増税が進められ るのであれば、それに対して不安や懸念、反対が巻き起こるのは、それこそ妥当 なことではなかろうか?

「消費税増税を主張することそれ自体は、尊重されるべき一つの見解ないし信念 であろう。しかしながら、消費税増税論者各位においては、”消費税を上げれば 何とかなるんじゃない?”と言った軽いノリや、”消費税増税すれば何とかなる (はず)!”と言った根拠のあやふやな特攻精神的必勝の信念や、”消費税を上げ るより他に、もはや我々には一刻の猶予も選択の余地もない(気がする)”と 言った漠然とした強迫観念的不安感・焦燥感から、日本全体を巻き込もうとする ことだけはくれぐれも慎んでいただきたいと切に願う。一度立ち止まって、私が ここまで書いてきて様なこと(税収増という目的を達成し得るものなのか?その 目的を達成する上で、どのような条件が満たされる必要があるのか?等々)につ て、十分に検討し、それを踏まえた上での主張を、改めてしていただきたい。」 (丸 『ある前提について』)

補遺、1 円高について

「実は大企業の利益は、外因的要因に大きく左右され、極めて不安定である。丸 氏は輸出の増加が円高要因と書かれていたが、昨年日本は震災以降貿易収支は赤 字であったが、対ドル・対ユーロに対し急激な円高が進行した。日本が震災で大 きなダメージを受け貿易収支が赤字でも、アメリカやヨーロッパの経済状況がよ り悪ければ、円高が進行するというのが昨年後半の状況であった。今ヨーロッパ では、政府の債務の信用不安が深刻な問題となっているが、これが解消しなけれ ば対ユーロでの円高は解消しないし、ヨーロッパ向け輸出も低迷する。アメリカ もまだ金融機関が多くの不良債権を抱えている状況であるとともに、最近の戦費 負担で国家財政の赤字も進行しており、アメリカがこれらの問題を解決しなけれ ば、対ドルとの関係での円高も解消しないというように、円高解消は、外国頼み の側面も大きい。」(日本に福祉国家を 『反論』)

 少なくとも私は「輸出の増加」だけを「円高要因と書」いた覚えはない。円高 の大きな要因の一つは日本のデフレ、より正確に言えば、日本以外の主要国にお いてはおおむね緩やかなインフレ傾向が続いている中で、日本だけが長期にわた るデフレ傾向の下にあったことが、主要通貨のほとんどに対して円ばかりが高く なる、円の独歩高の大きな要因ではないだろうか。

 円高、と一口に言っても、日本と他の主要国それぞれの物価変動も考慮した為 替変動指標である実質実効為替レートにおいては、どうも円高とはなっていない ようなのである。とすれば、今日本経済や日本の輸出産業を苦しめているとされ ている円高とは、日本のデフレ経済のもう一面に他ならないのではないか?少な くとも、日本に福祉国家を氏のように「大企業の利益は、外因的要因に大きく左 右され、極めて不安定である。」とか、「円高解消は、外国頼みの側面も大き い。」などとばかり言う前に、日銀が金融緩和をする、通貨供給量を増やす、日 本政府がデフレ脱却に寄与するような政策に取り組む、とか、日本一国でもでき ることはあるのであり、それによって円高を是正できる余地もまだあるはずなの ではないか?そしてそういったことを、日銀や日本政府はやっていない、出来て いないのではないか?

補遺、2 共産党の産業政策

「私は共産党に経済政策・産業政策がないといったのは、共産党が与党の自治体 で、共産党地方議員が正規職員を大幅に減らし、内需・地域経済を冷え込ませる 低賃金の非正規職員に置き換える行革を積極的に推進したことである。
 共産党が消費税は内需を冷え込ませる、貧困層に負担が重いといくら主張して も、共産党の地方議員が自治体の正規職員の大幅削減とワーキングプアの非正規 職員を大幅に増やす旗振り役を務め、貧困者を増やし内需・地域経済を冷え込ま せる行動を行う実態が大きな矛盾と言わざるを得ないし、共産党議員が雇用の劣 化を推進するようでは共産党に経済政策・産業政策はないと結論付けざるを得な い。」

私は前回、

「日本共産党は、日本の産業をどのように発展させるのかという産業政策がな く、負担は全て大企業にという大企業いじめでは、日本の産業をつぶし、雇用も 減らし、法人税収も結果的に減らすことになるのではないでしょうか。」(一般 投稿欄2012,1,28付け 日本に福祉国家を 『桜さんへ 「企業負担に ついて」』)

という日本に福祉国家を氏の記述に対し

「依然、内需が最も大きな割合を占める日本経済において、「日本の産業を」内 需主導で、とりわけ内需のうちでも最も大きな比率を占める家計・個人消費主導 で「発展させる」――――そのために、所得再配分(応能負担原則に基づく税制見直 しによって確保した財源による社会保障の維持・充実)、労働法制・労働者保護 強化(労働時間短縮で雇用・余暇時間を増やす、最低賃金引き上げ等で可処分所 得を増やす)、中小零細業者・地場産業の支援と保護・育成(地域・地方経済の 活性化)、等々こそが重要だ――――と言うのは、「産業政策」ないし「産業政策」 と言い得るものである。そして、日本共産党が言っていることはそういうことで ある。それを、「産業政策」として不十分である、とか、「産業政策」として間 違っている、と言うのならともかく、「産業政策がな」い、と言う日本に福祉国 家を氏の主張は、事実に基づかず、事実に反し、論理的整合性も無い主張であ る。日本に福祉国家を氏には猛省と真摯な自己批判を促したい。」(丸 『ある 前提について』)

と指摘した。上記に対しては日本に福祉国家を氏も一切否定も反論もせず、なお かつ「共産党が消費税は内需を冷え込ませる、貧困層に負担が重いといくら主張 しても、共産党の地方議員が自治体の正規職員の大幅削減とワーキングプアの非 正規職員を大幅に増やす旗振り役を務め、貧困者を増やし内需・地域経済を冷え 込ませる行動を行う実態が大きな矛盾と言わざるを得ない」とあることからも、 日本共産党にも私が指摘したような「「産業政策」ないし「産業政策」と言い得 るもの」、があることは日本に福祉国家を氏も認めていることがわかる。つまり 日本に福祉国家を氏は、日本共産党にも「「産業政策」ないし「産業政策」と言 い得るもの」があることは認めた上で、「共産党が与党の自治体で」「共産党議 員が雇用の劣化を推進する」ことを理由に、「共産党に経済政策・産業政策はな いと結論付けざるを得ない。」と言っているのである。

 さて、そもそも「共産党が与党の自治体で」「共産党の地方議員が自治体の正 規職員の大幅削減とワーキングプアの非正規職員を大幅に増やす旗振り役を務 め」ることには、大きく分けて二つの問題があるはずである。

 一つ目は、「正規職員を大幅に減らし、内需・地域経済を冷え込ませる低賃金 の非正規職員に置き換える行革を積極的に推進したこと」によって、「貧困者を 増やし内需・地域経済を冷え込ませる」そのこと自体の問題。

 二つ目は、「共産党が消費税は内需を冷え込ませる、貧困層に負担が重いと」 常々「主張して」おきながら、「共産党の地方議員が自治体の正規職員の大幅削 減とワーキングプアの非正規職員を大幅に増やす旗振り役を務め、貧困者を増や し内需・地域経済を冷え込ませる行動を行う実態」は「大きな矛盾」である、と いう問題。

 二つ目の問題、二つ目の観点からの批判は、共産党には本来、私が指摘したよ うな「「産業政策」ないし「産業政策」と言い得るもの」があることを前提とし た上で、「共産党が与党の自治体で」の「共産党議員」の、そこからの逸脱・背 反行為を批判・問題視するものである。したがって、日本に福祉国家を氏のよう に、「共産党に経済政策・産業政策はないと」(それ自体事実に反して)「結論 付け」てしまうと、二つ目の観点からの批判、二つ目の観点から「共産党が与党 の自治体で、共産党地方議員が正規職員を大幅に減らし、内需・地域経済を冷え 込ませる低賃金の非正規職員に置き換える行革を積極的に推進」する実態の是正 を求めていくというアプローチの仕方をみすみす放棄することにならざるを得な いだろう。それは一部「共産党議員が雇用の劣化を推進するよう」な実態を批 判・糾弾しその是正を求めていく上でも、少なくとも決してプラスになるような ことではないだろう。